疲れやすい人に不足している栄養素|薬剤師が原因と対策を解説
「しっかり休んでいるのに疲れやすい」「なんとなく体がだるい」と感じることはありませんか?
疲れやすさの背景の一つに、「栄養の偏り」が関係していることがあります。食事の量は足りているつもりでも、体の回復に必要な栄養素が十分でないケースもあります。
この記事では、疲れやすい人に不足しやすい4つの栄養素(タンパク質・ビタミンB群・鉄・マグネシウム)を、働きと食品の早見表で整理します。さらに、栄養が偏りやすい生活習慣のセルフチェックから「今日の食事に何を1品足すか」まで、薬剤師が公的な情報をもとに解説します。
この記事で分かること
・疲れやすい人に不足しやすい4つの栄養素(早見表付き)
・栄養不足になりやすい生活習慣のセルフチェック
・今日の食事に足せる一品と、受診を考えたいサインの見分け方
目次(タップで各見出しに移動できます)
疲れやすい人に不足しやすい4つの栄養素
体は、食事から摂った栄養素を材料にエネルギーを作り、傷んだ組織を修復しながら回復しています。栄養バランスが偏った状態が続くと、エネルギーがうまく作れなかったり、回復が追いつかなかったりして、疲れやすさにつながることがあります。
注意したいのは、「量を食べていても、特定の栄養素は足りていない」ことが起こりうる点です。お腹は満たされていても、回復の材料が揃っているとは限りません。
まずは、疲労との関わりでよく話題になる4つの栄養素を、働きと食品で整理しておきましょう。
| 栄養素 | 体内での主な働き | 多く含む食品 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 筋肉・臓器・皮膚などの材料。ホルモン・酵素・抗体の成分にも | 卵・肉・魚・大豆製品 |
| ビタミンB群 | 糖質などの代謝を助け、エネルギーづくりをサポート | 肉・魚など |
| 鉄 | 赤血球のヘモグロビンの成分として全身に酸素を運ぶ | レバー、赤身の肉・魚、小松菜、ほうれん草 |
| マグネシウム | 300種類以上の酵素を活性化。筋肉の収縮や神経の伝達に関与 | 穀類・豆類・種実類・野菜・海藻 |
※出典:厚生労働省 e-ヘルスネット(各栄養素のページ)をもとに作成。
① タンパク質
タンパク質は筋肉や臓器、皮膚などの材料になるだけでなく、ホルモン・酵素・抗体の成分にもなる、体の回復に欠かせない栄養素です(e-ヘルスネット)。
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、成人の推奨量は1日あたり男性65g・女性50gとされています。
「日本人はタンパク質不足」と言われることがありますが、実はデータを見ると少し違います。令和5年の国民健康・栄養調査では、1日の平均摂取量は男性76.5g・女性65.0gと、平均では推奨量を満たしています。問題は「平均」ではなく「偏り」。丼物や麺類など炭水化物中心の食事が続く人、欠食が多い人、ダイエットで食事量を減らしている人、食が細くなった高齢の方などでは、必要量に届かないことがあります。
薬剤師として店頭でお話を聞いていると、「味噌汁を飲んでいるからタンパク質は足りている」と認識されている方がいらっしゃいました。ですが実際に食事内容を伺うと、必要量にはまったく届いていない。こうした「足りているつもり」のケースに、たびたび出会います。自分の食事がどちら側かは、後ほど紹介する食事記録で確かめられます。
→ 関連記事:ダイエットで食事量を減らしている方は、ダイエット中に取り入れたい食材5選|薬剤師が選ぶ「無理なく続く」食べ方で、タンパク質や鉄を確保しやすい食材の選び方を紹介しています。
② ビタミンB群
ビタミンB群のうちB1・B2・ナイアシンには、エネルギー代謝を助ける働きがあります(e-ヘルスネット)。不足が続くと、食事から効率よくエネルギーを作りにくくなることがあります。
知っておきたいのは、ビタミンB1の必要量は、エネルギー(特に糖質)の摂取量に応じて増えることです。食事摂取基準では、B1の必要量はエネルギー摂取量1,000kcalあたりの量をもとに設定されています。ビタミンB1は、糖質をエネルギーに変えるときに使われる栄養素です。そのため、ご飯・麺・甘いものなど糖質を多くとる人ほど必要量が増え、相対的に不足しやすくなることがあります。
また、ビタミンB群は水溶性ビタミンに分類されるため、一度にまとめてではなく、毎日の食事でこまめに摂りたい栄養素です。肉や魚を食べる機会が少ない食生活では、確保しにくくなる点にも注意しましょう。
③ 鉄
鉄は、体内の約70%が赤血球のヘモグロビンや筋肉のミオグロビンの成分として、全身に酸素を運ぶ役割を担っています。不足が進んで鉄欠乏性貧血になると、筋肉への酸素供給が減り、筋力低下や疲労感といった症状が起こるとされています(e-ヘルスネット)。
特に注意したいのが、月経のある女性です。食事摂取基準(2025年版)では、月経のある18〜49歳女性の鉄の推奨量は1日10.0〜10.5mgと、月経のない場合(6.0mg)の約1.7倍に設定されています。一方、令和5年の国民健康・栄養調査では、20代女性の平均摂取量は6.5mg、30代は6.2mg。推奨量を大きく下回っているのが実情です。
鉄には、肉や魚に含まれる「ヘム鉄」と、植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」の2種類があります。非ヘム鉄は吸収率が低く、組み合わせる食品の影響を受けやすいのが特徴です。ビタミンCや動物性タンパク質は吸収を助けるとされるため、「小松菜のおひたし+肉料理」「レバー+ピーマン」のような組み合わせが効率的です。鉄が不足したときに出やすいサインや、食事で補うコツは鉄分不足のサインでくわしく解説しています。
なお、「鉄はお茶と一緒に摂ってはいけない」という話を聞いたことがあるかもしれませんが、これは半分は古い通説です。お茶のタンニンが、食事やサプリメントの非ヘム鉄の吸収を妨げることはあります。一方で、医療用の鉄剤は含まれる鉄の量が多いため、お茶で飲んでもヘモグロビン値の増加に影響はないとされています(日本鉄バイオサイエンス学会の治療指針)。貧血で鉄剤を処方されている方が無理にお茶を我慢する必要はない、というのが指針の立場です。同じ「鉄」でも事情が違う——迷ったら薬剤師に聞いてください。
④ マグネシウム
マグネシウムは、300種類以上の酵素を活性化し、筋肉の収縮や神経の情報伝達、体温・血圧の調整に関わるミネラルです(e-ヘルスネット)。
この栄養素が見逃されやすい理由は、体内での分布にあります。体内のマグネシウムは約50〜60%が骨に、残りの大部分が筋肉や脳・神経などの細胞内に存在し、血液中には1%未満しかありません(国立長寿医療研究センター)。そのため、血液検査の血中濃度だけでは体内の不足を捉えにくい、「気づきにくい栄養素」と言えます。健診の数値に表れにくいぶん、日々の食事で意識しておきたいポイントです。
マグネシウムは、穀類・豆類・ナッツ・海藻など植物性食品に広く含まれています。加工食品中心の食事が続くとこうした食品が減りやすいため、意識して取り入れていきましょう。
→ 関連記事:加工食品が多い食生活では、塩分のとりすぎも気になるところです。食事全体を整えたい方は塩分を1日6gに近づける、味を落とさない減塩のコツもあわせてご覧ください。
栄養不足になりやすい生活習慣チェック
ここまで見てきた栄養素は、特定の生活習慣を持つ人ほど不足しやすい傾向があります。自分に当てはまるものがないか、チェックしてみてください。
| 当てはまる習慣 | 不足が心配な栄養素 |
|---|---|
| 朝食を抜くことが多い | 全般(1日に栄養を摂る機会が減る) |
| 外食・コンビニ中心の食生活 | タンパク質・ビタミン・ミネラル |
| 丼物・麺類など炭水化物中心 | タンパク質・ビタミンB1・鉄 |
| 動物性食品をほとんど摂らない | タンパク質・鉄(ヘム鉄) |
| お酒をよく飲む | ビタミンB1・マグネシウム |
| ダイエット中・食事量が少ない | タンパク質・鉄をはじめ全般 |
| 月経がある | 鉄 |
朝食を抜く習慣があると、1日のうちで栄養を摂る機会そのものが減ります。昼と夜だけで必要な栄養素をすべて揃えるのは、意外とハードルが高いものです。
外食やコンビニ中心の食生活は、一見しっかり食べているようでも、炭水化物と脂質に偏りやすい傾向があります。丼物・麺類が続く場合も同様で、エネルギーは足りていても、タンパク質やビタミンB1、鉄が手薄になりがちです。
お酒をよく飲む人は、食事が偏りやすいことに加えて、ビタミンB1やマグネシウムが不足しやすいことが知られています。多量飲酒はビタミンB1欠乏の主な要因の一つとされています(e-ヘルスネット)。マグネシウムも、アルコールの多飲(アルコール依存症)が血中マグネシウムの不足(低マグネシウム血症)をきたす原因の一つに挙げられています(国立長寿医療研究センター)。お酒の席が多い時期は、特に食事の中身を意識したいところです。
複数当てはまった方は、知らないうちに栄養の偏りが疲れやすさにつながっているかもしれません。次の章で、今日からできる対策を具体的に見ていきましょう。
今日からできる対策|まず何を1品足すか

対策といっても、食生活を全部作り直す必要はありません。「現状を知る→1品足す」の2ステップで十分です。
① まず3日分の食事を記録して現状を把握する
「しっかり食べているつもり」と実際の栄養バランスは、案外ずれているものです。感覚で判断する前に、まず現状を見える化してみましょう。
おすすめは、3日分の食事を、食べる前にスマホで写真に撮るだけの記録です。カロリー計算もアプリも要りません。3日分の写真を見返すと、「タンパク質のおかずがほとんどない」「茶色い炭水化物ばかり」「野菜・海藻が見当たらない」といった傾向が、自分の目でもはっきり分かります。
3日が長く感じるなら、まずは今日の1食だけでも構いません。1枚撮れば、「タンパク質のおかずがあるか」は今日のうちに確認できます。改善はそれからで十分です。まずは「撮るだけ」から始めてみてください。
② タンパク質から1品足す
記録で偏りに気づいたら、次は「何かを我慢する」のではなく「1品足す」ことから始めましょう。引き算より足し算のほうが続けやすく、最初の一歩に向いています。
コンビニやスーパーで今日から足せる一品の例をまとめました。
| 不足が気になる栄養素 | コンビニ・スーパーで足せる一品の例 |
|---|---|
| タンパク質 | ゆで卵、サラダチキン、納豆、豆腐、ヨーグルト |
| ビタミンB群 | 豚肉のおかず(生姜焼き等)、焼き魚、納豆 |
| 鉄 | 小松菜・ほうれん草のおひたし、赤身の肉・魚、レバー串 |
| マグネシウム | 素焼きナッツ、海藻サラダ、ひじき煮、納豆 |
まず優先したいのはタンパク質です。丼物や麺類が中心の日は、ゆで卵やサラダチキン、納豆を1品プラスするだけで、タンパク質を上乗せできます。納豆はタンパク質とマグネシウム、小松菜のおひたしは鉄と、1品で複数の栄養素をカバーできる食品もあります。1日に必要なたんぱく質の量と、手軽な摂り方もあわせてご覧ください。
「毎食完璧に」ではなく、「今日の1食に1品」で大丈夫。それを続けられそうなら、少しずつ品数や頻度を増やしていきましょう。
なお、①の記録が3日たまるのを待つ必要はありません。「撮ってみたら今日もおかずが少なかった」と気づいたその食事から、1品足して大丈夫です。
③ サプリ・プロテインは「補助」として使う
食事だけでは不足が気になる場合、プロテインやサプリメントを取り入れるのも一つの方法です。ただし大前提として、栄養は食事から摂るのが基本。サプリメントやプロテインは不足分を補う「補助」であり、飲むだけで疲れが取れるものではありません。過剰に摂っても効果が高まるわけではなく、かえって体調を崩す原因になることもあります。
そして、薬を服用中の方に、服薬指導でよくお伝えしているのが飲み合わせの注意です。一部の抗菌薬(ニューキノロン系・テトラサイクリン系)は、マグネシウム・鉄・カルシウムと一緒に飲むと、薬の効果が弱まるおそれがあります(各医薬品添付文書)。消化管の中で薬とミネラルが結合し、吸収が下がってしまうためです。該当する薬を処方されたら、ミネラル系サプリとは2時間以上あけるなど、服用の間隔をずらす必要があります。具体的な間隔は薬によって異なるため、かかりつけの薬剤師に確認してください。
服薬中の方は、自己判断でサプリメントを追加せず、かかりつけ医・薬剤師に相談してから始めましょう。 飲んでいる(飲みたい)サプリのパッケージをスマホで撮っておき、処方箋を出すついでに薬剤師へ見せると、その場で飲み合わせを確認できます。
栄養だけでは説明できないケース(受診目安)
食事を見直しても疲れが続く場合、原因は栄養以外にあるかもしれません。考えたい方向は2つあります。
1つめは、睡眠や生活習慣の問題です。 疲れが取れない原因は栄養不足だけでなく、睡眠の質や自律神経の乱れ、ストレスなども関係しています。「食事は整えたのに、朝すっきり起きられない」という方は、こちらの記事で原因の全体像をチェックしてみてください。
→寝ても疲れが取れない原因5選|薬剤師が徹底解説
2つめは、病気が隠れている可能性です。 貧血や甲状腺の異常などは、「なんとなく疲れやすい」という形で現れることがあります。次のようなサインがあれば、食事の工夫を続けるより先に、医療機関への相談を検討してください。
| サイン | 考えられる可能性 | 相談先の目安 |
|---|---|---|
| 顔色が悪い・動悸・息切れ・立ちくらみ | 貧血などの可能性 | 内科 |
| 急な体重の増減・異常な暑がり寒がり | 甲状腺機能の異常などの可能性 | 内科 |
| 食事や生活を見直しても強い疲労感が2週間以上続く | 何らかの病気の可能性 | まずはかかりつけ医 |
※自己診断のための表ではありません。あくまで「受診を考えるきっかけ」の目安です。
「病院に行くほどではない気がする」と迷うときは、健康診断の結果を持ってかかりつけ医に相談するだけでも一歩前進です。
なお、持病のある方・薬を服用中の方は、自己判断で食事やサプリメントの工夫だけに頼らず、必ずかかりつけ医・薬剤師に相談してください。
まとめ|今日の食事に1品足すことから
疲れやすさの背景には、見逃されやすい「栄養の偏り」が関係していることがあります。
- 疲労との関わりが指摘されているのは、タンパク質・ビタミンB群・鉄・マグネシウムの4つ
- タンパク質は平均では足りている。問題は丼・麺中心、欠食、ダイエットなどの「偏り」
- 月経のある女性は鉄の推奨量が約1.7倍。平均摂取量は届いていない
- まずは3日分の食事をスマホで撮って現状把握。そのうえで「1品足す」
- サプリは「補助」。服薬中の方は飲み合わせを薬剤師に相談を
完璧な食事を目指す必要はありません。最初の一歩の候補を3つ用意しました。今の生活に滑り込ませやすいものを、どれか1つ選んでみてください。
- 【今日】次の食事を1枚撮る——食べる前にスマホを向けるだけ。記録はそこから始まります
- 【今日】FIG.3から1品足す——ゆで卵1個、納豆1パックで十分です
- 【次に薬局へ行く日】サプリの飲み合わせを聞いてみる——服薬中の方は、パッケージの写真を見せるだけでOK
途中で止まった日があっても、失敗ではありません。次の食事が、そのまま再開のタイミングです。小さな1品の積み重ねが、疲れにくい体づくりへの一歩になります。
参考文献
- 厚生労働省 e-ヘルスネット 「たんぱく質」・「ビタミン」・「鉄」・「マグネシウム」
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(各論: たんぱく質・水溶性ビタミン・微量ミネラル)
- 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「ウェルニッケ・コルサコフ症候群」
- 国立長寿医療研究センター「血清マグネシウムの院内測定について」
- レボフロキサシン錠 添付文書(KEGG MEDICUS収載)
- ミノマイシン錠(ミノサイクリン塩酸塩)添付文書(KEGG MEDICUS収載)
- 日本鉄バイオサイエンス学会「鉄剤の適正使用による貧血治療指針」
免責事項:本記事は薬剤師が公的機関の情報をもとに作成した一般的な情報提供であり、診断・治療を目的とするものではありません。効果には個人差があり、症状・持病・服薬・妊娠授乳の状況などにより適切な対応は異なります。気になる症状がある方、治療中・妊娠授乳中の方などは、自己判断せず医師・薬剤師にご相談ください。詳しくは免責事項をご覧ください。
