むくみが気になる人の塩分・カリウム|食事でできることを薬剤師が解説
「夕方になると足がパンパンで、靴下の跡がくっきり」「朝起きると顔がむくんでいる」——暑くなってくると、こんな経験が増えていませんか。
むくみが続くと、「塩分のとりすぎかな」「カリウムを摂るといいって聞いたけど本当?」と気になってきます。実は、毎日の食事の工夫で、むくみのケアにできることはあります。
ただし、食事は万能ではありません。むくみは、ときに腎臓や心臓などの病気のサインであることもあります。また「カリウムを摂ればいい」という話には、薬剤師の立場から見ると注意してほしい「裏面」もあります。
この記事では、塩分(ナトリウム)とカリウムがむくみにどう関わるのかを整理し、何を食べればよいか・どう減らせばよいかを、薬剤師が公的な情報をもとに解説します。夏の発汗との付き合い方や、持病・服薬中の方が気をつけたい点まで、具体的にお伝えします。
この記事で分かること
・塩分(ナトリウム)とカリウムが、むくみにどう関わるのか
・カリウムを多く含む食品と、1食でとれる量の目安
・夏の電解質バランスの考え方と、持病・服薬中の方への注意点
読み終えたら、「今日からできる小さな一歩」を一つだけ選んで始められるように構成しています。全部を一度に変える必要はありません。
むくみとは何か――体の水分バランスが崩れた状態
「むくみ」は、医学的には「浮腫(ふしゅ)」と呼ばれます。医療情報サイトのMSDマニュアル家庭版によると、むくみは「組織内の体液の量が過剰になることによって起こる」状態で、その体液は主に水が占めるとされています(出典1)。
つまりむくみは、体の中の水分が、本来あるべき場所からあふれて、皮膚の下などにたまった状態と考えるとイメージしやすくなります。指で押すと跡が残るのは、そこに余分な水分がたまっているためです。
血管の外に水分がたまるしくみ
体の水分は、血管の中と、血管の外(細胞のまわり)を行き来しながらバランスを保っています。このバランスを左右する要素の一つが、後で出てくる塩分(ナトリウム)です。
何らかの理由で血管の外に水分がたまりやすくなると、それがむくみとして現れます。一時的なむくみであれば、長時間同じ姿勢でいたり、塩分をとりすぎたりといった、生活のなかの要因が関わっていることが多いものです。
健康なむくみと、受診が必要なむくみはどう違う
調剤薬局の窓口でも、「むくみがあるけど、腎臓が悪いのでしょうか」というご相談をいただくことがあります。むくみ=すぐに病気、というわけではありませんが、なかには見過ごせないむくみもあります。
MSDマニュアル家庭版では、全身に起こるむくみの原因として心不全・肝不全・腎疾患などが、片方の脚など局所に起こるむくみの原因として深部静脈血栓症(足の静脈に血のかたまりができる病気)や皮膚の感染症などが挙げられています(出典1)。心臓・肝臓・腎臓・静脈の問題が、体に水分をためてむくみにつながることがあるということです。
そのうえで、同マニュアルは次のようなむくみは医師の診察を受けるべき警告サインとしています(出典1)。
- 急に出てきたむくみ
- 片方の脚だけのむくみ
- 強い痛みや圧痛をともなうむくみ
- 息切れをともなう場合
- せきと一緒に血が出る場合
こうしたサインがあるときは、食事の工夫を続けるより先に、医療機関への相談を検討してください。この記事で紹介する食事の工夫は、あくまで「病気が背景にない、生活のなかのむくみ」を対象にしたものです。
塩分(ナトリウム)がむくみにつながる理由
むくみと食事の話で、まず外せないのが塩分です。塩分の主成分であるナトリウムは、体に必要なミネラルの一種で、厚生労働省 e-ヘルスネットによると「体内の浸透圧や酸性・アルカリ性のバランスを調整する重要な役割」を担っています(出典2)。決して悪者ではありません。
ナトリウムが体内の水を引き寄せるしくみ
問題になるのは、ナトリウムを摂りすぎたときです。ナトリウムには、体に水分を引き寄せて保とうとする性質があります。MSDマニュアル家庭版でも、腎臓の問題などで体に塩分と水分がたまると、それがむくみにつながると説明されています(出典1)。
塩分をたくさんとると、体は塩分の濃度を一定に保とうとして水分を抱え込みます。その結果、体内の水分量が増え、むくみとして感じられる——これが、塩分とむくみがつながる基本的な考え方です。
なお、塩分の摂りすぎは、むくみだけの問題ではありません。e-ヘルスネット「ナトリウム」では、ナトリウムの過剰摂取は高血圧や循環器疾患のリスクを高め、胃がんのリスクにも関わるとされています(出典2)。むくみを気にして塩分を見直すことは、こうした生活習慣病の予防という意味でも理にかなっています。
日本人の食塩摂取量の現状と目標値
では、塩分はどのくらいに抑えればよいのでしょうか。「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、食塩相当量の目標量は18歳以上で男性7.5g未満・女性6.5g未満とされています。高血圧や慢性腎臓病(CKD)の重症化予防という観点では、1日6g未満が望ましいとされています(出典3)。
一方で、実際の摂取量はどうでしょうか。令和5年の国民健康・栄養調査によると、食塩摂取量の平均は男性10.7g・女性9.1gで、いずれも目標量を上回っています(出典4)。多くの人にとって、塩分は「足りない」より「とりすぎ」を気にすべき栄養素だと分かります。
むくみやすい食べ物・メニューの傾向
塩分の摂取量のうち、約半分は調味料(しょうゆ・みそ・塩など)から来ているとされています(出典4)。つまり、味つけの習慣が塩分量を大きく左右します。
塩分が多くなりやすい代表が、汁を全部飲むラーメンやうどん、漬物や梅干し、ハム・ソーセージ・練り物などの加工食品、スナック菓子、外食やお惣菜です。薬剤師として血圧の薬を飲んでいる方のお話を聞いていると、「減塩を意識しているつもり」でも、こうした「隠れ塩分」に気づきにくいケースは少なくありません。自分では薄味のつもりでも、加工食品や外食に含まれる塩分は意外と多いものです。
お酒の席のおつまみも塩分が多くなりがちです。夏の飲酒と脱水、おつまみの塩分の工夫は夏のお酒と脱水|ビールで水分は補えない理由とおつまみの工夫もあわせてどうぞ。
→ 関連記事:塩分を1日6gに近づける、味を落とさない減塩のコツ
カリウムとむくみの関係――ナトリウムの排出を助けるしくみ
塩分(ナトリウム)と対になって登場するのが、カリウムです。カリウムも体に必要なミネラルの一種で、e-ヘルスネットによると、体液の浸透圧の調整や、神経・筋肉の働きに関わっています。そして、ナトリウムの排出を促すことで血圧の低下につながることが知られています(出典5)。
ポイントは「ナトリウムとカリウムのバランス」
ここで大切なのは、「カリウムさえ摂ればよい」のではなく、ナトリウムとのバランスだということです。
e-ヘルスネット「栄養・食生活と高血圧」では、ナトリウムとカリウムの摂取比(ナトリウム/カリウム)を下げることが重要だとされています(出典6)。かみ砕くと、ナトリウム(塩分)を減らしながら、カリウムを増やす——この両輪が、むくみや血圧を意識した食事の考え方になります。塩分を摂りすぎたまま、カリウムだけを足しても、バランスとしては不十分なのです。
同ページでは、高血圧の改善のために提案された「DASH食」も紹介されています。これは、カリウム・カルシウム・マグネシウム・食物繊維・不飽和脂肪酸を増やす食事のパターンで、野菜・果物・大豆製品などをしっかりとる考え方です(出典6)。
このうちマグネシウムも、不足しやすさや薬との関係で気にかけたいミネラルです。多く含む食品や不足しやすい人の特徴はマグネシウム不足のサインと多く含む食品でまとめています。
カリウムは1日にどれくらい?――目安量と目標量
カリウムをどのくらいとればよいか、「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の数値を整理します。少しややこしいのですが、似て非なる2つの基準があるので、混同しないように分けて見ていきましょう(出典3)。
- 目安量(健康を保つために満たしたい量):18歳以上で男性2,500mg・女性2,000mg
- 目標量(生活習慣病の予防のために目指したい量):18歳以上で男性3,000mg以上・女性2,600mg以上
むくみや高血圧の予防を意識するなら、より多い「目標量」、つまり男性3,000mg以上・女性2,600mg以上が一つの目安になります。
ところが、令和5年の国民健康・栄養調査では、20歳以上の平均摂取量は男性2,370mg・女性2,190mgで、男女とも目標量に届いていません(出典4)。多くの人にとって、カリウムは「意識して足したい」栄養素だといえます。次の章で、どんな食品から補えるかを具体的に見ていきます。
「カリウムを摂れば誰でもよい」わけではない――薬剤師からの注意
ここで一つ、強くお伝えしておきたいことがあります。カリウムは、誰にとっても「多ければ多いほどよい」ものではありません。
e-ヘルスネット「カリウム」自身が、「腎臓機能が低下している方はカリウムの摂取制限が必要な場合があるため、医師の指示に従ってください」と明記しています(出典5)。
腎臓は、余分なカリウムを尿として体の外に出す役割を担っています。その働きが弱っていると、カリウムが体にたまりやすくなり、かえって体に負担をかけることがあります。さらに、血圧の薬の種類によっても注意が必要な場合があります。これは薬剤師として特にお伝えしたい大切な点なので、記事の後半「注意点」のセクションで詳しく説明します。
カリウムを多く含む食品リスト――何を食べればよいか

ここからは、カリウムを多く含む食品を具体的に見ていきます。数値はすべて、文部科学省「食品成分データベース」(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)の、可食部100gあたりのカリウム量です(出典7)。
「100gあたり」の数字だけを見ると大きく感じますが、大切なのは「実際に1食で食べる量でどのくらいとれるか」です。後半に1食の目安も載せていますので、あわせてご覧ください。
野菜
野菜は、カリウムを補う主役の一つです。
| 食品 | カリウム量(可食部100gあたり) |
|---|---|
| ほうれんそう(生) | 690mg |
| さといも(生) | 640mg |
| えだまめ(生) | 590mg |
| ブロッコリー(生) | 460mg |
| じゃがいも(生) | 410mg |
ほうれんそうやブロッコリーなどの緑黄色野菜、さといも・じゃがいもなどのいも類は、カリウムをとりやすい食材です。おひたし、温野菜、みそ汁の具など、いつものメニューに取り入れやすいのも利点です。
果物
果物も、手軽にカリウムを足せる食品です。
| 食品 | カリウム量(可食部100gあたり) |
|---|---|
| アボカド(生) | 590mg |
| バナナ(生) | 360mg |
| メロン(露地・緑肉種、生) | 350mg |
| キウイフルーツ(緑肉種、生) | 300mg |
「むくみにバナナがよい」とよく言われるのは、バナナが手軽にカリウムを補える果物だからです。とはいえ、バナナだけが特別なわけではありません。アボカドやキウイ、メロンなども選択肢になります。朝食やおやつに果物を一品足す、という形で無理なく取り入れられます。
海藻・大豆製品
海藻や大豆製品も、カリウムを含む食品です。
| 食品 | カリウム量 |
|---|---|
| ほしひじき(乾) | 6,400mg(100gあたり) |
| 糸引き納豆 | 660mg(100gあたり) |
| カットわかめ(乾) | 430mg(100gあたり) |
| 木綿豆腐 | 110mg(100gあたり) |
ここで注意したいのが、ほしひじきやカットわかめの「乾」の数字です。ほしひじきは100gあたり6,400mgと非常に大きな値ですが、これは乾燥した状態での数字です。実際に1食で使う乾物の量はごくわずか(ひじきなら乾燥5〜10g程度、わかめなら乾燥1〜2g程度)で、水で戻すとかさが増えます。「ひじきは100gで6,400mgもとれる」という見方は現実離れしてしまうので、後述の1食の目安で実感をつかんでください。
1食でどれくらい摂れるか(目安)
最後に、実際に1食で食べる量に換算した、カリウム量のおおまかな目安です。あくまで成分表の100gあたりの値からの単純な計算で、商品や調理法によって変わるため「目安」として参考にしてください。
| 食品(1食の量の例) | カリウム量の目安 |
|---|---|
| バナナ1本(約100g) | 約360mg |
| アボカド半分(約70g) | 約410mg |
| 納豆1パック(約45g) | 約300mg |
| ひじきの煮物(乾5gを使用) | 約320mg |
| 木綿豆腐1/3丁(約100g) | 約110mg |
| わかめのみそ汁(乾2gを使用) | 約9mg |
こうして1食分で見ると、1日の目標量(男性3,000mg以上・女性2,600mg以上)に対して、1品ずつではそれほど大きな量ではないことが分かります。だからこそ、特定の食品に頼りきるのではなく、野菜・果物・大豆製品・海藻を毎日の食事に少しずつ散りばめるのが、現実的で続けやすい方法です。
→ 関連記事:食物繊維は1日どれくらい?20gに近づける現実的な献立のコツ
食事でできるむくみ対策――今日からの実践ステップ
仕組みと食品が分かったところで、「では今日から何をすればいいか」を具体的なステップにまとめます。むずかしく考える必要はありません。
ステップ1:まず「隠れ塩分」を減らす3つの工夫
カリウムを足す前に、まずは塩分を抑える工夫から。これが土台になります。3つ全部を頑張る必要はありません。一番取り組みやすそうなものを、まず1つ選んでみてください。
- だしや酸味で薄味に:だし・酢・レモン・こしょう・香味野菜を使うと、塩分が少なくても満足感のある味になります。
- 汁物は1日1杯までを目安に:ラーメンやうどんの汁を全部飲むのは控えめに。e-ヘルスネットでも、麺類や汁物の汁を残すことで食塩を2〜3g減らせるとされています(出典6)。
- 漬物・加工食品の頻度を見直す:漬物・ハム・練り物などは塩分が多めです。毎食ではなく、頻度を少し減らすだけでも効果があります。
ステップ2:カリウムを食事に足す簡単な方法
塩分を抑えたら、次はカリウムを足します。ポイントは「あと一品」です。毎食きっちり用意しようと気負わず、生活に取り入れやすいものから1つ試すだけで十分です。
- 朝食やおやつにバナナを1本足す
- 夕食の副菜にほうれんそうのおひたしや、ひじき・わかめを一品加える
- おやつに枝豆を選ぶ
- 主菜に納豆や豆腐を添える
たとえば「朝にバナナ1本」だけでも立派な一歩です。野菜・果物・大豆製品・海藻を意識するだけで、ナトリウムを減らしつつカリウムを増やす(ナトリウム/カリウム比を下げる)という方向に近づきます(出典6)。
ステップ3:水分は「控えすぎない」
「むくむから水分を控えよう」と考える方は少なくありません。けれども、これは注意が必要な考え方です。
むくみは、体の水分の「分布」の問題であって、単純に「水を飲んだ量」だけで決まるわけではありません。健康な人が水分を極端に控えることをすすめる公的な根拠は見当たらず、むしろ夏は脱水や熱中症を防ぐために、水分・塩分の補給がすすめられています(出典8・出典9)。
水分は、のどが渇く前からこまめにとるのが基本です。むくみが気になるからといって、水分を極端に減らすのは避けましょう。
ステップ4:コンビニ・外食でもできる選び方
外食やコンビニでも、考え方は同じです。
- 麺類は汁を全部飲みきらない
- 副菜にサラダ・おひたし・冷奴・枝豆・ひじきなどを一品プラスする
- デザートにカットフルーツを選ぶ
- 味つけが濃いものには、しょうゆ・ソースをかけすぎない
完璧を目指す必要はありません。「汁を残す」「野菜か果物を一品足す」——このどちらかを意識するだけでも、十分なスタートです。
夏のむくみに注意したい電解質バランス
夏は、足や顔のむくみが気になりやすい季節です。発汗や冷房など、夏ならではの要因が重なるためです。
汗で失われる主役は「塩分(ナトリウム)」
汗をかくと、水分と一緒に体の電解質が失われます。このとき、汗で主に失われるのは塩分(ナトリウム)です。農林水産省や日本気象協会が推進する情報でも、大量に汗をかいたときは水分だけでなく塩分の補給が必要で、水だけを飲むと体液の塩分濃度が下がってしまうと説明されています(出典8・出典9)。
カリウムなどのミネラルも汗にまったく含まれないわけではありませんが、健康な成人では、その損失は塩分に比べてごくわずかとされています。ですから「夏は汗でカリウムがどんどん抜ける」と心配しすぎる必要はありません。カリウムは、これまで紹介してきたように、野菜や果物から日常的に補うのが基本です。一方、大量に汗をかいたときに意識して補いたいのは、まず塩分のほうだと整理しておきましょう。
スポーツドリンク・経口補水液との付き合い方
大量に汗をかいたときは、塩分を含むスポーツドリンクや経口補水液が適しているとされています(出典8・出典9)。日本気象協会が推進する情報では、塩分補給の目安として、1リットルの水に1〜2gの食塩を加える例が紹介されています(出典9)。
ただし、スポーツドリンクには糖分も含まれます。日常的な水分補給として大量に飲み続けると、糖分のとりすぎにつながることがあるため、ふだんの水分は水や麦茶を基本にするのが安心です。
なお、経口補水液は、食塩の摂取を制限されている方には注意が必要とされており、製品によっては医師・薬剤師などに相談したうえで使うようにと案内されています(出典10)。持病で塩分制限を受けている方は、この点に気をつけてください。夏の水分補給そのものについては、別の機会に詳しくまとめます。
冷房による冷えとむくみ
夏のむくみには、冷房による「冷え」も関わります。冷房の効いた室内で長時間座りっぱなしでいると、血のめぐりが滞り、足に水分がたまりやすくなります。テレワークや長時間の通勤で同じ姿勢が続く方は、ときどき立ち上がって歩く、足首を回す、軽く伸びをするといった動きを挟むと、めぐりの助けになります。食事の工夫と合わせて、体を動かすことも意識してみてください。
注意点――こんな場合は食事だけで対処しないで
ここまで「カリウムを食事から補おう」とお伝えしてきましたが、最後にもっとも大切な注意点をお話しします。カリウムを積極的に摂ることが、かえってリスクになる方がいるという点です。これは、薬剤師として処方箋を見ていると、特に気をつけてほしいと感じる部分です。
腎機能が低下している方への注意
繰り返しになりますが、e-ヘルスネット「カリウム」は、腎臓の機能が低下している方はカリウムの摂取制限が必要な場合があるため、医師の指示に従うようにと明記しています(出典5)。
腎臓は余分なカリウムを尿として排出する臓器です。その働きが弱っていると、カリウムが体にたまり、血液中のカリウム濃度が高くなりすぎる「高カリウム血症」を起こすことがあります。腎臓病などで治療を受けている方は、自己判断でカリウムを増やさないようにしてください。
服薬中の方への注意――降圧薬・利尿薬の種類に気をつける
特に知っておいてほしいのが、お薬との関係です。血圧の薬やむくみの薬(利尿薬)のなかには、体のカリウムを高めやすいタイプがあります。
MSDマニュアル家庭版によると、高カリウム血症の原因として、腎臓からのカリウムの排出を妨げる薬剤が挙げられており、そのなかにACE阻害薬・ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)・カリウム保持性利尿薬(スピロノラクトンなど)が含まれています(出典11)。これらはいずれも、高血圧やむくみ、心臓の治療によく使われるお薬です。
実際、これらのお薬の添付文書(医薬品の公式な説明書)でも、高カリウム血症への注意が示されています。たとえばARBの一種であるロサルタンカリウムでは、高カリウム血症の患者への使用は禁忌(使ってはいけない)とされ、血液中のカリウム値の定期的な確認が求められ、重大な副作用として高カリウム血症が挙げられています(出典12)。カリウム保持性利尿薬のスピロノラクトンでも、高カリウム血症の患者への使用は禁忌とされ、重大な副作用として高カリウム血症などの電解質異常が記載されています(出典13)。
高カリウム血症は、軽いうちは自覚症状が出にくい一方、重くなると不整脈を起こし、カリウム濃度が極めて高くなると心臓が止まることもあるとされています(出典11)。だからこそ、これらのお薬を飲んでいる方が、健康によかれと思ってカリウムを一気に増やすのは、慎重になるべきなのです。
これは決して「カリウムが危ない」という脅しではありません。腎臓に持病がある方、ACE阻害薬・ARB・カリウム保持性利尿薬などを服用中の方は、カリウムを意識して増やす前に、主治医や薬剤師に相談してください——という安全のためのお願いです。今飲んでいるお薬の名前が分からなければ、お薬手帳やパッケージを薬局で見せていただければ、その場で確認できます。
むくみが急に悪化した・片側だけ・息切れをともなう場合は受診を
最後に、記事の前半でも触れた受診のサインをもう一度確認します。MSDマニュアル家庭版では、次のようなむくみは医師の診察を受けるべき警告サインとされています(出典1)。
- 急に出てきたむくみ
- 片方の脚だけのむくみ
- 強い痛みや圧痛をともなうむくみ
- 息切れをともなう場合
- せきと一緒に血が出る場合
むくみは、心臓・肝臓・腎臓・甲状腺などの病気のサインであることもあります。こうしたサインがあるときは、食事の工夫を続けるより、まず医療機関に相談してください。
→ 関連記事:鉄分不足のサインとは?気づきにくい症状と食事で補うコツを薬剤師が解説
まとめ――むくみを食事でケアする3つのポイント
むくみが気になるとき、食事でできることを3つにまとめます。
- 塩分(ナトリウム)を意識して抑える:だし・酸味を活用し、汁物・漬物・加工食品の「隠れ塩分」を見直す
- カリウムを食事から補う:野菜・果物・大豆製品・海藻を毎日の食事に少しずつ。ただし、腎臓に持病のある方・降圧薬や利尿薬を服用中の方は、自己判断で増やさず医師・薬剤師に相談を
- 水分は適切に補給し、極端に控えない:とくに夏は脱水を防ぐため、こまめな水分・塩分補給を
塩分とカリウムのバランスを整えることは、むくみだけでなく、生活習慣病の予防にもつながる考え方です。とはいえ、一度に全部を変える必要はありません。
今日からできる1つとして、次のどちらかを選んでみてください。
- 夕食の汁物を半分にする——汁を残すだけで、塩分をぐっと減らせます
- 明日の朝食やおやつに、バナナを1本足す——手軽にカリウムを補える一品です
むくみがなかなか改善しない、急に悪化した、片側だけ・痛みや息切れをともなう——そんなときは、食事の工夫を続けるより先に、医療機関への相談を検討してください。食事は、体を整える土台。できそうな一つから、無理なく始めてみましょう。
参考文献
- MSDマニュアル家庭版「むくみ」(運営:MSD)— むくみ(浮腫)は組織内の体液(主に水)が過剰になる状態。全身性の原因として心不全・肝不全・腎疾患、局所性の原因として深部静脈血栓症など。警告サイン:突然の発症・片脚のみ・強い痛みや圧痛・息切れ・喀血 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/06-心臓と血管の病気/心臓と血管の病気の症状/むくみ
- 厚生労働省 e-ヘルスネット(健康日本21アクション支援システム)「ナトリウム」— 体内の浸透圧や酸・アルカリのバランスを調整。過剰摂取は高血圧・循環器疾患・胃がんのリスクに関わる https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/food/ye-024.html
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」— 食塩相当量の目標量(18歳以上:男性7.5g未満・女性6.5g未満/高血圧・CKD重症化予防は6g未満)。カリウムの目安量(男性2,500mg・女性2,000mg)・目標量(男性3,000mg以上・女性2,600mg以上) https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001396865.pdf
- 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査」— 食塩摂取量の平均(男性10.7g・女性9.1g)、調味料由来が約半分。カリウム摂取量の平均(20歳以上:男性2,370mg・女性2,190mg)。※数値は e-ヘルスネット各ページに2025年版基準とあわせて記載
- 厚生労働省 e-ヘルスネット(健康日本21アクション支援システム)「カリウム」— 体液の浸透圧調整・神経/筋肉の働きに関与、ナトリウムの排出を促す。腎臓機能が低下している方は摂取制限が必要な場合があるため医師の指示に従う https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/food/ye-005.html
- 厚生労働省 e-ヘルスネット(健康日本21アクション支援システム)「栄養・食生活と高血圧」— ナトリウム/カリウム比を下げることが重要。DASH食(カリウム等を増やす食事)。麺類・汁物の汁を残すと食塩を2〜3g減らせる https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-02-002.html
- 文部科学省 食品成分データベース(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)— 各食品のカリウム量(可食部100gあたり)。ほうれんそう690mg・さといも640mg・えだまめ590mg・ブロッコリー460mg・じゃがいも410mg・アボカド590mg・バナナ360mg・メロン350mg・キウイ300mg・ほしひじき(乾)6,400mg・カットわかめ(乾)430mg・糸引き納豆660mg・木綿豆腐110mg https://fooddb.mext.go.jp/
- 農林水産省「消費者の部屋」相談事例「熱中症対策には、どのような飲料が適していますか。」— 大量発汗時は水分とともに塩分の補給が必要。水だけだと体液の塩分濃度が低下する https://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/2007/02.html
- 「熱中症ゼロへ」(一般財団法人 日本気象協会推進)「熱中症対策のポイントは、水分補給だけでなく塩分補給!」— 汗で水分・塩分・ミネラルが失われる。水だけは危険。塩分補給の目安は水1Lに食塩1〜2g https://www.netsuzero.jp/learning/le01/case01-02
- 大塚製薬工場「OS-1 適正使用について」— 経口補水液は食塩の摂取を制限されている人は医師等に相談のうえ使用する旨の注意 https://www.os-1.jp/pdf_file/9629_OSG3224G01.pdf
- MSDマニュアル家庭版「高カリウム血症(血液中のカリウム濃度が高いこと)」(運営:MSD)— 原因に腎疾患のほかACE阻害薬・ARB・カリウム保持性利尿薬を明記。軽症では無症状のことも、重症化で不整脈、極めて高いと心停止のおそれ https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/12-ホルモンと代謝の病気/電解質のバランス/高カリウム血症-血液中のカリウム濃度が高いこと
- ロサルタンカリウム錠(ARB)添付文書情報(日経メディカル処方薬事典/PMDA承認の添付文書に基づく)— 禁忌「高カリウム血症の患者」、血清カリウム値の定期的モニタリング、重大な副作用「高カリウム血症」 https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/prd/21/2149039F1279.html
- スピロノラクトン錠(カリウム保持性利尿薬)添付文書情報(日経メディカル処方薬事典/PMDA承認の添付文書に基づく)— 禁忌「高カリウム血症の患者」「無尿・急性腎不全」、重大な副作用「電解質異常(高カリウム血症等)」 https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/prd/21/2133001F1476.html
免責事項:本記事は薬剤師が公的機関の情報をもとに作成した一般的な情報提供であり、診断・治療を目的とするものではありません。効果には個人差があり、症状・持病・服薬・妊娠授乳の状況などにより適切な対応は異なります。気になる症状がある方、治療中・妊娠授乳中の方などは、自己判断せず医師・薬剤師にご相談ください。詳しくは免責事項をご覧ください。
