帰省・旅行に薬を持っていくとき|お薬手帳・持ち歩き・機内で気をつけたいことを薬剤師が解説
お盆の帰省や夏の旅行——荷物の準備をしながら、「毎日の薬をどう持っていこう」「飛行機に薬は持ち込めるのかな」と迷ったことはありませんか。持病の薬でも、市販の常備薬でも、移動中に切らしたり、暑さで傷ませたりせずに持っていきたいものです。
この記事では、薬剤師が公的機関や航空会社の案内をもとに、旅行・帰省に薬を持っていくときの備えを整理します。お薬手帳の携行から、予備を含めた薬のパッキングと分散、飛行機の機内持ち込み、暑い時期の持ち歩きの注意まで、出発前に見直せるポイントを紹介します。なお、持病の薬や処方薬の量・飲み方は自己判断で変えず、不安があるときはかかりつけの医師・薬剤師に相談してください。
この記事で分かること
・お薬手帳を持っていく意味(旅先の急病・災害時にも)
・予備を含めた薬のパッキングと、分けて持つ工夫
・飛行機の機内持ち込み(液体の薬・自己注射薬)と、暑い時期の携行の注意
旅行・帰省に薬を持っていくとき、まず確認したいこと
まず確認したいのは、旅行の日数分+少し余裕をもった量の薬が手元にあるかです。連休やお盆は、旅先で薬局・医療機関が休みだったり、いつもの薬をすぐに受け取れなかったりすることがあります。足りなくなりそうなときは、出発前の早めのタイミングで、かかりつけの医療機関・薬局に相談しておくと安心です。
このとき大切なのは、「旅行だから」と自己判断で薬を減らしたり、まとめて飲んだり、飲む時間を大きくずらしたりしないことです。持病の薬や処方薬の量・飲み方をどう調整するか(時差のある海外や、生活リズムが変わるときなど)は、薬によって考え方が異なります。迷うことがあれば、旅行の予定を伝えたうえで、主治医や薬剤師に相談してください。
この記事で紹介するのは、あくまで一般的な「持っていき方・携行の工夫」です。何を持っていくか・どう飲むかの最終的な判断は、一人ひとりの薬や体調によって変わることを、はじめにお伝えしておきます。
お薬手帳を持っていこう|旅先・急病・災害時の備え
旅行の荷物に、ぜひ加えておきたいのがお薬手帳です。お薬手帳は、これまでに服用した薬や受診した医療機関、薬の名前や量などを記録しておく手帳で、処方せんと一緒に出すことで、飲み合わせや重複のチェックに役立ちます(出典1・2)。
旅行中に頼りになるのが、旅先で急に具合が悪くなったときや、災害にあったときです。薬剤師会は、外出時や旅先で緊急にかかるときや災害時に、お薬手帳を持っていれば「どんな薬を飲んでいるか」「合わなかった薬は何か」がすぐに分かり安心だと説明しています(出典1)。旅先の慣れない医療機関でも、自分の薬の情報を正確に伝えられるのは大きな安心材料です。
ポイントは、病院や薬局ごとに別々に作らず、1冊にまとめておくことです(出典1)。複数の医療機関にかかっている人ほど、1冊にまとまっていると、飲み合わせや重複の確認がしやすくなります。紙のお薬手帳のほか、スマートフォンの電子版お薬手帳を使っている人は、そちらも持っていきましょう。心配な場合は、手帳のページをスマホで撮影しておく・コピーを別の荷物に入れておく、といった備えもできます。
薬の携行、どう準備する?|予備・分散・パッキングのコツ

薬のパッキングは、「切らさない」「なくさない」「傷ませない」の3つを意識すると整理しやすくなります。ここでは、旅行の携行でよく言われる工夫を整理します。
| 工夫 | ねらい |
|---|---|
| 日数分+予備を少し多めに持つ | 移動の乱れ・帰りが延びたときにも切らさない |
| 手荷物と預け荷物などに分けて持つ | 片方を紛失・破損しても薬が残る(出典5) |
| お薬手帳・処方箋の写し・薬の説明書もいっしょに | 薬の名前・量がすぐ分かる。急病時にも役立つ(出典1・4) |
| 水濡れ・つぶれ対策(ポーチ・ジッパー袋など) | 汗・雨・荷物の圧迫から守る |
ピルケースに小分けにすると持ち運びは便利ですが、元の包装や説明書に書かれた情報(薬の名前・使用期限・保管の注意など)も分かるようにしておくと安心です。遮光や防湿のための包装がされている薬もあるため、心配なときは元のシート・容器のまま持っていくとよいでしょう。どの薬を小分けにしてよいか迷うときは、薬剤師に相談してください。
また、糖尿病情報センターは、旅行の際に薬などの半分を家族に持ってもらうなど、分けておくと万一のときに役立つとしています(出典5)。処方薬に限らず、大切な薬は「1か所にまとめない」のが、移動中の紛失・破損への備えになります。
飛行機に薬を持ち込むとき|手荷物・液体の薬・機内持ち込みの基本
飛行機を使う帰省・旅行では、薬は基本的に手荷物として機内に持ち込むのが安心です。預け荷物は手元に届くまで時間がかかったり、温度の管理ができなかったりするため、移動中に必要な薬・大切な薬は手元に置いておきましょう。
迷いやすいのが、シロップ・目薬・点鼻薬などの「液体の薬」です。国際線では、液体物は原則100mL以下の容器に入れ、透明な袋にまとめる決まりがあります。ただし、健康上の理由などでやむを得ず必要な「医薬品」は、この制限の対象外として持ち込めるとされています(出典3・4)。その場合は、保安検査で「医薬品」であることを検査員に申し出るのが基本です(出典3・4)。
このとき、お薬手帳・薬のラベル・処方箋の写し・医師の診断書など、その薬が必要なことが分かるものを携帯しておくとスムーズです(出典4)。航空会社の案内でも、こうした書類の携帯がすすめられています(出典4)。国内線は液体物の一般的な持ち込み制限はありませんが、量が多い液体の薬などは同様に「医薬品」として申し出ると安心です(出典4)。
※機内持ち込みの細かなルールや必要な書類は、利用する航空会社・空港、そして渡航先の国によって異なることがあります。出発前に、利用便の航空会社や保安検査の案内で最新の情報を確認してください。
インスリンなど自己注射薬を持っていくとき|手荷物・凍結・分散
インスリンなどの自己注射薬を使っている人は、旅行の持ち運びに特に気をつかいます。糖尿病情報センターは、注射薬について次のように説明しています(出典5)。
- 注射薬は必ず手荷物に:預け荷物に入れると凍ってしまい、成分が有効でなくなってしまうとも言われています(出典5)。
- 余裕をもった量を、分けて持つ:インスリン・GLP-1受容体作動薬・注射針・アルコール綿・血糖測定の道具は、旅行の日数に必要な量の倍を目安に、分けて持つとされています(出典5)。
- 家族と分散:万が一に備え、薬などの半分を家族に持ってもらうなど、分けておくと有効です(出典5)。
- 証明書の準備:注射薬セットの機内持ち込み証明書(海外旅行なら英語で)を、あらかじめ主治医に用意してもらうと安心です(出典5)。
自己注射薬は、種類によって保管条件(未開封は冷蔵、使用中は室温など)が異なり、凍結させると使えなくなる点は共通の注意です。夏の持ち運びで保冷剤を使うときも、薬を凍らせないよう直接触れさせない工夫をします。旅行前には、自分の薬をどう持ち運び・保管すればよいか、かかりつけの医師・薬剤師に確認しておきましょう。
暑い時期の携行|高温・直射日光を避ける
夏の移動では、薬そのものの品質にも気を配りたいところです。薬には熱・湿気・光に弱いものがあり、高温・直射日光を避けて持ち歩くのが基本です。とくに締め切った車内は非常に高温になるため、休憩や買い物の間でも、薬を車内に置きっぱなしにしないようにしましょう。暑さと薬の作用そのものについては、夏に注意したい薬と熱中症の関係をまとめた記事もあわせてご覧ください。
保冷ポーチや保冷剤を使うときは、前の章でも触れたとおり、薬を凍らせないことに注意します。冷やせばよいわけではなく、凍結で使えなくなる薬もあるためです。持ち歩き方や、どの程度の温度で保管すべきかは薬によって異なるので、不安なときは薬剤師に相談してください。家や車内での薬の保管(高温・冷蔵・凍結の避け方)について詳しくは、夏の薬の保管の記事でまとめています。
暑い時期の移動では、薬の携行と合わせて、自分自身の熱中症対策も忘れずに。厚生労働省は、暑い日は高温を避け、保冷剤・氷・冷たいタオルなどで体を冷やすこと、室内でも屋外でものどの渇きを感じなくてもこまめに水分補給をすることを呼びかけています(出典6)。移動中はこまめな水分補給と休憩を心がけましょう。熱中症対策の水分・塩分のとり方は、熱中症対策と水分・塩分補給の記事もご参考に。
受診できない環境での備えと、迷ったら主治医・薬剤師に|まとめ
帰省先や旅先では、すぐに受診できないこともあります。そんな環境への備えとして、使い慣れた薬と予備、そしてお薬手帳を持っておくと、いざというときに落ち着いて対応しやすくなります。市販薬(OTC)を常備薬として持っていく場合は、使い慣れたものを選び、それぞれの薬の説明書(添付文書)に書かれた効能・効果や使い方の範囲で使いましょう。夏に多い虫刺されの市販薬の選び方は、大人の虫刺されと市販薬の選び方の記事でくわしく扱っています。持病がある人・治療中の人・薬を飲んでいる人は、市販薬との飲み合わせに注意が必要なこともあるため、選ぶ段階で薬剤師に相談すると安心です。飲み合わせの考え方は、薬・サプリの飲み合わせの記事でくわしく扱っています。
ここまでのポイントを整理します。
- 日数分+予備を少し多めに。足りなくなりそうなら出発前に早めに相談を
- お薬手帳は1冊にまとめて携行。旅先の急病・災害時に役立つ(出典1)
- 薬は手荷物に。液体の薬・自己注射薬はとくに手元へ。分けて持つ(出典4・5)
- 飛行機の液体の薬は「医薬品」として検査員に申し出る。書類の携帯を(出典3・4)
- 高温・直射日光を避け、車内放置しない。保冷は凍らせない。熱中症対策も(出典6)
常備薬をそろえることは大切な備えですが、「これさえあれば絶対に安心」という万能の常備薬リストがあるわけではありません。体調や持病、飲んでいる薬によって、必要な備えも注意点も変わります。だからこそ、持病・処方薬・市販薬選びで迷ったら、旅行の予定を伝えたうえで、かかりつけの医師・薬剤師に相談してください。しっかり備えて、安心して帰省・旅行を楽しみましょう。
- 【出発前】日数分+予備の薬が足りるか確認。足りなければ早めにかかりつけへ相談——切らさない備えの第一歩
- 【荷造り】お薬手帳(紙・電子・写真)と処方箋の写しを、薬といっしょに手荷物へ——急病・機内持ち込みの両方で役立つ
- 【迷ったら】飲み方の調整・市販薬選び・自己注射薬の持ち運びは、自己判断せず主治医・薬剤師に相談——一人で抱え込まない
参考文献
- 埼玉県薬剤師会「お薬手帳ってなに?」— お薬手帳は服用した薬・受診した医療機関・薬の名前や量などを記録する手帳。処方せんと一緒に出すと飲み合わせや重複の確認ができる。病院・薬局ごとに別々に作らず1冊にまとめる。外出時や旅先での急病時・災害時に、どんな薬を飲んでいるかがすぐ分かり安心 https://saiyaku.or.jp/citizen/attempt/techo
- 厚生労働省「お薬手帳について」— お薬手帳は患者の服用歴を記載し、経時的に管理するもの、という公的な位置づけ https://www.mhlw.go.jp/content/001332913.pdf
- 国土交通省「国際線の航空機客室内への液体物持込制限について」— 国際線は液体物を100mL以下の容器に入れ透明な袋にまとめる。ただし医薬品など健康上やむを得ないものは、検査員に申し出れば必要量を持ち込める(証拠書類の提示を求められることがある)。国内線は液体物の一般的な制限なし https://www.mlit.go.jp/koku/15_bf_000006.html
- JAL(日本航空)OnTrip「これって液体?機内持ち込みのルールをおさらい」— 健康上の理由でやむなく持ち込む「医薬品」は一部制限なく持ち込み可。その際は「医薬品」として検査員に申し出る。お薬手帳・薬のラベル・処方箋の写し・医師の診断書などを携帯すると安心(航空会社の一般案内) https://ontrip.jal.co.jp/_ct/17724484
- 糖尿病情報センター(国立健康危機管理研究機構)「糖尿病の方の旅行」— インスリン・GLP-1受容体作動薬・注射針・血糖測定の道具は日数に必要な量の倍を分けて持ち、注射薬は必ず手荷物に(預け荷物にすると凍って有効でなくなるとも言われる)。薬は半分を家族に持ってもらうなど分けておく。機内持ち込み証明書(海外旅行なら英語で)を主治医に用意してもらう https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/080/010/10.html
- 厚生労働省「熱中症を防ぎましょう」— 暑い日は高温を避け、保冷剤・氷・冷たいタオルなどで体を冷やす。室内でも屋外でものどの渇きを感じなくてもこまめに水分補給を https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/prevent.html
免責事項:本記事は薬剤師が公的機関の情報をもとに作成した一般的な情報提供であり、診断・治療を目的とするものではありません。薬の持ち運びや保管、飲み方は薬ごとに異なり、症状・持病・服薬の状況などにより適切な対応も異なります。実際の対応は添付文書や医師・薬剤師の指示に従い、旅行時の薬の扱いに不安があるときは自己判断せず、かかりつけの医師・薬剤師にご相談ください。また、機内持ち込みのルールは航空会社・渡航先により異なるため、利用便の案内をご確認ください。詳しくは免責事項をご覧ください。
