生活習慣

その薬、夏は要注意?熱中症・脱水と関わる薬を薬剤師が解説

お薬手帳と水のグラスを、夏の光が差すテーブルに置いた写真。服薬中の人が薬と夏の付き合い方をかかりつけに相談するイメージ
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「夏は薬を飲んでいると熱中症になりやすい」——そんな話を聞いて、不安になっていませんか。毎日の薬と暑さの関係は、たしかに気になるところです。でも、だからといって自己判断で薬をやめてしまうのは、絶対に避けてほしいことです。

この記事では、薬剤師が公的な情報をもとに、薬と熱中症・脱水の関係を整理します。注意したいとされる薬のタイプ、いちばん大切な「やめない・相談する」という考え方、服薬中の人の夏の過ごし方、そして救急を急ぐサインまで。落ち着いて読んでみてください。

この記事で分かること
・薬が熱中症・脱水と関わることがある理由
・自己判断で薬をやめてはいけない理由と、いちばん大切なこと
・服薬中の人の夏の過ごし方と、救急を急ぐサイン

なぜ薬が熱中症と関わるの?|体温調節・発汗・水分への影響

そもそも熱中症は、暑さによって体温の調節がうまくいかなくなり、体に熱がこもってしまう状態です(出典1・6)。私たちの体は、汗をかいたり、皮膚から熱を逃がしたりして体温を下げています(出典3)。暑い環境では、この働きが追いつかなくなることがあります。

薬の中には、こうした発汗や体温の調節、体の水分・電解質のバランスに影響することがあるとされるものがあります。だから「薬を飲んでいる人は、夏に少し気をつけたい」と言われることがあるのです。

ただし、これは「薬を飲んでいるから必ず熱中症になる」という意味ではありません。大切なのは、過度に怖がることでも、ましてや薬をやめることでもなく、正しく知って、いつもの対策をていねいに行うことです。

注意したいとされる薬の例|利尿薬・降圧薬など

日本救急医学会の「熱中症診療ガイドライン2024」では、熱中症のリスクに関連しうる薬として、利尿薬・一部の降圧薬・抗コリン作用のある薬・一部の向精神薬などが挙げられています(出典3)。これらは、汗のかき方や体の水分・体温の調節に関わることがあると考えられています。

薬のタイプ関わるとされる働き
利尿薬尿を増やす作用。脱水に傾きやすいことがある
一部の降圧薬体液量・循環に関わる
抗コリン作用のある薬発汗に関わることがある
一部の向精神薬体温の調節に関わることがある
FIG.1 注意したいとされる薬のタイプ(一例)

出典:日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2024」。これらは観察研究にもとづく補助的な位置づけで、確定的なものではありません。薬の名前・用量の判断はせず、気になる場合はかかりつけの医師・薬剤師にご相談ください。

ここで強調したいのは、薬のタイプだけで「危険」と決めつけないことです。影響の程度は、薬の種類・体質・持病・ほかの薬との組み合わせによって大きく変わります。この記事では、具体的な薬の名前や「夏はこう飲む」といった指示はしません。あくまで「こういうタイプの薬は気にかけておくとよい」という一般的な整理にとどめます。

いちばん大切なこと|自己判断で薬をやめない・減らさない

ここが、この記事でもっともお伝えしたいことです。気になっても、自己判断で薬をやめたり、減らしたりしないでください。

医薬品の情報を扱う独立行政法人PMDAも、医師から処方された薬について、自己判断で量を変えたり中止したりしてはいけない、気になることがあれば医師・薬剤師に相談を、と案内しています(出典4)。

「夏の間だけ薬を休もう」と自分で決めてしまうと、もともとの病気が悪化したり、思わぬ不調につながったりすることがあります。やめる・減らすの判断は、必ず主治医と一緒に。これだけは、ぜひ覚えて帰ってください。

服薬中の人の夏の過ごし方|水分・塩分・環境

水のグラスとお薬手帳を並べた清潔なテーブル。服薬中も水分をとりつつ、薬のことはかかりつけに相談するイメージ
熱中症対策の基本は服薬中も同じ。ただし水分制限の指示がある方は、その指示を優先。迷ったら主治医・薬剤師に相談を。

熱中症対策の基本は、薬を飲んでいる人も同じです。涼しい環境で過ごし、冷房を我慢せず、暑い時間帯を避け、のどが渇く前にこまめに水分・塩分をとる(出典6・7)。まずはこれをていねいに行いましょう。

冷房で体がだるく感じるときの使い方の工夫は、冷房で体がだるい…夏の「クーラー負け」と上手なつき合い方でまとめています。

ただし、大切な例外があります。腎臓や心臓などの病気で、医師から「水分のとり方」について指示を受けている方は、その指示を優先してください(出典5)。こうした場合、一律に「たくさん飲めばよい」とは限りません。自己判断で水分や塩分を増やしたり減らしたりせず、迷ったら主治医に確認しましょう。

熱中症対策で人気の経口補水液も、糖分・塩分・カリウムを含むため、食事制限がある方は注意が必要です(出典8)。飲み物の選び方は、熱中症対策は水だけで足りる?塩分・経口補水液の正しい使い方でくわしく解説しています。

かかりつけに相談しよう|お薬手帳・薬剤師の活用

不安なときの最善の方法は、かかりつけの医師・薬剤師に相談することです。お薬手帳を見せれば、いま飲んでいる薬を踏まえて、具体的なアドバイスをもらえます。

相談のとき、こんなことを聞いてみるとよいでしょう。

  • 「夏に、この薬で気をつけることはありますか?」
  • 「水分や塩分のとり方で、注意することはありますか?」
  • 「体調が悪くなったとき、どうすればいいですか?」

薬局の薬剤師には、処方薬のことを気軽に相談できます。PMDAでも「くすり相談窓口」を案内しています(出典9)。「こんなこと聞いていいのかな」とためらわず、どうぞ頼ってください。

サプリメントや市販薬との飲み合わせが気になる方は、サプリと薬は一緒に飲んで大丈夫?薬剤師が必ず確認する飲み合わせの注意点もあわせてどうぞ。

救急・受診を急ぐサイン

熱中症が疑われ、次のようなサインがあるときは、ためらわず救急車を呼んでください(出典6)。

サイン
自力で水分がとれない
応答や返事がおかしい・意識がない
けいれんを起こしている
体がとても熱い
FIG.2 ためらわず救急車を呼ぶサイン

まずは涼しい場所へ移し、衣服をゆるめて体を冷やし、水分・塩分を補います(自分でとれる場合)(出典6)。応急処置をしても改善しないときは、医療機関を受診してください。持病があって治療中の方や薬を服用中の方は、夏はとくに注意したいとされるため、無理をせず早めの対応を心がけましょう。

まとめ|「やめる」前に「相談」を

薬と夏の暑さについて、いちばん大切な考え方は「やめる前に、相談」です。

  • 一部の薬は、発汗・体温調節・水分バランスに関わることがあるとされる(出典3)
  • でも、自己判断で薬をやめない・減らさない。やめる判断は必ず主治医と(出典4)
  • 熱中症対策の基本は同じ。ただし水分制限の指示がある人は、その指示を優先(出典5)
  • 不安はかかりつけに相談。お薬手帳を活用する
  • 自力で水が飲めない・意識がおかしい・けいれん・体が熱いときは、ためらわず救急車(出典6)

薬を続けながら、夏を安全に過ごすことは十分にできます。まずは一つ、できることから始めましょう。

  1. 【今すぐ】自己判断で薬をやめない・減らさない——やめる・減らすの判断は主治医と
  2. 【次の通院・来局で】「夏に気をつけることは?」とお薬手帳を見せて相談——いまの薬に合わせて教えてもらえます
  3. 【もしものとき】自力で水が飲めない・意識がおかしい・けいれん・体が熱い→ためらわず救急車——迷ったら119番

不安なことは、ひとりで抱えず、かかりつけの医師・薬剤師に相談してください。それが、薬を続けながら夏を元気に乗り切る、いちばんの近道です。

参考文献

  1. 環境省「熱中症環境保健マニュアル ~総論~(2025年7月版)」— 熱中症は暑い環境で体温が上昇し、重要な臓器が高温にさらされて起きる障害の総称。平常時は発汗や皮膚からの放散(熱放散)で体温を下げている https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_manual_ov.php
  2. 環境省「熱中症環境保健マニュアル 2022」— 高齢者は暑さが続くことで次第に脱水が進み、熱中症に至る場合がある https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_manual.php
  3. 日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2024」— 発汗や皮膚からの放散で体温上昇を防ぐが、種々の要因で体温調節機能が破綻すると発症。発症リスク因子として降圧薬・利尿薬・向精神薬・抗コリン薬などを挙げる(BQ2-01/観察研究にもとづく補助的な位置づけ) https://www.jaam.jp/info/2024/files/20240725_2024.pdf
  4. 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)患者向けQ&A「Q9 医師から処方されたくすりを使用する場合の注意」— 自己判断で用量を変えたり中止してはいけない。気になる症状が現れたら医師・薬剤師に相談を https://www.pmda.go.jp/safety/consultation-for-patients/on-drugs/qa/0001.html
  5. 厚生労働省「熱中症予防のために」(リーフレット)— のどの渇きを感じなくてもこまめに水分・塩分を補給。腎臓・心臓等の疾患の治療中で医師に水分摂取を指示されている場合は、その指示に従う https://www.mhlw.go.jp/content/necchushoyobou.pdf
  6. 厚生労働省「熱中症予防のために」(HTMLページ)— 熱中症は発汗による体温調節等がうまく働かなくなり、体内に熱がこもる状態。自力で水が飲めない・応答がおかしいときはためらわず救急車を https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170795.html
  7. 厚生労働省「熱中症予防のための情報・資料サイト」— こまめな水分・塩分補給、暑さを避ける環境づくりなど、熱中症予防の情報・資料 https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/
  8. 消費者庁「経口補水液(けいこうほすいえき)について」— 経口補水液は塩分(ナトリウム)・カリウムなどを多く含む。脱水状態でない人が日常的・大量に摂取することへの注意 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_special_dietary_uses/oral_rehydration_solution
  9. PMDA「全国のくすり相談窓口」— 薬についての相談ができる窓口の案内 https://www.pmda.go.jp/safety/consultation-for-patients/on-drugs/0001.html

免責事項:本記事は薬剤師が公的機関の情報をもとに作成した一般的な情報提供であり、診断・治療を目的とするものではありません。効果には個人差があり、症状・持病・服薬・妊娠授乳の状況などにより適切な対応は異なります。気になる症状がある方、治療中・妊娠授乳中の方などは、自己判断せず医師・薬剤師にご相談ください。詳しくは免責事項をご覧ください。

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調剤薬局で働きつつ、薬局DX(業務効率化)にも取り組み中。栄養・健康・睡眠を、公的な情報をもとに「今日からできる」形で解説します。
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