生活習慣

夏のお酒と脱水|ビールで水分は補えない理由とおつまみの工夫を薬剤師が解説

ビールのグラスのとなりに水のグラスを目立つように置き、枝豆を添えた写真。お酒と一緒に水をとる和らぎ水のイメージ
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仕事終わりや夏のひととき、冷たいお酒を楽しみにしている方も多いですよね。でも、「とりあえずビールで水分補給」と思っていませんか。実は、お酒は水分補給にはなりません。それどころか、暑い時期は脱水を招きやすくなります。

この記事は「お酒をやめましょう」という話ではありません。薬剤師として、夏のお酒と脱水の関係を公的な情報から整理し、楽しみながら体への負担を減らす付き合い方をお伝えします。

この記事で分かること
・「ビールで水分補給」ができない理由(アルコールの利尿作用)
・夏の飲酒で脱水・熱中症のリスクが重なりやすいこと
・飲むときの工夫(水と一緒に・量の考え方)と、注意したい人

「ビールで水分補給」はなぜダメ?|アルコールの利尿作用

暑い日に汗をかいたあと、ビールでのどをうるおす——気持ちはよく分かります。でも、これは水分補給にはなりません。理由は、アルコールの利尿作用にあります。

お酒を飲むと、体内の水分を保つように働く「抗利尿ホルモン」の分泌が抑えられます。その結果、尿の量が増えて、体は脱水の傾向に向かいます(出典3)。お酒に水分が含まれていても、利尿作用によって尿として出ていく水分があるため、飲んだぶんがそのまま体の水分補給につながるわけではありません。

「ビールはほとんど水分だから大丈夫」と思いがちですが、水分補給という点ではむしろ逆に働きやすい、と覚えておきましょう。暑い時期の水分・塩分は、お酒とは別に、水・お茶・経口補水液などでとるのが基本です。

夏の飲酒と脱水・熱中症|暑い時期に重なるリスク

夏はただでさえ、汗で水分と塩分が失われ、脱水しやすい季節です。厚生労働省も「のどの渇きを感じなくても、こまめに水分・塩分、経口補水液などを補給しましょう」と呼びかけています(出典7)。

そこにお酒が加わると、飲酒による脱水の傾向(前章)と、夏の発汗による脱水が重なりうることになります。暑い日に「水分はお酒だけ」で済ませてしまうのは、避けたいパターンです。

お酒とは別にとる水分・塩分の考え方は、熱中症対策は水だけで足りる?塩分・経口補水液の正しい使い方もあわせてご覧ください。

お酒が熱中症の直接の原因になる、と決めつけるものではありません。けれど、脱水を助長しうる要素が重なるのは確かです。お酒を飲む日こそ、水分を別にとる意識を持っておきましょう。

飲むなら|水(チェイサー)を一緒に・ペースと量

水のグラスを主役に、小さめのビールと枝豆・冷奴を添えた写真。お酒の合間に水をとり、食事と一緒に飲むイメージ
飲むときは、合間に水を。食事と一緒に、量を決めてゆっくりが、体への負担を減らすコツです。

厚生労働省は2024年に「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を公表し、飲むときの配慮を示しています(出典1)。難しいことではありません。

工夫具体的に
あらかじめ量を決める「今日は1杯」など、飲む前に決めておく
食事と一緒に飲酒前・飲酒中に食べると、酔いにくくなる
合間に水・炭酸水をお酒の合間に水(和らぎ水)を。ゆっくり飲める
飲まない日をつくる一週間のうち、お酒を飲まない日を設ける
FIG.1 健康に配慮した飲酒の工夫(厚労省ガイドライン)

夏の脱水対策としても、お酒の合間に水を一杯はとくに有効です。お酒のとなりに、いつも水のグラスを置いておく習慣にしてしまいましょう。

量の感覚も持っておくと安心です。お酒に含まれる純アルコール量は「飲んだ量(mL)×度数(%)÷100×0.8」で計算でき、たとえばビール500mL(5%)で約20gになります(出典1・5)。

ここで大切な注意があります。ガイドラインは、生活習慣病のリスクを高める量として「1日あたり純アルコール量で男性40g以上・女性20g以上」を挙げていますが、これは「ここまでなら飲んでよい安全な量」ではありません。ガイドライン自身が「これらの量は、個々人の許容量を示したものではありません」と明記しています(出典1)。あくまで「これ以上は特に注意」という目安として受け止めてください。

おつまみの工夫|水分・塩分・たんぱく質

ガイドラインは「飲酒前または飲酒中に食事をとる」ことを勧めています。食べながら飲むと、血中のアルコール濃度が上がりにくく、酔いにくくなるとされます(出典1)。

一方で、おつまみは塩分が多くなりがちです。ナトリウム(塩分)のとり過ぎは高血圧などのリスクにつながり(出典9)、食塩相当量の目標量は1日あたり男性7.5g・女性6.5g未満とされています(出典11)。ラーメンの〆や味の濃いおつまみが続くと、あっという間に超えてしまいます。汁物は汁を残すだけでも塩分を2〜3g減らせます(出典10)。

塩分のとり過ぎが気になる方は、むくみが気になる人の塩分・カリウムや、味を落とさない減塩のコツもあわせてどうぞ。

枝豆や冷奴などはたんぱく質を含む食品で、おつまみの選択肢としては悪くありません。ただし、「たんぱく質のおつまみが二日酔いや脱水を防ぐ」といった効果がはっきり示されているわけではありません。おつまみは「塩分をとり過ぎないバランスのよい一品」くらいの気持ちで選び、あわせて水もとりましょう。

飲酒の適量と配慮|公的な目安(飲まない人には勧めない)

「適量のお酒は体にいい」とよく言われますが、ここは誠実にお伝えします。「適量なら健康に良い」と一概には言えません。ガイドラインによると、高血圧、男性の食道がん、女性の出血性脳卒中などは、少しの飲酒量からでもリスクが上がるとされ、「飲酒量が少ないほど、リスクが少なくなる」と報告されています(出典1)。

健康日本21では「節度ある適度な飲酒」を1日平均純アルコール約20gとする考え方もあります(出典5)。ただしこれも「これだけ飲めば健康になる」という意味ではなく、リスクは残ります。

そして何より大切なのは、お酒を飲む習慣がない人や飲めない人に、無理に勧めないことです。ガイドラインも、無理に飲酒を勧めることは避けるべきとしています(出典1)。お酒との付き合い方は人それぞれ。飲まない選択も、同じくらい尊重されるものです。お酒を減らしたい・やめたいときは、かかりつけ医や専門の相談窓口に相談する方法もあります(出典1)。

注意したい人|服薬中・持病・体質

次にあてはまる方は、とくに気をつけてください。

対象注意点(出典1)
薬を服用中薬の効果が弱まったり副作用が出ることがある。飲酒の可否・量は主治医に相談
妊娠中・授乳期胎児性アルコール症候群などの可能性。飲酒を避ける
20歳未満法律で禁止。脳の発育への悪影響や依存のリスク
お酒に弱い体質顔が赤くなる・動悸・吐き気(フラッシング反応)。とても弱い人はごく少量でも危険
高齢の方体内の水分が減り、同じ量でも酔いやすい(夏の脱水とも関わる)
FIG.2 とくに注意したい人

とくに薬を飲んでいる方は、お酒との組み合わせで思わぬ影響が出ることがあります。薬とお酒の関係は一人ひとり違うので、自己判断せず、飲酒の可否や量はかかりつけの医師・薬剤師にご相談ください(出典1)。

まとめ|お酒を楽しみつつ、脱水を防ぐ

夏のお酒は、ちょっとした工夫で体への負担を減らせます。

  • お酒は水分補給にならない。アルコールの利尿作用で脱水を招きやすい(出典3)
  • 夏は発汗による脱水と重なりやすい。水分はお酒と別にとる(出典7)
  • 飲むなら、水を一緒に・量を決めて・食事と一緒に・休肝日を(出典1)
  • 「男性40g・女性20g」はリスクを高める量で、許容量ではない(出典1)
  • 飲まない人に勧めない。服薬中・妊娠中・持病のある方は相談を(出典1)

完璧でなくて大丈夫。まずは一つ、今日からの工夫を選んでみてください。

  1. 【今日】お酒のとなりに、水のグラスを一杯——お酒で水分補給はしない、を合言葉に
  2. 【今日】飲む量をあらかじめ決めて、食事と一緒にゆっくり——酔いにくく、飲み過ぎ予防にも
  3. 【気になるとき】服薬中・持病・妊娠中はかかりつけに相談——飲まない選択も、もちろんOK

お酒との付き合い方は人それぞれです。飲むなら水と一緒に、無理のないペースで。飲まない選択も大切にしながら、夏の夜を心地よく過ごしてください。

参考文献

  1. 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024年〔令和6年〕2月公表)— 純アルコール量の算出式、生活習慣病のリスクを高める量(男性40g/女性20g以上、ただし「個々人の許容量を示したものではない」と明記)、健康に配慮した飲み方(量を決める/食事と一緒に/合間に水・炭酸水/休肝日)、無理に勧めない、妊娠・授乳・20歳未満・服薬・体質への配慮 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001223643.pdf
  2. 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドラインについて」— 案内ページ。純アルコール量の計算式の例示 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38541.html
  3. e-ヘルスネット(厚生労働省)「二日酔いのメカニズム」— 飲酒で抗利尿ホルモンの分泌が減り、尿量が増えて体が脱水傾向になる https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/alcohol/a-03-005.html
  4. e-ヘルスネット(厚生労働省)「アルコールの吸収と分解」— 尿からの排泄は0.3〜4%で代謝の大半は肝臓。1時間で分解できる量の目安は体重×0.1g程度 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/alcohol/a-02-002.html
  5. e-ヘルスネット(厚生労働省)「飲酒量の単位」— 純アルコール量の式、1ドリンク=10g、ビール500ml(5%)=20g、日本酒1合≈20g https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/alcohol/a-02-001.html
  6. e-ヘルスネット(厚生労働省)「飲酒」— アルコール関連情報のカテゴリ目次 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/alcohol.html
  7. 厚生労働省「熱中症予防のために」— 室内でも外出時でも、のどの渇きを感じなくても、こまめに水分・塩分・経口補水液を補給する https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170795.html
  8. 環境省「熱中症環境保健マニュアル」— 案内ページ https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_manual.php
  9. e-ヘルスネット(厚生労働省)「ナトリウム」— 過剰摂取は高血圧・循環器疾患・胃がんのリスクにつながる https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/food/ye-024.html
  10. e-ヘルスネット(厚生労働省)「栄養・食生活と高血圧」— 減塩のポイント。麺類や汁物の汁を残すと食塩を2〜3g減らせる https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-02-002.html
  11. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」— 食塩相当量の目標量(18歳以上:男性7.5g未満・女性6.5g未満) https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001396865.pdf

免責事項:本記事は薬剤師が公的機関の情報をもとに作成した一般的な情報提供であり、診断・治療を目的とするものではありません。効果には個人差があり、症状・持病・服薬・妊娠授乳の状況などにより適切な対応は異なります。気になる症状がある方、治療中・妊娠授乳中の方などは、自己判断せず医師・薬剤師にご相談ください。詳しくは免責事項をご覧ください。

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薬剤師ブロガー
調剤薬局で働きつつ、薬局DX(業務効率化)にも取り組み中。栄養・健康・睡眠を、公的な情報をもとに「今日からできる」形で解説します。
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