寝ても疲れが取れない原因5選|薬剤師が徹底解説
「しっかり寝ているのに、なぜか疲れが取れない…」そんな悩みはありませんか?
実は、睡眠時間を確保していても、睡眠の質や生活習慣、栄養状態によっては疲労が回復しにくいことがあります。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、良い睡眠には量(睡眠時間)だけでなく質(睡眠休養感)が同じくらい重要とされています。
この記事では、「寝ても疲れが取れない原因5つ」「今日からできる対処法4つ」「医療機関を受診したほうがよいサイン」を、薬剤師が公的な情報をもとに分かりやすく解説します。
この記事で分かること
・寝ても疲れが取れない主な原因5つ(自己チェック付き)
・今日からできる対処法4つ
・医療機関を受診したほうがよいサインの見分け方
寝ても疲れが取れない主な原因5つ
まずは原因の全体像から見ていきましょう。「自分はどれに当てはまりそうか」をチェックしながら読み進めてみてください。
| 原因 | 思い当たるサイン | 対処のヒント |
|---|---|---|
| ① 睡眠の質が低い | 寝る直前までスマホ/夜食・就寝直前の食事が多い | 対処法①(睡眠環境) |
| ② 自律神経の乱れ | 寝酒が習慣/就寝・起床時間が日によってバラバラ | 対処法①③(環境・運動) |
| ③ 栄養不足 | 食事が炭水化物中心/欠食やダイエットが多い | 対処法②④(食事・サプリ) |
| ④ ストレス・メンタル | 布団に入ると考え事/「寝なきゃ」と焦ってしまう | 対処法③+受診目安 |
| ⑤ 病気が隠れている | 大きないびき/動悸/急な体重変化 | 受診目安の章へ |
① 睡眠の質が低い
まず前提として、疲労回復には「十分な睡眠時間(量)」の確保が欠かせません。厚生労働省の睡眠ガイド2023では、成人は6時間以上を目安に必要な睡眠時間を確保することが推奨されています。ただし適正な睡眠時間には個人差があり、おおよそ6〜8時間が目安です。日中の眠気の有無などから、自分に合った長さを探ってみてください。
そのうえで「しっかり寝ているのに疲れが取れない」と感じる場合は、睡眠の”質”に目を向けてみましょう。睡眠ガイド2023では、睡眠で休養がとれている感覚を「睡眠休養感」と呼び、睡眠時間と同じくらい重要だとしています。
睡眠は、レム睡眠と、深い眠りを含むノンレム睡眠とを約90分の周期で繰り返すことで成り立っています(厚生労働省 e-ヘルスネット)。深いノンレム睡眠では脳が休息し、成長ホルモンの分泌も行われます。このリズムが乱れると、時間は足りていても「休めた感じ」が得られにくくなります。
リズムを乱す代表例が、就寝前のスマートフォンやカフェインです。さらに見落とされがちなのが「就寝直前の食事・夜食」。睡眠ガイド2023では、就寝直前の夜食や間食は体内時計を乱し、翌朝の睡眠休養感を下げることが指摘されています。また、精製された糖質の多い食事と不眠との関連を報告した研究もありますが、因果関係はまだ確定的ではありません。まずは「寝る直前に食べない」ことから意識するのが現実的です。
夜の間食やおやつとの付き合い方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ダイエット中の間食どうする?薬剤師が選ぶ「太りにくいおやつ」と食べ方
薬剤師としての現場でも、「睡眠時間は確保しているのに疲れが取れない」という方の多くに、こうした生活習慣や食事のタイミングの影響が見られます。
② 自律神経の乱れ(ストレス・不規則な生活・寝酒)
睡眠の質と並んで見逃せないのが、自律神経の乱れです。
自律神経は、体を休ませる「副交感神経」と活動を促す「交感神経」のバランスで成り立っています。通常は日中に交感神経が、夜に副交感神経が優位になることで、自然に眠りにつけます。このバランスが崩れると、夜になっても体がリラックスできず、眠りが浅くなることがあります。
バランスを崩す代表的な要因が「ストレス」です。e-ヘルスネットでも、不眠の原因の筆頭に「ストレスと緊張」が挙げられています。緊張状態が続くと、寝つきが悪くなる・夜中に目が覚めるといった形で睡眠の質が下がりやすくなります。
次に「不規則な生活」。就寝・起床時間が日によって大きく異なると体内時計が乱れ、睡眠のリズムに影響します。
そして案外気づかれにくいのが「アルコール」です。お酒を飲むと一時的に寝つきは良くなりますが、睡眠ガイド2023によれば、睡眠の後半で目が覚める回数(中途覚醒)が増えるとされています。さらに飲み続けると耐性や依存が生じ、「飲まないと眠れない」状態になるおそれもあるため、同ガイドは「晩酌は控えめにし、寝酒はしない」ことを推奨しています。
薬局の窓口でも、過度なアルコール摂取をきっかけに睡眠の質が下がり、腹痛などの体調不良まで重なってしまう方を多く見てきました。
③ 栄養不足(タンパク質・ビタミンB群・鉄・マグネシウム)
体は睡眠中に回復しますが、その材料となるのは日々の栄養です。食事のバランスが偏った状態が続くと、知らないうちに疲れやすい状態を招くことがあります。
疲労との関わりでよく話題になる栄養素を整理しました。
| 栄養素 | 体内での主な働き | 多く含む食品 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 筋肉・臓器・皮膚などの材料。ホルモン・酵素・抗体の成分にもなる | 卵・肉・魚・大豆製品 |
| ビタミンB群 | 糖質などの代謝を助け、エネルギーを生み出す働きをサポート | 肉・魚など |
| 鉄 | 赤血球のヘモグロビンの成分として全身に酸素を運ぶ | レバー、赤身の肉・魚、小松菜、ほうれん草 |
| マグネシウム | 300種類以上の酵素を活性化。筋肉の収縮や神経の伝達に関与 | 穀類・豆類・種実類・野菜・海藻 |
※出典:厚生労働省 e-ヘルスネット(各栄養素のページ)をもとに作成。
たとえば鉄は、不足が進んで鉄欠乏性貧血になると、筋肉への酸素供給が減り、筋力低下や疲労感といった症状が起こるとされています(e-ヘルスネット)。食事が麺類や丼ものなど炭水化物中心に偏ると、タンパク質や鉄などが不足しやすくなることがあります。
実際、薬局でお話を聞いていると、食事内容の見直しをきっかけに「疲れにくくなった気がする」と話される方は珍しくありません。
④ ストレスやメンタルの影響
何か考え事があるとき、布団に入ってもなかなか寝つけなかった経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
強いストレスを感じていると、脳や体が休息モードに切り替わりにくくなり、睡眠時間を確保していても眠りが浅くなることがあります。
さらに厄介なのが、「しっかり寝なければいけない」というプレッシャーそのものが、かえって眠りを妨げてしまうこと。睡眠ガイド2023でも、無理に寝ようとせず、眠気が訪れてから寝床に入ることが勧められています。眠れない夜に時計とにらめっこするより、一度布団を出てリラックスする方が結果的に近道です。
服薬相談の場でも、検査や生活習慣に大きな問題が見当たらないのに、強いストレスを背景に慢性的な疲労感を訴える方をよくお見かけします。
⑤ 病気が隠れている可能性
生活習慣やストレスだけでなく、病気が背景にある可能性もあります。
代表的なのは、睡眠中に呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群。そのほか、貧血・甲状腺機能の異常・うつ病などのメンタル不調も、疲れやすさやだるさの原因になることがあります。いずれも自覚しにくく、「しっかり寝ているのに疲れが取れない」という形で気づくケースも少なくありません。
具体的な受診のサインは、記事の後半「こんな症状があれば医療機関へ」で詳しく解説します。気になる症状がある方は、先にそちらをご覧ください。
今日からできる対処法4つ

ここからは、自分でできる対処法を「今日からできる」レベルで具体化します。
① 睡眠環境を整える
どれだけ睡眠時間を確保していても、環境が整っていなければ睡眠の質は下がってしまいます。まずは今夜の寝室をチェックしてみましょう。8項目すべてを満たす必要はありません。「これならできそう」と思えた1つから変えれば十分です。
| チェック項目 | 今夜の目安 |
|---|---|
| 光 | 寝室はできるだけ暗く。寝る前は強い照明を避ける |
| スマホ | 寝室に持ち込まない。寝ながらの使用は特に避ける |
| 温度 | 暑すぎず寒すぎず。冬は室温18℃以上が目安(WHO) |
| 入浴 | 就寝の約1〜2時間前に入浴して体を温めておく |
| 音 | できるだけ静かに。遮音カーテンや寝床の位置も工夫 |
| カフェイン | 敏感な人は就寝の5〜6時間前から控える |
| 夜食 | 就寝直前の食事・間食は控える |
| 寝酒 | しない |
※出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」・e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」をもとに作成。
特に重要なのが「光」です。就寝前に強い光を浴びると寝つきに影響するため、寝る前はできるだけ明るい光を避けましょう。睡眠ガイド2023では、寝室にスマートフォンを持ち込まず、できるだけ暗くして寝ることが勧められています。日中にしっかり光を浴びておくことも、体内時計を整えるうえで有効とされています。
スマートフォンは「光」だけでなく「内容」にも注意が必要です。ショート動画のように次々とコンテンツが切り替わるものは、脳が刺激を受け続けて興奮状態が続きやすく、布団に入っても頭が休まりにくくなります。
温度は「暑すぎず寒すぎず」が基本。冬はWHOの住環境ガイドラインを踏まえて室温18℃以上を保つことが望ましいとされています。無理に冷暖房を我慢せず、快適な温度を保ちましょう。
② 食事・栄養バランスを見直す
体の回復には栄養が必要ですが、「なんとなく食べている」状態では、必要な栄養が足りているか自分でも分かりません。
おすすめは、まず3日分の食事を記録して現状を把握すること。きちんとした記録でなくても、食べる前にスマホで写真を撮っておくだけで構いません。3日分を見返すと、「タンパク質が少ない」「糖質に偏っている」といった傾向に気づくことが多くあります。改善はそれからで十分です。
なお、清涼飲料水や甘い飲み物で短時間に多くの糖質を摂る習慣は、血糖値を大きく変動させやすいといわれており、控えめにしたいポイントです。糖質そのものを極端に制限する必要はなく、「何を、どのタイミングで摂るか」を意識しましょう。特に就寝直前の食事は、前述のとおり睡眠休養感を下げることが指摘されています。
疲れやすさと栄養の関係については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→疲れやすい人に不足している栄養素|薬剤師が原因と対策を解説
③ 軽い運動を取り入れる
疲れていると「運動は逆効果では?」と感じるかもしれません。しかし睡眠ガイド2023では、ウォーキングやジョギングのような有酸素運動は、寝つきを良くし、深い睡眠を増やし、睡眠休養感も高めると報告されています。適度な運動で血流が促され、日中の活動量も増えます。その結果、夜の睡眠の質が高まり、疲労感の軽減につながると考えられます。
ポイントは、激しい運動ではなく「少し心拍数が上がる程度」で十分なこと。ウォーキングや軽いストレッチなど、無理なく続けられるもので構いません。最近は自宅でできる運動動画も充実しているので、「外に出るのが面倒」という日でも体を動かすハードルは下がっています。
忙しいと運動はどうしても後回しになりがちです。だからこそ、「ひと駅歩く」「寝る前に5分ストレッチ」のような小さな一歩から始めるのがおすすめです。なお、寝る直前の激しい運動は交感神経を刺激し、かえって寝つきを悪くする可能性があるため避けましょう。
薬局のカウンター越しにも、日中の活動量を少し増やしたことで「眠りが深くなった」と実感される方の声をよく聞きます。
④ サプリメントは「補助」として使う
食事や生活習慣を見直しても栄養の不足が気になる場合は、サプリメントを取り入れる選択肢もあります。ただし大前提として、栄養は食事から摂るのが基本。サプリメントは不足分を補う「補助」であり、飲むだけで疲れが取れるものではありません。過剰に摂っても効果が高まるわけではなく、かえって体調を崩す原因になることもあります。
薬局で受ける相談でとても多いのが、「どのサプリメントを飲めば改善しますか?」というもの。ですが、サプリメントだけで大きな改善が得られるケースは多くありません。まず食事と生活習慣、そのうえで必要に応じて補助的に——この順番が大切です。
薬を飲んでいる人は「飲み合わせ」に注意
ここは服薬指導の際によくお伝えしている、意外と知られていないポイントです。
一部の抗菌薬(ニューキノロン系・テトラサイクリン系)は、マグネシウム・鉄・カルシウムと一緒に飲むと、薬の効果が弱まるおそれがあります(各医薬品添付文書)。消化管の中で薬とミネラルが結合(キレート形成)し、吸収が下がってしまうためです。該当する薬を処方されたら、ミネラル系サプリとは2時間以上あけるなど、服用の間隔をずらす必要があります。具体的な間隔は薬によって異なるため、かかりつけの薬剤師に確認してください。
また、「鉄はお茶と一緒に飲んではいけない」という話を聞いたことがあるかもしれません。実はこれ、半分は古い通説です。お茶のタンニンは、食物中の鉄の吸収を下げます。しかし医療用の鉄剤は含まれる鉄の量が多いため、お茶で飲んでもヘモグロビン値の増加に影響はないとされています(日本鉄バイオサイエンス学会の治療指針)。一方、食事やサプリメントから摂る非ヘム鉄は食事内容で吸収が変わりうるため、こちらは摂り方の工夫に意味があります。同じ「鉄」でも事情が違う——こうした整理は、ぜひ薬剤師を頼ってください。
服薬中の方は、自己判断でサプリメントを追加せず、かかりつけ医・薬剤師に相談してから始めましょう。
相談のコツは、飲んでいる(または飲みたい)サプリメントのパッケージをスマホで撮っておき、処方箋を出すついでに薬剤師へ見せること。口頭で説明するより正確に伝わり、その場で飲み合わせを確認できます。
こんな症状があれば医療機関へ(受診目安)
生活習慣を見直しても強い疲労感が続く場合は、病気が隠れている可能性も考える必要があります。受診を検討したいサインの目安をまとめました。
| サイン | 考えられる可能性 | 相談先の目安 |
|---|---|---|
| 大きないびき・睡眠中の呼吸停止の指摘・日中の強い眠気 | 睡眠時無呼吸症候群の可能性 | 呼吸器内科・睡眠外来 |
| 顔色が悪い・動悸・息切れ・立ちくらみ | 貧血などの可能性 | 内科 |
| 急な体重の増減・異常な暑がり寒がり・むくみ | 甲状腺機能の異常の可能性 | 内科(内分泌) |
| 気分の落ち込み・興味や意欲の低下が2週間以上続く | うつ病などのメンタル不調の可能性 | 心療内科・精神科 |
| 生活を見直しても強い疲労感が2週間以上続く | 上記を含む何らかの病気の可能性 | まずはかかりつけ医 |
※自己診断のための表ではありません。あくまで「受診を考えるきっかけ」の目安です。
特に注意したいのが睡眠時無呼吸症候群です。睡眠中に呼吸が止まることで深い睡眠が得られず、日中の強い眠気や慢性的な疲労感につながります。e-ヘルスネットでは、ひどいいびきや睡眠中の呼吸停止がある場合は、速やかに専門の医療機関で検査・治療を受けることが大切とされています。放置すると、高血圧や心筋梗塞・脳梗塞のリスク上昇にもつながるとされています。「いびきがうるさいと言われる」「日中の眠気が強い」という方は、早めの受診をおすすめします。
「病院に行くほどではない気がする」と迷うときは、健康診断の結果を持ってかかりつけ医に相談するだけでも一歩前進です。
なお、持病のある方・薬を服用中の方は、この記事の生活改善だけで対処しようとせず、必ずかかりつけ医・薬剤師に相談してください。
まとめ|まずは1つだけ変えてみる
寝ても疲れが取れない原因は一つではなく、睡眠の質・自律神経・栄養・ストレスなどが絡み合っています。
- 良い睡眠は「量(6時間以上が目安・個人差あり)」と「質(睡眠休養感)」の両方で決まる
- 寝る直前のスマホ・夜食・寝酒は、睡眠の質を下げやすい代表的な習慣
- 栄養はまず記録して現状把握から。サプリは「補助」、服薬中なら飲み合わせを薬剤師に相談
- 大きないびき・2週間以上続く強い疲労感などのサインがあれば医療機関へ
全部を一度に変える必要はありません。完璧を目指すより、まず1つだけ変えてみる——それで十分です。
最初の一歩の候補を3つ挙げます。いちばん「これならできそう」と思えたものを、1つだけ選んでみてください。
- 【今夜】スマホを寝室の外で充電する
- 【今夜】寝る直前の間食をなしにしてみる
- 【明日】ひと駅ぶん歩いてみる
できない日があっても大丈夫。やめてしまったのではなく、また今夜から再開すればOKです。1つを1〜2週間ゆるく続けてみて、朝の感覚が少しでも変われば、それがあなたの原因のヒントです。焦らず、できることから一緒に整えていきましょう。
参考文献
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「眠りのメカニズム」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「不眠症」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット 「たんぱく質」・「ビタミン」・「鉄」・「マグネシウム」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠時無呼吸症候群 / SAS」
- レボフロキサシン錠 添付文書(KEGG MEDICUS収載)
- ミノマイシン錠(ミノサイクリン塩酸塩)添付文書(KEGG MEDICUS収載)
- 日本鉄バイオサイエンス学会「鉄剤の適正使用による貧血治療指針」
- Gangwisch JE, et al. Am J Clin Nutr. 2020;111(2):429-439.(高GI食・精製糖の多い食事と不眠リスクの関連を報告した観察研究)

