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プロテインは腎臓に悪い?「とりすぎ」の本当のところを薬剤師が整理

プロテインシェイク1杯と、魚・卵・豆腐・枝豆・納豆・野菜・水を並べたバランスのよい食卓の俯瞰写真
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「プロテインは腎臓に悪い」——この話を、友人やSNSで聞いて不安になった方は多いのではないでしょうか。せっかく健康のために飲んでいるのに、逆に体を痛めていたらと思うと、心配になりますよね。

先に、いちばん知りたい結論からお伝えします。健康な腎臓を持つ人が、適量のプロテイン(たんぱく質)をとるぶんには、腎機能を悪化させるという明確な証拠は、現時点の研究では示されていません。 ただし、これには「健康な腎臓なら」「適量なら」という前提があります。慢性腎臓病など腎機能に不安がある人では、話が変わります。

この記事では、薬剤師の視点から、「プロテインと腎臓」の本当のところを、公的な情報と査読論文をもとに正直に整理します。「危険!」と煽ることも、「まったく問題なし!」と言い切ることもしません。あなたが「自分は気にしなくていい側か、注意した方がいい側か」を判断できる材料をお渡しします。

この記事で分かること
・「プロテインは腎臓に悪い」という話がどこから来たのか
・健康な人の「適量」の目安と、その根拠
・注意が必要なケース(慢性腎臓病・服薬中の人など)の見分け方
・気になる人が今日からできる確認ステップ

お急ぎの方へ。「自分は注意した方がいい側か」をすぐ確かめたい方は、記事中ほどの「こんな人は要注意——確認リスト」に進んでください。背景から順に読みたい方は、このまま読み進めてください。

「プロテインは腎臓に悪い」の話はどこから来たのか

なぜ「プロテインは腎臓に悪い」と言われるようになったのか。まずはその出所を、腎臓の働きから整理してみましょう。ここを押さえると、誤解の正体が見えてきます。

腎臓はどんな仕事をしているか(1分で整理)

腎臓は、体の「ろ過装置」です。厚生労働省 e-ヘルスネットによると、腎臓は1日に150〜200Lもの血液をろ過し、尿をつくって老廃物を体の外へ出しています。あわせて、体内のミネラルバランスを整えたり、血液をつくるホルモンを分泌したりする働きも担っているとされています(出典1)。

たんぱく質は、この腎臓の仕事と関わりがあります。たんぱく質は、炭水化物や脂質と違って約16%の窒素を含む栄養素です(出典2)。体内で使われた後にできる窒素を含んだ老廃物(尿素窒素など)は、腎臓でこしとられて尿として排泄されます。

つまり「たんぱく質をたくさんとる」→「処理する老廃物が増える」→「腎臓の仕事が増える」というイメージから、「プロテインは腎臓に負担をかける」という連想が生まれたと考えられます。

「尿にたんぱくが出る」という誤解の火種

もう一つ、誤解のもとになりやすい現象があります。

e-ヘルスネットによると、健康な人でも、肉などたんぱく質を多く含む食品を過剰にとったり、激しい運動や発熱で体に負荷がかかったりすると、一時的に尿にたんぱくが出ることがあるとされています(生理的たんぱく尿)(出典3)。

「たんぱく質をとると尿にたんぱくが出る、だから腎臓に悪い」——この連想は、一見もっともらしく聞こえます。ただし e-ヘルスネットでは、この生理的なたんぱく尿は、病気が原因のたんぱく尿とは区別されるものとされています(出典3)。一時的に出ることと、腎臓が傷んでいることは、イコールではないのです。

高たんぱく食と腎臓——研究は何を言っているか

では、肝心の研究はどうでしょうか。ここが、この記事の核心です。

健康な成人を対象にした研究では、高たんぱく食が腎機能を悪化させるという結果は出ていません。たとえば、28の研究・計1,358人をまとめたシステマティックレビュー&メタアナリシス(複数の研究を統合して分析する手法)では、高たんぱく食は腎機能の指標であるGFR(糸球体ろ過量=腎臓がどれだけろ過できているかの値)に悪影響を与えなかったと報告されています(出典4)。

別のメタアナリシス(30の試験・計2,160人、慢性腎臓病のない人が対象)でも、高たんぱく食でGFRや血液中の尿素などは上がったものの、著者らはこれらの多くを「臨床的には問題のない、体の生理的な適応」と解釈できると述べています(出典5)。

さらに、推奨量を超えてたんぱく質をとった健康な人を調べた26研究のレビューでも、「少なくとも短期間で、食事摂取基準の範囲内であれば、高めのたんぱく質摂取は健康な人の正常な腎機能と矛盾しない」とされています(出典6)。

ここで大切な注意点があります。これらの研究は、いずれも短期〜中期の研究が中心で、何十年という長期の影響まで決着がついているわけではありません。だからこそ「絶対に安全」と言い切ることはできません。あくまで「現時点の研究では、健康な腎機能の人で高たんぱく食が腎機能を悪化させる明確な証拠は示されていない」——これが、いま言える正確な表現です。

健康な人の「適量のプロテイン」——研究と国の基準で整理する

「悪化させる証拠がない」と言われても、「では、どれくらいが適量なの?」が次に気になりますよね。ここからは、国が定める基準をもとに「適量」の目安を整理していきます。

「適量」の目安——食事摂取基準から見る

たんぱく質をどれくらいとればよいかの目安は、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」に示されています。

たんぱく質を1日にどれくらいとればよいかの具体的な目安や、食品からの摂り方は「たんぱく質は1日どれくらい必要?」の記事でくわしく整理しています。

それによると、たんぱく質の推奨量は、成人男性(18〜64歳)で1日65g、65歳以上で60g、成人女性は全年齢で50gとされています(出典7)。これは「不足しないために、これくらいはとりたい」という下限側の目安です。あわせて、1日のエネルギーに占めるたんぱく質の割合(目標量)は、おおむね13〜20%が目安とされています(出典7)。

ここで、腎臓の視点から特に注目したいのが「上限」の扱いです。

食事摂取基準2025では、たんぱく質の耐容上限量(これ以上は避けたいという上限値)は設定されていません。 その理由として、報告書は次のように説明しています。たんぱく質の過剰摂取で最も関連が深いと考えられるのは腎機能への影響だが、2023年に発表された複数の研究をまとめたレビューでも、高たんぱく質摂取が腎疾患の発症リスクを高めるという結論には至らなかった。よって現時点では、上限を設定できるだけの十分かつ明確な根拠がないため、上限は設定しないこととした——という趣旨です(出典8)。

ここは、読み間違えやすいポイントなので、薬剤師としてはっきりお伝えしておきます。「上限が決められていない=いくらとってもよい、安全のお墨付き」ではありません。 報告書自身が、「上限のないたんぱく質の摂取が、健康増進に有益な効果をもたらすわけではない点には注意が必要」と明記しています(出典8)。

正確に言えば、「上限を決めてよいと言えるだけの根拠が、まだ十分にそろっていない」というのが実情です。「だから無制限でOK」という意味ではない——この違いを、ぜひ覚えておいてください。

プロテインパウダーは「特別な食品」ではない

「食事のたんぱく質はよくても、パウダーは人工的だから腎臓に悪いのでは?」という不安もよく聞きます。

たんぱく質は、肉や魚などの食品でも、プロテインパウダーでも、体の中で同じようにアミノ酸(たんぱく質を構成する成分)に分解されて利用されます(出典2)。食品由来かパウダー由来かで、たんぱく質としての代謝に本質的な違いがある、という公的な根拠は見当たりません。つまり、「粉だから腎臓に悪い」という主張に、確かな裏付けはないということです。

ただし、これは「だからパウダーは安全」と積極的に言えるという意味ではありません。「パウダーだから特別に危険、という根拠はない」という、控えめな整理にとどめておくのが誠実だと考えます。

なお、プロテイン製品に含まれる成分(リンなど)については、別の注意があります。e-ヘルスネットによると、腎機能が正常な人でも、リンの多い食事を続けると血液中のリン濃度が高くなり、カルシウムの吸収を妨げて骨に影響することがあるとされています(出典9)。ただしこれは「腎臓固有の害」ではなく、あくまで「量」の問題です。製品をルール無視で大量にとらない、という基本を守れば、過度に恐れる必要はないでしょう。

では「とりすぎ」ってどれくらい?気になる量の目安

「とりすぎが心配」という方が知りたいのは、「どこからが危ないのか」という線引きだと思います。ここは、いちばん正直にお伝えしておきたいところです。

「ここから危険」という明確なラインは、まだない

結論から言うと、「たんぱく質を1日に体重1kgあたり◯gとったら危険」という明確な上限値は、現時点で科学的なコンセンサス(共通見解)が得られていません。 前の章で見たとおり、食事摂取基準2025も、腎機能への影響を理由にした上限を設定できませんでした(出典8)。

ですから、この記事でも「ここからが危険ライン」と断定することはしません。代わりに、「研究の世界では、どのくらいを『高たんぱく食』として扱っているか」という目安を紹介します。

先ほどのメタアナリシスなどでは、おおむね体重1kgあたり1日1.5g以上、または総エネルギーの20%超あたりを「高たんぱく食」として扱う研究が多く見られます(出典4・5)。たとえば体重60kgの人なら、1日90g以上がひとつの目安です。

ただし、くれぐれも誤解しないでください。これは「危険ライン」ではなく、あくまで「研究上の区分」です。「これを超えたら腎臓が壊れる」という意味ではありません。

参考までに、一般の人を対象にした観察研究では、むしろたんぱく質を多くとる人ほど慢性腎臓病になりにくい、という関連を報告したものもあります(6件・約14.8万人のメタアナリシス)(出典10)。ただし、これは「関連」であって「因果関係」ではなく、ほかの生活習慣などが影響している可能性も大きいため、「たんぱく質は腎臓に良い」と読み替えることはできません。少なくとも、「たくさんとるほど腎臓病が増える」という単純な関係は、一般の人では確認されていない——その程度に受け止めるのが適切です。

プロテインパウダーは何杯まで?現実的なラインを試算

では、日常的な使い方に落とし込んでみましょう。薬剤師として、実際の数字で整理してみます。

考え方はシンプルです。「ふだんの食事でとれているたんぱく質」+「プロテイン1杯あたりのたんぱく質」を足して、推奨量(男性65g・女性50g)や目標量と比べるだけです(出典7)。

プロテイン1杯あたりのたんぱく質は、製品によって幅がありますが、一般に約15〜25g程度のものが多く見られます(正確な量は、必ずお手持ちの製品の栄養成分表示を確認してください)。

たとえば、ふだんの3食でたんぱく質を60g前後とれている人が、これに1杯(約20g)を足すと、合計80g前後。前述の「研究上の高たんぱく食」の入口あたりに届く計算です。1日2杯足せば100gを超えてきます。

つまり、食事をきちんととっている人が、プロテインを日に1〜2杯使うくらいなら、極端な高たんぱくにはなりにくい、というのが現実的な感覚です。「念のため何杯も」と重ねていくと話は別なので、自分の食事と合わせて、トータルで把握しておくと安心です。

注意が必要なケース——「自分は大丈夫?」の確認リスト

ここまでは「健康な腎臓を持つ人」の話でした。ここからは、話が変わる人について、誠実にお伝えします。冒頭でお約束した「自分はどちら側か」を見極める、この記事でいちばん大切な章です。

慢性腎臓病(CKD)がある人は、たんぱく質の調整が必要になることがある

慢性腎臓病(CKD=腎機能の低下や尿たんぱくが3か月以上続く状態)がある人では、たんぱく質のとり方が変わってきます。

日本腎臓学会の「慢性腎臓病に対する食事療法基準(2014年版)」では、腎臓の状態(ステージ)に応じたたんぱく質量の目安が示されています。標準体重1kgあたり1日で、ステージG3aは0.8〜1.0g、G3b以降は0.6〜0.8gといった具合です(出典11)。健康な人の推奨量より、抑えめの設定です。

ここで、強くお伝えしたいことがあります。これは「慢性腎臓病の人」の話であって、健康な人に当てはめるものではありません。 健康な人がこの数字を見て、自己流でたんぱく質を減らす必要はありません。

そして、慢性腎臓病の人の食事は、画一的に決められるものではありません。腎臓を守るための制限と、筋力の低下(サルコペニア・フレイル)を防ぐための栄養確保のバランスを、一人ひとりの状態に合わせて調整する必要があります。自己判断で高たんぱくにすることも、逆に極端に減らすことも避け、必ず主治医の指示を最優先してください。

こんな人は要注意——確認リスト

「自分は健康な側か、注意した方がいい側か」。次のリストで確認してみてください。一つでも当てはまる方は、たんぱく質を増やす前に、医療機関への相談をおすすめします。

  • 健康診断で、eGFR・クレアチニン・尿たんぱくの異常を指摘されたことがある……日本腎臓学会によると、eGFR(血清クレアチニン・年齢・性別から推算する腎機能の値)が60未満の状態や尿たんぱくが続く状態が3か月以上あると、慢性腎臓病と診断されるとされています。健診で異常を指摘されたら、放置せず早めに専門医を受診しましょう(出典12)。
  • 糖尿病・高血圧を長年持っている……日本腎臓学会の情報などでは、糖尿病・高血圧は慢性腎臓病の主要な原因・危険因子とされています(出典1・12)。
  • 高齢である……加齢とともに腎機能はゆるやかに低下する傾向があるとされ、高齢になるほど慢性腎臓病の割合は増えるとされています(出典1)。
  • 腎臓に関わる薬を服用している(次の項目で詳しく説明します)

確認できたら、その結果で次の一歩を決めましょう。

  • どれにも当てはまらなかった方——今のところ「健康な側」に立っていると考えてよいでしょう。これまで見てきたとおり、健康な腎機能の人が適量のプロテインをとることについて、腎機能を悪化させる明確な証拠は現時点の研究では示されていません。過度に怖がる必要はありません。先ほどの「適量の目安」(食事+プロテインで極端な量にしない)を意識しながら、続けて大丈夫です(ただし「上限がない=いくらとってもよい」ではない点だけ、覚えておいてください)。
  • 一つでも当てはまった方——「注意した方がいい側」かもしれません。たんぱく質やプロテインを増やす前に、まず医療機関に相談しましょう。やめる・続けるを自分だけで決めてしまう前に、専門家に確認するのがいちばん安心です。
  • 判断に迷う方——「これは当てはまる?」と迷ったら、迷った時点で一度相談してOKです。迷いを抱えたまま続けるより、ずっと気が楽になります。

薬を飲んでいる人へ——薬剤師からのお願い

ここは、薬剤師としてとくにお伝えしたい部分です。

利尿薬、ARBやACE阻害薬(血圧の薬)、痛み止め(NSAIDs)など、腎臓の働きに関わる薬を飲んでいる方がいます。こうした薬を使っている方は、「腎臓の状態に配慮が必要な人」である可能性が高いと考えられます。

正直にお伝えすると、「これらの薬とプロテインが直接、危険な相互作用を起こす」という公的な一次情報には、今回の調査では行き着けませんでした。 ですから、この記事で「この薬とプロテインの組み合わせは危険」と断定することはしません。

そのうえで、お願いしたいのはこうです。腎臓に関わる薬を飲んでいる方は、たんぱく質やプロテインを増やそうと考えたとき、一度「お薬手帳」を薬剤師に見せて相談してください。 あなたが飲んでいる薬と、いまの腎臓の状態を踏まえて、配慮した方がよいかどうかを一緒に確認できます。薬の専門家に気軽に聞ける——これは薬剤師をうまく使うコツです。

なお、筋トレをする方が併用しがちな「クレアチン」というサプリ(後述するクレアチニンとは別物です)については、厚生労働省eJIMに、腎障害のリスクがある人は使用前に今かかっている医療機関に確認するよう、という注意が示されています(出典13)。サプリ全般について、心配な点があれば専門家に確認する——この姿勢が安心につながります。

そもそも「そのサプリは自分に必要か」を見極める順番については、サプリは必要?食事で足りない栄養を見極める順番で整理しています。プロテインを含め、まず食事で足りないかを考える流れの参考にしてください。

今日からできること——「気になる人」の実践ステップ

プロテインシェイク1杯に、鶏肉や魚・ゆで卵・枝豆・野菜・水を控えめに添えた食卓——食事と合わせて適量にする実践のイメージ
ポイントは「食事+プロテイン」のトータルで見ること。1日1〜2杯を目安に、ふだんの食事と合わせて極端な量にしないのがコツです。

ここまで読んで、「自分はどうすれば?」と思った方へ。難しく考える必要はありません。今日からできる4ステップにまとめました。

  1. 【今日】自分のたんぱく質摂取量を、ざっくり把握する
    食事記録アプリなどを使うと、ふだん何gとれているかが見えてきます。アプリはハードルが高いという方は、「昨日1日、肉・魚・卵・大豆・乳製品をどれくらい食べたか」を思い出すだけでも十分なスタートです。まずは現状を知ることから。
  2. 【今日】食事+プロテインの合計を、推奨量と比べてみる
    合計が男性65g・女性50g(推奨量)や目標量に対してどのあたりかを確認します(出典7)。1日1〜2杯のプロテインで極端な量になっていないか、ざっくりでOKです。
  3. 【次の健診で】腎臓の数値(eGFR・クレアチニン・尿たんぱく)を確認する
    健康診断の結果を見て、腎臓関連の項目に異常がないかをチェックしましょう。異常を指摘されたことがあれば、それが判断材料になります(出典12)。
  4. 【処方薬がある人は】薬剤師・医師に一言相談する
    腎臓に関わる薬を飲んでいる方は、たんぱく質を増やす前にお薬手帳を見せて相談を(出典13)。

そして、いちばん大切なこと。前章の確認リストで一つでも当てはまった方は、自己判断で進めず、まず主治医に相談してください。 これが、遠回りに見えていちばんの近道です。

水分をしっかりとることが、腎臓への配慮になる

最後に、プロテインを使う人に意識してほしい、もう一つの実践があります。それは「水分」です。

腎臓は、血液をろ過して老廃物を尿として排泄しています(出典1)。たんぱく質の代謝で生じた老廃物を体の外へ運び出すうえでも、尿のもとになる水分は欠かせません。水は、ヒトの体で最大の構成成分であり、生命に不可欠な存在です(出典14)。

ただし、ここで誤解してほしくないことがあります。「水をたくさん飲めば腎臓が良くなる」「腎機能が改善する」というわけではありません。 あくまで「老廃物の排泄に水分が必要」という体のしくみの話です。

では、どれくらい飲めばよいのか。実は、食事摂取基準では、水について「1日に何L」という目安量や目標量を決められるだけの十分な根拠はない、という立場をとっています(出典14)。ですから「1日◯L飲むべき」と断定することはできません。

現実的には、のどの渇きに応じて、こまめに水分をとるのが基本です。極端に制限することも、無理に大量に飲むことも避けましょう。とくに運動時や汗をかいたときは、意識して補給してください。プロテインを飲むなら、そのときに水もしっかり——くらいの感覚で十分です。

よくある質問(Q&A)

最後に、店頭でもよく聞かれる質問にお答えします。

Q. 腎臓病ではないけれど、eGFRが少し低いと言われました。プロテインはやめるべき?

A. まずは医療機関での評価を優先してください。日本腎臓学会によると、eGFRが60未満や尿たんぱくが続く状態が3か月以上あると慢性腎臓病と診断されるとされています(出典12)。軽度でも繰り返し指摘されるなら、自己判断でたんぱく質を減らす前に、受診して経過を確認してもらうのが安心です。

Q. ホエイ(動物性)と植物性(大豆など)で、腎臓への影響は違いますか?

A. 健康な人について、はっきりした優劣を示す強い根拠は、現時点では乏しいです。一般の人を対象にした観察研究のメタアナリシスでは、植物性・動物性のいずれも、総じて慢性腎臓病になりにくい方向の関連が報告されています(出典10)。ただしこれは観察研究で因果関係ではないため、「動物性だから腎臓に悪い」と単純に言い切ることはできません。なお、慢性腎臓病の方では話が別で、たんぱく質の種類や量を含めて主治医の指示に従う必要があります。

Q. プロテインを飲むと、クレアチニンの数値が上がることがあると聞きました。腎臓が悪くなっているのでは?

A. ここは混同しやすいので、丁寧に整理します。まず「クレアチニン」と「クレアチン」は別物です。クレアチニンは筋肉の代謝でできる老廃物で、腎機能の指標(eGFRの計算に使われる)です。クレアチンは筋トレで使われるサプリの名前です。

数値が動く要因として、二つの可能性が言われています。一つは、筋肉量が多い・増えるとクレアチニンの産生が増え、血液中の値やeGFRに影響しうる、というもの。もう一つは、クレアチン(サプリ)をとるとその代謝物であるクレアチニンが増え、eGFRの計算値が下がりうる、というものです(クレアチンについては出典13で腎機能への言及があります)。

ただし、筋肉量とクレアチニンの関係については、一般によく知られているものの、今回の調査では公的な一次情報の明確な記載までは確認できませんでした。ですので「こういうこともあるとされています」という程度に受け止めてください。一時的に数値が動いた=腎機能が悪化した、とは限りませんが、気になるなら受診・再検査をおすすめします(出典12)。

Q. 薬を飲みながらプロテインを使っても大丈夫ですか?

A. 一律に「大丈夫」「ダメ」と言える公的な情報はありません。だからこそ、処方薬がある方、とくに腎臓に関わる薬を飲んでいる方は、お薬手帳を薬剤師に見せて相談してください(出典13)。あなたの薬と体の状態を踏まえた確認が、いちばん確実です。

まとめ——「プロテインと腎臓」を3行で

長くなったので、要点を整理します。

  • ① 健康な腎機能の人が適量のプロテインをとることは、現時点の研究では腎機能を悪化させる明確な証拠が示されていません(複数のメタアナリシスより)。ただし長期の影響は決着しておらず、「上限がない=無制限でよい」という意味でもありません。
  • ②「とりすぎ」が心配されるのは、とくに腎機能が低下しているケースです。 慢性腎臓病ではたんぱく質の調整が論点になります(日本腎臓学会の基準)。健康な人で「とりすぎ=即危険」という明確な根拠は、まだありません。
  • ③ 自分が「注意した方がいい側」か不安なら、健診の腎臓数値の確認+薬剤師・医師への相談が最短ルートです。 とくに服薬中の方は、お薬手帳を薬剤師に見せてください。

大切なのは、過度に怖がることでも、無防備に飲み続けることでもなく、「自分がどちら側か」を知ることです。まずは「自分の摂取量を把握する」「健診の数値を見てみる」——この小さな一歩から始めてみてください。気になることがあれば、薬剤師はいつでもあなたの相談相手です。

参考文献

  1. 厚生労働省 e-ヘルスネット(健康日本21アクション支援システム)「CKD / 慢性腎臓病」— 腎臓は1日150〜200Lの血液をろ過し尿を作って老廃物を排泄、ミネラルバランス調整・造血ホルモン分泌も担う。腎機能低下・尿たんぱくが3か月以上続くと慢性腎臓病(CKD)。糖尿病・高血圧などが危険因子 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/metabolic/ym-073.html
  2. 厚生労働省 e-ヘルスネット(健康日本21アクション支援システム)「たんぱく質」— たんぱく質は約16%の窒素を含み、アミノ酸が結合した化合物。筋肉・臓器・皮膚・毛髪などの体構成成分で、ホルモン・酵素・抗体としても働く https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/food/ye-044.html
  3. 厚生労働省 e-ヘルスネット(健康日本21アクション支援システム)「たんぱく尿」— 健康な人でも、たんぱく質の過剰摂取・激しい運動・発熱などで一時的に尿たんぱくが出ることがある(生理的たんぱく尿)。病気によるたんぱく尿とは区別される https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/metabolic/ym-070.html
  4. Devries MC, et al. “Changes in Kidney Function Do Not Differ between Healthy Adults Consuming Higher- Compared with Lower- or Normal-Protein Diets: A Systematic Review and Meta-Analysis.” J Nutr. 2018;148(11):1760–1775. — 健康な成人28研究・1,358人のメタアナリシス。高たんぱく食はGFR(腎機能)に悪影響を与えなかった https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6236074/
  5. Schwingshackl L, Hoffmann G. “Comparison of High vs. Normal/Low Protein Diets on Renal Function in Subjects without Chronic Kidney Disease: A Systematic Review and Meta-Analysis.” PLoS One. 2014;9(5):e97656. — 慢性腎臓病のない人30RCT・2,160人。高たんぱく食でGFR等は上昇するが多くは臨床的に問題のない生理的適応と解釈 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4031217/
  6. Van Elswyk ME, et al. “A Systematic Review of Renal Health in Healthy Individuals Associated with Protein Intake above the US Recommended Daily Allowance in Randomized Controlled Trials and Observational Studies.” Adv Nutr. 2018;9(4):404–418. — 推奨量超のたんぱく質摂取をみた26研究のレビュー。短期かつ食事摂取基準の範囲内では、高めのたんぱく質摂取は健康な人の正常な腎機能と矛盾しない https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6054213/
  7. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(各論「たんぱく質」)— たんぱく質の推奨量は成人男性65g(65歳以上60g)・女性50g/日。目標量は1〜49歳で13〜20%エネルギー(年齢で下限が変動、上限は20%エネルギー) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html(各論「たんぱく質」 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316462.pdf
  8. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 本文 — たんぱく質の耐容上限量は設定せず。最も関連が深いのは腎機能への影響だが、2023年のアンブレラレビューでも高たんぱく質摂取が腎疾患の発症リスクを高める結論には至らず、上限を設定し得る十分かつ明確な根拠がないため設定しない。ただし上限のない摂取が健康増進に有益な効果をもたらすわけではない点に注意(p.93〜95) https://h-crisis.niph.go.jp/wp-content/uploads/2024/10/001316126.pdf
  9. 厚生労働省 e-ヘルスネット(健康日本21アクション支援システム)「リン」— 腎機能が正常でも、リンの多い食事を続けると血中リン濃度が高くなり、カルシウム吸収を阻害して骨代謝に悪影響を及ぼすことがある https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/food/ye-038.html
  10. Cheng Y, et al. “Association between dietary protein intake and risk of chronic kidney disease: a systematic review and meta-analysis.” Front Nutr. 2024;11:1408424. — 一般集団の前向きコホート6件・148,051人のメタアナリシス。総たんぱく質摂取が多いほどCKD発症が少ない関連(植物性・動物性とも低リスク方向)。観察研究であり因果関係ではない https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11212527/
  11. 日本腎臓学会編『慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版』(東京医学社)564頁 表1 — CKDステージ別たんぱく質摂取量の目安(g/kg標準体重/日):G1〜G2は過剰摂取をしない、G3aは0.8〜1.0、G3b〜G5は0.6〜0.8 https://cdn.jsn.or.jp/guideline/pdf/CKD-Dietaryrecommendations2014.pdf(数値の裏取り:協和キリン「知ろう。ふせごう。慢性腎臓病(CKD)」564頁表1より一部改変 https://www.kyowakirin.co.jp/ckd/prevention/pre3.html
  12. 日本腎臓学会(一般のみなさま向け)「腎臓検診でわかること」— eGFRは血清クレアチニン・年齢・性別から推算。eGFR60未満が3か月以上、または尿たんぱくが続くとCKDと診断。健診で血尿・尿たんぱく等の異常を指摘されたら早めに専門医受診を https://jsn.or.jp/general/kidneydisease/symptoms02.php
  13. 厚生労働省eJIM(統合医療情報発信サイト)「筋力強化(ボディビル)およびパフォーマンス向上のためのサプリメント」— クレアチンは肝臓や腎臓の機能を損なうかもしれないとの報告があり、腎障害のリスクがある人はクレアチンを使用する前に今かかっている医療機関に確認し、使用中は注意深く管理する必要がある https://www.ejim.mhlw.go.jp/pro/overseas/c02/20.html
  14. 厚生労働省 日本人の食事摂取基準 各論〈参考〉水 — 水はヒトの身体で最大の構成成分で生命に不可欠。水については目安量・目標量を設定できる十分な根拠がないとの立場 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586571.pdf

免責事項:本記事は薬剤師が公的機関の情報をもとに作成した一般的な情報提供であり、診断・治療を目的とするものではありません。効果には個人差があり、症状・持病・服薬・妊娠授乳の状況などにより適切な対応は異なります。腎機能に不安のある方、治療中・妊娠授乳中の方などは、自己判断せず医師・薬剤師にご相談ください。詳しくは免責事項をご覧ください。

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薬剤師ブロガー
調剤薬局で働きつつ、薬局DX(業務効率化)にも取り組み中。栄養・健康・睡眠を、公的な情報をもとに「今日からできる」形で解説します。
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