ストレスが体の疲れを引き起こす理由とおすすめ対処法|薬剤師が解説
「仕事が忙しくて体がだるい」「人間関係のストレスで、全然疲れが取れない」そんな経験はありませんか?
実は、ストレスは「気持ちの問題」だけでなく、体の中でさまざまな変化を引き起こし、疲労感として現れることがわかっています。
この記事では、薬剤師の視点から「ストレスが体の疲れを引き起こすメカニズム」と「今日からできる具体的な対処法」について、わかりやすく解説します。
この記事でわかること
・ストレスが体の疲れにつながる理由(メカニズム)
・ストレスからくる疲れの特徴
・今日からできる具体的な対処法
ストレスはなぜ「体の疲れ」を引き起こすのか
脳に必要なエネルギーが足りなくなる
私たちの体は、ストレスを抱えるとそのストレスを消費するためにエネルギーを消費します。
短期的なストレスであればその後回復しますが、仕事や人間関係などで慢性的なストレスを抱えてしまうと、体はそのストレス消費のためにエネルギーを使い続けることになります。
その結果、本来であれば体の維持・回復・成長に使われるべきエネルギーが不足してしまいます。特に、脳は体の中でも特にエネルギーを多く必要とする器官です。そのため、慢性的なストレス下では脳へのエネルギー供給が不足しやすく、これが強い疲労感として現れると考えられています。
ホルモンのバランスが崩れる
ストレスを感じると、体は「コルチゾール」と呼ばれるホルモンを分泌します。コルチゾールはストレスに対応するために必要なホルモンであり、短期的には体を活性化させる働きをします。
コルチゾールの分泌には本来、朝に高く夜に低くなるリズムがあります。このリズムが体のエネルギーをコントロールする重要な役割を担っており、朝にしっかり活動できて、夜には体を休めることができるのはこのリズムのおかげです。
しかし、慢性的なストレスが続くと、このバランスが崩れてきます。最初はコルチゾールが過剰に分泌され続けますが、慢性ストレスが持続すると、やがてコルチゾールの分泌量が低下し、朝と夜の分泌量の差も小さくなっていきます。
その結果、朝から疲れを感じたり、体のメリハリがなくなったりすることにつながります。さらにコルチゾールが正常に機能しなくなると、体のエネルギー代謝もうまく働かなくなり、慢性的な疲労感やだるさとして現れます。
慢性ストレスで「体の炎症」が続いてしまう
慢性的なストレスが続くと、体の中で低レベルの炎症が続いた状態になり、これが疲労感の原因の一つとなります。
私たちの体には、ウイルスや細菌などの異物が侵入したとき、炎症を起こして体を守る仕組みがあります。この炎症反応は本来、必要なときだけ起きて、役割が終われば自然と収まるものです。
しかし、慢性的なストレスが続くと、この「炎症を抑える仕組み」がうまく働かなくなってしまいます。その結果、体の中で低レベルの炎症が続いた状態になります。
この慢性的な炎症は、体の外から見てもわかりにくいため見逃されやすいのですが、脳に対して疲労感のサインを送り続けることがわかっています。そのため、十分に休んでいるつもりでも疲れが取れない、という状態につながります。
また、慢性的な炎症は疲労感だけでなく、集中力の低下や気分の落ち込みにもつながることがあります。ストレスが続くと「なんとなく体も気分も重い」と感じやすくなるのは、こうした体内の変化が関係していると考えられています。
脳の神経伝達物質が枯渇してくる
慢性的なストレスが続くと、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れ、疲労感やだるさとして現れます。
私たちの脳は、神経伝達物質と呼ばれる物質を使って、体の各部位に指令を送っています。ストレスを感じた初期の段階では、この神経伝達物質が活発に使われ、集中力や気力を維持しようとします。
しかし、慢性的なストレスが続くと、神経伝達物質が使われる量が作られる量を上回るようになり、やがて枯渇した状態になっていきます。いわばエンジンを空ぶかしし続けた結果、燃料が底をついてしまうような状態です。
その結果、やる気が出ない、集中できない、何をしても疲れが取れないといった症状として現れます。また、気分の落ち込みや無気力感につながることもあります。
このように、慢性ストレスによる神経伝達物質の枯渇は、体の疲れだけでなく、メンタル面にも大きな影響を与えます。
ストレスと疲れは「悪循環」になりやすい
これまで話してきたように、ストレスと疲労にはさまざまなメカニズムが関係しています。そして、ストレスは疲れを引き起こすだけでなく、疲れがさらに次のストレス反応を強めるという「悪循環」に陥りやすい点も重要です。
ストレスによって疲れが蓄積すると、睡眠の質が低下します。睡眠の質が下がると体の回復が追いつかなくなり、翌日さらに疲れやすい状態になります。その結果、些細なことでもストレスを感じやすくなり、またストレスが疲れを引き起こす…という悪循環が生まれます。
この悪循環が続くと、疲れがなかなか取れない状態が慢性化してしまいます。「最近ずっと疲れている」「休んでも回復した気がしない」と感じている場合は、すでにこの悪循環に入っているサインかもしれません。
まずはこの悪循環に気づくことが、改善への第一歩です。
ストレスによる疲れの対処法
自律神経を整える生活習慣
ストレスによる疲れを改善するためには、乱れた自律神経を整えることが重要です。
まず取り組みやすいのが、「起床・就寝時間を一定にすること」です。毎日同じ時間に起きて寝ることで、体内時計が整い、自律神経のリズムも安定しやすくなります。
次に意識したいのが「就寝前の過ごし方」です。寝る1~2時間前からスマートフォンの使用を控え、照明を暗めにすることで、体が自然と休息モードに切り替わりやすくなります。
また、入浴も自律神経を整える有効な手段です。就寝の1〜2時間前にぬるめのお湯(38〜40度程度)にゆっくり浸かることで、睡眠の質の向上につながります。
睡眠と疲れの関係については、こちらの記事でも詳しく解説しています。 →[寝ても疲れが取れない原因5選|薬剤師が徹底解説]
炎症を抑える食事・栄養
慢性的なストレスによって体の炎症が続いている状態では、食事・栄養の見直しも対処法の一つとなります。
特に注目したいのが「地中海食」と呼ばれる食事パターンです。果物・野菜・全粒穀物・豆類・ナッツ・オリーブオイルを中心とし、赤身肉や加工肉、甘い飲み物を控えるこの食事スタイルは、体の炎症を抑える効果が複数の研究で示されています。特定の食品だけを摂るのではなく、食事全体のバランスを整えることが重要です。
次に意識したいのが「青魚」の摂取です。サバ・イワシ・サーモンなどの脂肪分の多い魚に含まれるオメガ3脂肪酸は、慢性ストレス下の炎症を抑える効果が期待できます。週2〜3回を目安に取り入れることをおすすめします。
また、「腸内環境を整えること」も重要です。慢性ストレスは腸内環境を乱し、炎症をさらに悪化させることがわかっています。ヨーグルトや発酵食品などを日常的に取り入れることで、腸内環境の改善につながります。
さらに、マグネシウム・ビタミンB群・ポリフェノールも炎症を抑える栄養素として注目されています。ナッツ類・海藻・豆類・緑茶などを日常の食事に意識して取り入れることが大切です。
疲れやすさと栄養の関係については、こちらの記事でも詳しく解説しています。 →[疲れやすい人に不足している栄養素|薬剤師が原因と対策を解説]
軽い運動でストレスホルモンをリセットする
慢性的なストレスによる疲れには、軽い運動を取り入れることも有効な対処法の一つです。実際に、運動がストレス・不安・気分の落ち込みを有意に改善することが、複数の研究で示されています。
疲れているときに運動をすることは逆効果に思えるかもしれません。しかし、適度な運動はストレスホルモンであるコルチゾールのバランスを整え、朝高く夜低いという健康的なリズムの回復にもつながることがわかっています。
効果的な運動の目安としては、週3〜5回、1回30〜40分程度が理想的とされています。ただし、10〜30分程度の運動でも気分の改善には十分な効果が期待できます。まずは無理のない範囲から始めることが大切です。
運動の種類はウォーキングなどの有酸素運動でも、筋トレなどのレジスタンストレーニングでも、どちらも効果が期待できます。特別な器具や場所は必要なく、日常生活の中で体を動かす機会を増やすことから始めてみましょう。
「時間がない」「面倒」といった理由で後回しにしがちですが、継続することでストレスへの耐性も少しずつ高まっていきます。まずは1日10分のウォーキングなど、小さなことから始めてみましょう。
「完璧にやろうとしない」ことも対策のひとつ
ここまで、食事・運動・生活習慣と解説してきましたが、完璧にやろうとしないでください。全てを完璧にこなそうとすることがストレスとなり、多くの方が継続できない要因となってしまいます。
まじめな人ほど「できていない自分がだめなんだ」と自分を追い込む傾向があり、さらに体を疲弊させることにつながります。
大切なのは継続することなので、とりあえず何か一つやってみるというのを意識してください。10分だけとりあえず散歩してみたことでなんかすっきりした感じがする。そういった小さな成功体験が、また明日も何か行動してみようという意識につながっていきます。
また、「何もしない時間を作ること」も立派な対処法の一つです。予定を詰め込みすぎず、部屋を真っ暗にして意識的にぼーっとする時間やリラックスできる時間を確保することが、慢性的なストレスを和らげることにつながります。
まずは「全部やろうとしない」ことから始めてみてください。
まとめ
ストレスが疲れを引き起こす背景には、エネルギー不足・ストレスホルモンの乱れ・体の炎症・神経伝達物質の枯渇といった、体の中でのさまざまな変化が関係しています。そして、ストレスと疲れは互いに悪循環を生みやすく、放置することで慢性化しやすい点も重要なポイントです。
対処法としては、自律神経を整える生活習慣・炎症を抑える食事・適度な運動を日常に取り入れることが有効です。ただし、これらをすべて完璧にこなそうとする必要はありません。まずは「今日できることを一つだけやる」という意識で、小さな改善を積み重ねることが大切です。
一方で、十分な睡眠や休息を取り、生活習慣を見直しても疲れが改善しない場合や、気分の落ち込みや無気力感が長期間続く場合は、適応障害やうつ病など、医療的なサポートが必要な状態になっている可能性があります。そのような場合は、一人で抱え込まず、早めに医療機関を受診することを検討してください。
ストレスと疲れは「気合いで乗り越えるもの」ではなく、体の中で起きている変化として捉え、適切に対処することが重要です。

