栄養

塩分を1日6gに近づける、味を落とさない減塩のコツ

まな板の上のスライスしたレモンとしょうが、昆布、かつお節——塩に頼らず酸味と香り、うま味で味を出す減塩調理のイメージ
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「減塩したほうがいいのは分かっているけど、薄味だと食事がつまらない」——そう感じて続かなかった経験はありませんか。

塩分を控えると聞くと、つい「味のない食事をがまんする」イメージを持ちがちです。でも実は、減塩のコツは「塩を減らす」より「塩以外でおいしくする」ことにあります。だしのうま味、レモンや酢の酸味、しょうがやこしょうの香り——塩分を増やさずに満足感を出す方法はたくさんあります。

この記事では、薬剤師の視点で、まず「1日6g」がどの基準の話なのかを公的データで整理し(ここを混同すると数字に振り回されます)、そのうえで味を落とさずに塩分を減らす具体的なコツを、今日からできる形でまとめます。

※この記事は一般的な栄養の情報提供です。高血圧・腎臓病・心疾患などで治療中の方、医師から食事制限の指示を受けている方は、自己判断で食事を変える前に、かかりつけの医師・管理栄養士・薬剤師にご相談ください。

「1日6g」って誰の基準?まず数字を整理する

減塩の話で「6g」という数字をよく見かけますが、実はこれは「全員の公式目標」ではありません。塩分の基準は出典によって異なり、ここを混同すると「自分は何gを目指せばいいの?」と混乱してしまいます。まずは代表的な3つの基準を並べて整理しましょう。

出典対象1日の食塩相当量
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」一般の成人(目標量男性 7.5g未満 / 女性 6.5g未満
日本高血圧学会高血圧の人(および予防のために望ましい値)6g未満
WHO(世界保健機関)成人5g未満(ナトリウム2,000mg未満)
FIG.1 食塩相当量の基準の比較(出典別。6gは主に高血圧学会の目標値)

※それぞれ目的・対象が異なる基準です。「6g」は主に日本高血圧学会が掲げる目標値で、一般の人全員の公式目標が6gというわけではありません。

つまり「6g」は、おもに日本高血圧学会が高血圧の人に推奨している目標値です(同学会は、血圧が正常な人にも予防のために可能なら6g未満を勧めています)。一方、厚生労働省が一般の人向けに定める目標量は男性7.5g未満・女性6.5g未満。WHOはさらに厳しく5g未満を掲げています。

数字に幅があるのは、それぞれが見ている目的が違うからです。「まずは7.5g/6.5gの目標量に近づけ、余裕があれば6gを意識する」——このくらいの受け止め方が、一般の人には現実的です。

日本人は実際どれくらい摂っている?

ここで現実を見ておきましょう。令和5年の国民健康・栄養調査によると、日本人(20歳以上)の食塩摂取量の平均は男性10.7g・女性9.1gでした(厚生労働省)。

つまり多くの人が、目標量(7.5g/6.5g未満)を1日あたり2〜4gほど上回っている計算になります。いきなり6gや5gを目指すと挫折しやすいので、「今より2g減らす」くらいから始めるのが、続けるコツです。

なぜ減塩がすすめられるの?(無理のない理解)

「そもそも、なぜ塩分を控えたほうがいいの?」という疑問にも触れておきます。

厚生労働省の e-ヘルスネットでは、「日本人の高血圧の最大の原因は、食塩のとりすぎ」とされています。本態性高血圧は、食塩の過剰摂取・肥満・飲酒・運動不足・ストレス・遺伝的体質などが組み合わさって起こると説明されています(厚生労働省 e-ヘルスネット)。

つまり、過剰な食塩摂取は高血圧との関連が指摘されているということです。ここで大切なのは、「減塩すれば高血圧が治る・必ず予防できる」と言い切れるわけではないという点。塩分はあくまで関連する要因の一つであり、減塩は「血圧の管理に役立つと考えられている生活習慣の一つ」という位置づけで捉えるのが正確です。

高血圧・腎臓病などで治療中の方は、減塩の目標値や進め方が個別に異なります。必ず主治医・管理栄養士の指示を優先してください。

塩分は「どこ」に多い?敵を知ると減らしやすい

減塩がうまくいかない理由の多くは、「自分がどこで塩分を摂っているか」を把握していないことにあります。むやみに食卓の塩を減らすより、塩分の多い食品・調味料を知るほうが効果的です。

調味料に含まれる塩分

普段使う調味料には、思った以上の塩分が含まれています。

調味料小さじ1(約5〜6g)の目安大さじ1(約15〜18g)の目安
食塩約5.9g約17.8g
濃口しょうゆ約0.9g約2.6g
みそ約0.7g約2.2g
ウスターソース約0.5g約1.5g
トマトケチャップ約0.2g約0.5g
マヨネーズ約0.1g約0.3g
0g0g
FIG.2 おもな調味料の食塩相当量の目安(食品標準成分表 八訂より換算)

※日本食品標準成分表(八訂)の100gあたりの値(しょうゆ約14.5g、みそ約12.4g/100g など)をもとにした目安です。製品・種類により幅があります。

この表から見えてくるのは、しょうゆ・みそ・塩を「ひと回し」「ひとさじ」減らすだけでも効くということ。逆に、ケチャップ・マヨネーズ・酢は塩分が比較的少なく、味のアクセントに使いやすい調味料です。

「隠れ塩分」の多い食品

調味料以外にも、それ自体に塩分を含む食品があります。とくに加工食品・塩蔵品は要注意です。

食品食塩相当量の目安(g/100g)ひとくちメモ
梅干し(塩漬)約221粒でも塩分が高い。減塩タイプを選ぶ手も
カップめん(中華スタイル)約7(汁含む1食)汁を残すかどうかで大きく変わる
即席中華めん(袋)約6(1食)同上
たらこ(焼)約5少量でもしっかり塩分
プロセスチーズ約2.8食べる量に注意
たくあん漬約2.5「あと一切れ」が積み重なる
ロースハム約2.5加工肉は全般に多め
ウインナー約1.9朝食の定番だが塩分源に
塩鮭約1.8甘塩・薄塩を選ぶと◎
食パン約1.36枚切り1枚で約0.8g。主食でも積み上がる
FIG.3 食塩相当量が多い食品の目安(可食部100gあたり/食品標準成分表 八訂)

※日本食品標準成分表(八訂)に基づく目安です。商品・調理法で変動します。

注目したいのはカップめん・即席めんの「汁」。厚生労働省 e-ヘルスネットでも、ラーメンなどの汁を全部飲むとそれだけで6g近い食塩になると指摘されています。逆に言えば、汁を残すだけで2〜3gの減塩ができるということです。

味を落とさない減塩のコツ早見表

ここからが本題です。塩分を減らしても満足感を保つには、「塩の代わりにおいしさを足す」発想が役立ちます。厚生労働省 e-ヘルスネットが挙げる「減塩のコツ」をベースに、実践しやすい形でまとめました。

テクニック具体的なやり方なぜ味が落ちにくいか
だし・うま味をきかせるかつお・昆布・干ししいたけのだしを濃いめにうま味が塩味の物足りなさを補う
酸味を使うレモン・かんきつ・酢をひと搾り酸味が味を引き締め、薄味でも満足
香り・辛みを足すこしょう・七味・しょうが・にんにく・大葉香りと刺激で味の輪郭が出る
表面に味をつける調味料は混ぜ込まず、食べる直前に表面へ舌が最初に塩味を感じ、少量で満足
かけずに「つける」しょうゆは料理にかけず、小皿でつける使う量を目で確認でき、減らせる
汁物は具だくさんにみそ汁は具を増やし汁を減らす同じ味付けでも汁の量=塩分が減る
めんの汁を残すラーメン・うどんの汁は飲み干さない汁2〜3gぶんの塩分をカットできる
新鮮な食材を使う旬・新鮮な素材は持ち味で薄味でも美味素材のうま味で調味料が少なくて済む
加工食品・漬物を控えめに漬物は自家製の浅漬けを少量に目に見えない塩分を減らせる
FIG.4 味を落とさない減塩テク早見表(e-ヘルスネット「減塩のコツ」をもとに整理)

※出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」の「減塩に有効な食行動の例」をもとに、調理の工夫を加えて整理。

ポイントは、全部を一度にやろうとしないこと。まずは1〜2個、続けられそうなものから始めれば十分です。

→ 関連記事:ダイエット中に取り入れたい食材5選——素材の持ち味を活かして味を作る考え方は、減塩にも食事改善にも共通します。

今日からできる3ステップ

むずかしく考えず、できるところから始めましょう。

しょうゆを料理にかけずに小皿に注いでつける——今日からできる減塩の第一歩のイメージ
しょうゆは「かける」より「つける」。使う量が目に見えて、自然に減らせます。

ステップ1:「かける」を「つける」に変える

まず今日の夕食から、しょうゆを料理にかけるのをやめて、小皿に出して「つける」に変えてみてください。これだけで使う量が目に見えて分かり、自然と減らせます。刺身・焼き魚・餃子など、ふだん「かけて」いたものほど効果的です。

ステップ2:汁物・めん類の「汁」を1杯ぶん減らす

みそ汁の汁を少し減らして具を増やすラーメンやうどんの汁を飲み干さない——この2つだけで、1日あたり数gの減塩につながります。汁を残すのは、がまんではなく「賢い選択」です。

ステップ3:酸味と香りの”相棒”を1つ常備する

冷蔵庫にレモン・酢・しょうが・こしょう・七味のどれか1つを「減塩の相棒」として常備しましょう。塩を足したくなったとき、代わりにこれをひと振り・ひと搾り。薄味でも味がぼやけず、満足感が保てます。

挫折しそうになったら——減塩は「完璧」を目指すと続きません。外食やラーメンを楽しむ日があってもOK。大事なのは、ふだんの食事で少しずつ整えること。1日単位ではなく、1週間の平均で考えると気がラクになります。

まとめ

  • 塩分の基準は出典で違う。食事摂取基準2025年版の目標量は男性7.5g・女性6.5g未満日本高血圧学会は(高血圧の人に)6g未満WHOは5g未満。「6g=全員の公式目標」ではない。
  • 日本人の平均は男性10.7g・女性9.1g(令和5年)。いきなり6gより「今より2g減らす」から。
  • 過剰な食塩摂取は高血圧との関連が指摘されている(e-ヘルスネット)。ただし「減塩で高血圧が治る・防げる」とは言い切れない。
  • 塩分は調味料(しょうゆ・みそ・塩)と加工食品・塩蔵品・めんの汁に多い。敵を知ると減らしやすい。
  • 味を落とさないコツは「塩を減らす」より「だし・酸味・香りで足す」。まずは1〜2個から。

今日の夕食、しょうゆを「かける」から「つける」に変えるだけでも立派な第一歩です。無理なく、おいしく続けていきましょう。

→ 関連記事:疲れやすい人に不足している栄養素|薬剤師が原因と対策を解説——減塩とあわせて、食事全体のバランスを見直したい方はこちらもどうぞ。

参考文献

  1. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定ポイント
  2. 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」
  3. 日本高血圧学会 減塩・栄養委員会「さあ、減塩!」
  4. 日本高血圧学会 減塩・栄養委員会「ナトリウム(食塩)の減らし方」
  5. WHO「Sodium reduction」ファクトシート
  6. 文部科学省 食品成分データベース(日本食品標準成分表 八訂)
  7. 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査」
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