生活習慣

暑くて眠れない夜に…熱帯夜でも眠りやすくする工夫を薬剤師が解説

夜、寝室で扇風機と冷房を使いながら眠りやすい環境を整えるイメージ
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熱帯夜が続くと、「なかなか寝つけない」「夜中に何度も目が覚める」「朝まで眠った気がしない」——そんな夏の寝苦しさに悩まされていませんか。睡眠薬に頼るのは少し抵抗があるし、かといって冷房の使い方にも迷う。そんな方は多いものです。

この記事では、薬剤師が公的な情報をもとに、暑い夜に眠りやすくする工夫を整理します。眠りの仕組みから、冷房の使い方、寝る前の習慣、眠れない日が続くときの相談の目安まで、今夜から試せることを紹介します。

この記事で分かること
・暑いと眠れない仕組み(深部体温と熱帯夜)
・寝るときの冷房の使い方と、寝室の整え方
・入眠前の習慣と、眠れない日が続くときの相談の目安

暑いと眠れないのはなぜ?|深部体温が下がると眠くなる

人は眠るとき、手足から熱を逃がして体の内部の温度(深部体温)を下げ、それにつれて自然と眠くなります(出典1)。お風呂上がりや、赤ちゃんの手が温かくなると眠そうにする——あれは、体が熱を放散して眠りに入ろうとしているサインです。

ところが、暑くて蒸し暑い夜は、この熱の放散がうまくいきません。深部体温が下がりにくく、寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めたりしやすくなります。睡眠と温熱環境を調べた研究でも、暑い環境や高い湿度は睡眠中の目覚めを増やし、深い睡眠やレム睡眠を減らすと報告されており、とくに高齢の方で影響が大きいとされています(出典10)。

つまり、夏の寝苦しさは「気合い」の問題ではありません。だからこそ、根性で乗り切ろうとするより、体が眠りに入りやすい環境を整えるほうが、ずっと近道になります。

まず大前提|寝るときも冷房を我慢しない

寝室の工夫の前に、いちばん大切なことをお伝えします。暑い夜は、寝るときも冷房を我慢しないでください。

冷房を切って暑さを我慢するのは、睡眠の質が下がるだけでなく、熱中症の点でも危険です。環境省は、「熱中症警戒アラートが発表されたら必ずエアコンを使用するように心がけましょう」「エアコンを適切に利用し、涼しい環境で過ごしましょう」と呼びかけています(出典6)。とくに高齢の方は暑さを感じにくく、室内での熱中症が多いとされています(出典6・7)。「寝るときくらい」と無理をしないことが大切です。

寝るときの暑さ対策と、水分補給・熱中症予防の考え方については、熱中症対策と水分補給の記事もあわせてご覧ください。

ひとつ、よくある誤解にも触れておきます。「夏の冷房は28℃」とよく聞きますが、この28℃は熱中症予防のための“室温”の目安であって、「睡眠に最適な室温」でも「エアコンの設定温度」でもありません(出典6)。暑ければ設定温度は下げてかまいません。大切なのは、温度計で実際の室温を確認すること(出典6)。そのうえで、冷えすぎが気になる人は、次の章の工夫で調整しましょう。

「冷房が効いた部屋で、かえって体がだるい・冷える」という方は、冷房で夏バテ・だるさを感じるときの対策も参考にしてみてください。

寝室の環境を整える|室温・湿度・寝具・風の当て方

温度計・除湿・寝具・扇風機の風向きなど、寝室の環境を整えるポイントのイメージ
室温・湿度・寝具・風の当て方を整える

冷房を使いながら、眠りやすい寝室をつくる。ポイントは「暑すぎず、冷えすぎず」です。

ポイント工夫
室温温度計で実際の室温を確認し、暑くなりすぎない環境を保つ(「○℃が理想」と一律に決めず、自分が快適な範囲で)
湿度蒸し暑さは眠りを妨げる。除湿(ドライ運転)や換気で湿気を逃がす
寝具・寝間着通気性・吸湿性のよいものに。汗をためこまない
風の当て方冷気や扇風機の風を体に直接当て続けない。風向きを調整する
FIG.1 熱帯夜に眠りやすくする寝室の工夫

蒸し暑さ(高い湿度)は、それだけで眠りを妨げます(出典10)。気温だけでなく、除湿や換気で湿気を逃がすことも意識しましょう。扇風機やサーキュレーターは空気を動かすのに役立ちますが、体に直接当て続けると冷えやすいので、壁や天井に向けて空気を循環させるのがおすすめです。

なお、「冷房は寝るときだけタイマーで」と思いがちですが、途中で切れて暑さで目が覚めることもあります。就寝中も暑くならない環境を保つことを優先しましょう。

入眠前の習慣|入浴・カフェイン・光・水分

眠りやすさは、寝る前の過ごし方でも変わります。どれも今日から試せるものです。

  • 入浴:就寝の1〜2時間前に入浴すると、寝つきがよくなるとされています(出典1)。複数の研究をまとめた解析でも、就寝1〜2時間前のあたたかい入浴やシャワーで、寝つくまでの時間が短くなったと報告されています(出典11)。暑い日もシャワーだけで済ませず、ぬるめの湯につかると、いったん上がった体温が下がる流れで眠りに入りやすくなります。
  • カフェイン:コーヒー・お茶・エナジードリンクなどに含まれるカフェインには覚醒作用があります。夕方以降は控えめにし、カフェインに敏感な人や眠りが気になる人は、就寝の5〜6時間前から控えると安心です(出典1・9)。
  • 寝酒は逆効果:「眠れないからお酒を一杯」は、寝つきはよくなったように感じても、睡眠の質はかえって下がります。寝酒はおすすめしません(出典1)。
  • :就寝前の強い光やスマホの画面は、脳を覚醒させます。寝る前は照明を落としめに。逆に、朝や日中に光を浴びると体内時計が整います(出典1・4)。
  • 水分:暑い時期は、のどの渇きを感じなくてもこまめな水分補給を心がけましょう(出典7)。寝る前にも軽く水分をとっておくと安心です。ただし、とり過ぎると夜中にトイレで目が覚めるので、コップ一杯程度を目安に。

カフェインを控えるタイミングをもう少し詳しく知りたい方は、カフェインをとる時間と睡眠の関係もあわせてどうぞ。

それでも眠れない日が続くなら|相談・受診を考えるサイン

工夫をしても眠れない状態が続くときは、無理をせず相談することも大切です。眠れない夜が週に3日以上・3か月以上続き、日中もだるさや眠気などの不調がある場合は、慢性的な不眠とされています(出典3)。

次のようなときは、生活の工夫だけで抱え込まず、医療機関への相談を検討してください。

サイン対応の目安
眠れない日が週3日以上・3か月以上続く一度、医療機関に相談を
日中の強い眠気・だるさで生活に支障が出る早めに相談を
大きないびき・睡眠中に呼吸が止まる(家族の指摘)睡眠時無呼吸などの可能性。受診を
脚のむずむず感で眠れない/気分の落ち込みが続く別の原因の可能性。相談を
FIG.2 相談・受診を考えたいサインの目安

※自己診断のための表ではありません。「相談を考えるきっかけ」の目安です。

眠れない背景に、睡眠時無呼吸症候群・むずむず脚症候群・うつなど、別の原因が隠れていることもあります(出典3)。睡眠薬やサプリで手早く解決しようとする前に、まずは生活の工夫を試し、それでも続くときは専門家に相談を。市販の睡眠改善薬やサプリを使うか迷うとき、とくに持病があって治療中の方・薬を服用中の方は、かかりつけの医師・薬剤師にご相談ください。

眠りの質と日中の疲れの関係については、寝ても疲れが取れない原因もあわせてご覧ください。

まとめ|今日からできる、熱帯夜の眠りの整え方

夏の寝苦しさは、ちょっとした工夫で和らげられます。

  • 暑いと眠れないのは、熱の放散がうまくいかず深部体温が下がりにくいから(出典1・10)
  • 寝るときも冷房を我慢しない。28℃は熱中症予防の室温目安で、睡眠の最適温度ではない(出典6)
  • 寝室は「暑すぎず冷えすぎず」。除湿と、風を直接当てない工夫を(出典10)
  • 就寝1〜2時間前の入浴が寝つきに役立つ。夕方以降のカフェイン・寝酒は控える(出典1・11)
  • 眠れない日が続く・日中つらいときは、抱え込まず相談を(出典3)

完璧な睡眠を目指さなくて大丈夫。まずは一つ、今夜からできることを選んでみてください。

  1. 【今夜】冷房を我慢せず、温度計で室温を確認——暑くならない環境で眠るのが土台
  2. 【今夜】就寝1〜2時間前にぬるめの入浴。夕方以降のカフェイン・寝酒は控える——寝つきの準備
  3. 【続くとき】眠れない日が3か月以上続く・日中つらいなら相談を——抱え込まないことも大切

暑い夏の夜も、眠りの環境は整えられます。無理なくできることから、心地よい睡眠に近づけていきましょう。

参考文献

  1. e-ヘルスネット(厚生労働省)「快眠と生活習慣」— 眠るときに深部体温が下がると寝つきやすい。入浴は就寝1〜2時間前がもっとも効果的。カフェインに敏感な人は就寝5〜6時間前から控える。寝酒・喫煙は睡眠の質を下げる https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-004.html
  2. e-ヘルスネット(厚生労働省)「健やかな眠りの意義」— 睡眠の意義と、不眠が日中の心身に及ぼす影響。長く続く不眠はうつ病のリスクにもつながる https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-001.html
  3. e-ヘルスネット(厚生労働省)「不眠症」— 夜間の不眠症状と日中の不調がそろい、週3日以上が3か月以上続くと慢性不眠症。家庭の対処で改善しないときや背後に別の睡眠障害が疑われるときは専門医へ https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-02-001.html
  4. こころの耳(厚生労働省)「良質な『睡眠』をとる(寝る)」— 睡眠ガイド2023の「睡眠5原則」。光・温度・音に配慮した環境づくり、カフェイン・お酒・たばこは控えめに https://kokoro.mhlw.go.jp/lifestyles/lf02/
  5. 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」— 睡眠の質を高める生活習慣をまとめた国の指針(背景指針として参照) https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf
  6. 環境省 ecojin「熱中症警戒アラートやエアコンを利用し、この夏も万全の熱中症対策を!」— アラート発表時は必ずエアコンを使い涼しい環境で過ごす。設定温度と室温は異なるため寝室にも温度計を。高齢者は室内での熱中症が多い https://www.env.go.jp/guide/info/ecojin/feature1/20230726.html
  7. 厚生労働省「熱中症を防ぎましょう」— エアコン等で温度を調節し室温をこまめに確認。熱中症患者のおよそ半数は65歳以上。のどの渇きを感じなくてもこまめに水分補給を https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/prevent.html
  8. 厚生労働省「高齢者のための熱中症対策(リーフレット)」— 高齢者にエアコンの使用を強く呼びかけ。水分は1日あたり1.2Lを目安に https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/pdf/heatillness_leaflet_senior_2022.pdf
  9. 食品安全委員会「食品中のカフェイン」ファクトシート— カフェインの過剰摂取は中枢神経を刺激し不眠などの原因に。健康な成人の目安は1日400mgまで https://www.fsc.go.jp/sonota/factsheets/caffeine.pdf
  10. Okamoto-Mizuno K, Mizuno K. Effects of thermal environment on sleep and circadian rhythm. J Physiol Anthropol. 2012;31(1):14.(査読レビュー)— 温熱環境と睡眠の関係を扱ったレビュー。暑熱は覚醒を増やし深い睡眠やレム睡眠を減らす。湿度が高いとさらに悪化し、高齢者でより顕著 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3427038/
  11. Haghayegh S, et al. Before-bedtime passive body heating by warm shower or bath to improve sleep: A systematic review and meta-analysis. Sleep Med Rev. 2019;46:124-135.(SR/メタ解析)— 就寝1〜2時間前の温かい入浴・シャワー(10分でも)で寝つくまでの時間が短くなり、睡眠効率や主観的な睡眠の質が改善 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31102877/

免責事項:本記事は薬剤師が公的機関の情報をもとに作成した一般的な情報提供であり、診断・治療を目的とするものではありません。効果には個人差があり、症状・持病・服薬・妊娠授乳の状況などにより適切な対応は異なります。気になる症状がある方、治療中・妊娠授乳中の方などは、自己判断せず医師・薬剤師にご相談ください。詳しくは免責事項をご覧ください。

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薬剤師ブロガー
調剤薬局で働きつつ、薬局DX(業務効率化)にも取り組み中。栄養・健康・睡眠を、公的な情報をもとに「今日からできる」形で解説します。
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