生活習慣

熱中症対策の飲み物、何を選ぶ?経口補水液・麦茶・スポーツドリンクの使い分けを薬剤師が解説

水・麦茶・スポーツドリンク風・経口補水液風のボトルを並べた、夏の飲み物の使い分けを表す俯瞰写真
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「夏の水分補給、結局なにを飲めばいいの?」——水、麦茶、スポーツドリンク、経口補水液。コンビニにはいろいろ並んでいて、使い分けに迷いますよね。

実は、日常のこまめな水分補給と、たくさん汗をかいたときとでは、向いている飲み物が違います。一方で、よかれと思って甘いスポーツドリンクを飲み過ぎると、別の心配も出てきます。

この記事では、薬剤師が公的な情報をもとに、夏の飲み物の選び方を整理します。使い分けの早見表から、経口補水液とスポーツドリンクの違い、飲み過ぎの注意、持病がある人の注意まで、具体的に紹介します。

この記事で分かること
・水・麦茶・スポーツドリンク・経口補水液の使い分け
・経口補水液とスポーツドリンクの違いと、いつ何を飲むか
・甘い飲料の飲み過ぎ(ペットボトル症候群)と、持病がある人の注意

基本|のどが渇く前に、こまめに水分・塩分

まず大前提として、厚生労働省は「室内でも、外出時でも、のどの渇きを感じなくても、こまめに水分・塩分、経口補水液などを補給しましょう」と呼びかけています(出典1)。のどが渇いてから飲むのでは遅いことがあるので、こまめに少しずつが基本です。

たくさん汗をかくときは、水だけでなく塩分も必要になります。環境省は、大量に汗をかく場面では0.1〜0.2%の食塩水(水1リットルに食塩1〜2g)程度が目安としています(出典2)。とはいえ、ふだんから塩を足す必要はありません。日本人はむしろ食塩のとり過ぎが指摘されているくらいです(出典9)。「大量発汗のときは塩分も忘れずに」であって、「とにかく塩を足そう」ではない、と覚えておきましょう。

ふだんの食塩のとり方を見直したい方は、塩分を1日6gに近づける、味を落とさない減塩のコツもあわせてどうぞ。

なお、コーヒーや緑茶、お酒など、カフェインやアルコールを多く含む飲み物は、利尿作用で水分を排出してしまうため、水分補給には向きません(出典3)。飲んではいけないわけではありませんが、水分補給の「主役」にはしない——とくにビールで水分補給、はやめましょう。

飲み物の使い分け早見表|水・麦茶/スポーツドリンク/経口補水液

冷たい麦茶と水のグラス、ラベルのないボトルを並べた、日常の水分補給は水・麦茶を基本にするイメージ
日常のこまめな水分補給は、水や麦茶を基本に。甘い飲料は嗜好品として量を意識しましょう。

では、どんなときに何を飲めばよいのでしょうか。大まかな使い分けを早見表にまとめました。

飲み物向いている場面特徴
水・麦茶日常のこまめな水分補給麦茶はカフェインを含まず、就寝前や子どもにも使いやすい
スポーツドリンク運動・屋外作業など汗を多くかくとき塩分は控えめ・糖分は多めの傾向(出典2・4)
経口補水液大量の発汗・脱水が心配なとき、下痢・嘔吐時塩分(ナトリウム・カリウム)が多め。日常の水代わりにはしない(出典4)
FIG.1 夏の飲み物の使い分け

ポイントは、ふだんは水・麦茶、汗を多くかく場面ではスポーツドリンク、脱水が心配なときは経口補水液、というイメージです。次の章で、まぎらわしい経口補水液とスポーツドリンクの違いを見ていきます。

「そもそも水だけではダメなの?」と塩分・経口補水液の考え方を深掘りしたい方は、熱中症対策は水だけで足りる?塩分・経口補水液の正しい使い方もあわせてどうぞ。

経口補水液とスポーツドリンクは何が違う?|いつ・どちらを

見た目は似ていますが、中身と用途が違います。

消費者庁によると、経口補水液は感染性胃腸炎による下痢・嘔吐に伴う脱水時などの水・電解質補給に利用される「病者用食品」で、ナトリウムやカリウムが多く、糖質も吸収に適した割合で配合されています(出典4)。一方、スポーツドリンクは塩分が控えめで糖分が多めの傾向があります(出典2・4)。ただし製品による差が大きいので、気になるときは栄養成分表示で確認するのが確実です(出典7)。

栄養成分表示の見方(糖質・食塩相当量のチェックの仕方)は、コンビニで栄養バランスを整える組み合わせ方でも触れています。飲み物選びの参考にどうぞ。

選び方の目安はこうです。

  • 日常〜軽く汗をかく程度 → 水・麦茶
  • 運動・屋外作業などで汗を多くかく → スポーツドリンク
  • 大量の発汗・脱水が心配、下痢や嘔吐があるとき → 経口補水液

注意したいのは、経口補水液を毎日の水代わりに使わないことです。塩分が多いため、健康な人が日常的・大量に飲むと、血圧や心臓に負荷がかかることが懸念されます(出典4)。あくまで「脱水が心配なときのための飲み物」と位置づけましょう。

スポーツドリンクの飲み過ぎに注意|糖分・ペットボトル症候群

夏にとくに気をつけたいのが、甘い飲料の飲み過ぎです。スポーツドリンクや清涼飲料を、毎日のように何リットルも飲む習慣が続くと、思わぬ不調につながることがあります。

国立の糖尿病情報センターは、甘い清涼飲料水をたくさん飲み過ぎて「ケトアシドーシス」という状態になることがあり、これをソフトドリンクケトーシスと呼ぶと説明しています(出典5)。一時に大量の糖が入ると、血糖値が急に上がり、重い場合は昏睡を起こすこともあるとされます(出典5)。これが、いわゆる「ペットボトル症候群」(医学的にはソフトドリンクケトーシス)です。

誰にでも必ず起こるものではありませんが、夏に甘い飲料を毎日大量に飲む習慣が続くと起こりうる、と知っておきましょう。また、日本人を対象にした研究では、清涼飲料の飲用量が多い人ほど糖尿病の発症リスクが高い関連が(女性で)報告されています(出典6)。これは「関連」であって「飲めば必ず糖尿病になる」というものではありませんが、量を意識するきっかけにはなります。

「500mLに角砂糖◯個分」といった具体的な数値は出典によって幅があるため、ここでは断定しません。気になるときは、製品の栄養成分表示で糖質(炭水化物)を確認してみてください(出典7)。日常の水分は水・麦茶を基本にし、甘い飲料は嗜好品として量を意識する——これが現実的な付き合い方です。

冷たい飲み物を一気にたくさんとると、胃腸の調子に影響することもあります。冷たいものとの付き合い方は冷たいものの摂りすぎは夏の胃腸不調のもと?お腹にやさしい食べ方で整理しています。

持病・服薬中の人の注意|糖分・塩分・カリウム

持病がある方は、飲み物選びでもうひと工夫が必要です。ただし、熱中症予防のための水分・塩分補給そのものは大切なので、一律に「控えなさい」という話ではありません。

  • 糖尿病・血糖が気になる方:スポーツドリンクや清涼飲料の糖分は血糖を上げます。経口補水液にも糖質が含まれるため、食事制限を指示されている場合は注意が必要です(出典4・5)。
  • 腎臓・高血圧などで塩分・カリウムの制限がある方:経口補水液はナトリウム・カリウムが多めです。食事制限を指示されている場合は注意してください(出典4)。

いずれの場合も、自己判断で量や種類を大きく変えず、自分の場合はどうすればよいかを、かかりつけの医師・薬剤師・管理栄養士に確認するのがいちばんです。「経口補水液は飲んではいけない」ということではなく、「自分に合った使い方を相談する」と考えてください。

まとめ|シーン別の選び方と今日からできること

夏の飲み物は、シーンに合わせて選ぶのがコツです。

  • 基本は、のどが渇く前にこまめに水・麦茶(出典1)
  • 汗を多くかくときは塩分も。スポーツドリンクや、脱水が心配なら経口補水液(出典2・4)
  • 経口補水液は日常の水代わりにしない(出典4)
  • 甘い飲料の飲み過ぎに注意。ペットボトル症候群(ソフトドリンクケトーシス)(出典5)
  • 糖尿病・腎臓・高血圧などの持病がある人は、自己判断で変えず相談を(出典4)

完璧でなくて大丈夫。まずは一つ、今日からできることを選んでみてください。

  1. 【今日】日常はこまめに水・麦茶。出かける前に手元へ1本——のどが渇く前に少しずつ
  2. 【汗を多くかく日】塩分も補える飲み物を一本——経口補水液は脱水が心配なときに
  3. 【甘い飲料が習慣の人】量を意識する。持病があれば相談——日常の水分は水・麦茶を基本に

暑い夏を元気に乗り切るために、シーンに合った一本を選んでいきましょう。

参考文献

  1. 厚生労働省「熱中症予防のために」— 室内でも外出時でも、のどの渇きを感じなくても、こまめに水分・塩分、経口補水液などを補給する https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170795.html
  2. 環境省「熱中症環境保健マニュアル」— 大量に汗をかく場面では0.1〜0.2%の食塩水(水1ℓに食塩1〜2g)、またはナトリウム40〜80mg/100mLのスポーツドリンク・経口補水液などを補給 https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_manual.php
  3. 環境省「健康のため水を飲もう」推進運動 — アルコールや多量のカフェインを含む飲料は尿量を増やし体内の水分を排出するため、水分補給には適さない https://www.env.go.jp/water/water_supply/nomou/index.html
  4. 消費者庁「経口補水液について」— 病者用食品。下痢・嘔吐に伴う脱水時などの水・電解質補給に用いる。ナトリウム・カリウムが多く糖質も含むため食事制限を指示されている場合は注意。日常的・大量摂取は血圧や心臓に負荷の懸念 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_special_dietary_uses/oral_rehydration_solution
  5. 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター「糖尿病の急性合併症のはなし」— 清涼飲料水を大量に飲み過ぎてケトアシドーシス(ソフトドリンクケトーシス)になることがあり、血糖値が急上昇し重症では昏睡を起こすことも https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/060/010/01.html
  6. 国立がん研究センター 多目的コホート研究(JPHC Study)「清涼飲料水と糖尿病発症との関連」— 日本人女性で清涼飲料の飲用量が多いほど糖尿病発症リスクが高い関連。男性では明らかな関連はみられず https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3119.html
  7. 消費者庁「栄養成分表示について」— 加工食品の栄養成分表示(エネルギー・炭水化物・食塩相当量等)。製品ごとの糖質・食塩相当量は表示で確認できる https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/nutrient_declearation/
  8. 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」— 高血圧と食塩摂取の関連、減塩の重要性 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/metabolic/m-05-003.html
  9. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」— 食塩相当量の目標量は成人男性7.5g未満・女性6.5g未満。日本人は食塩のとり過ぎが指摘されている https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001396865.pdf
  10. 日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2024」— 重症時の冷却・救急対応など、熱中症診療の指針 https://www.jaam.jp/info/2024/files/20240725_2024.pdf

免責事項:本記事は薬剤師が公的機関の情報をもとに作成した一般的な情報提供であり、診断・治療を目的とするものではありません。効果には個人差があり、症状・持病・服薬・妊娠授乳の状況などにより適切な対応は異なります。気になる症状がある方、治療中・妊娠授乳中の方などは、自己判断せず医師・薬剤師にご相談ください。詳しくは免責事項をご覧ください。

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薬剤師ブロガー
調剤薬局で働きつつ、薬局DX(業務効率化)にも取り組み中。栄養・健康・睡眠を、公的な情報をもとに「今日からできる」形で解説します。
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