生活習慣

夏の薬の保管、大丈夫?高温・車内・持ち歩きで気をつけたいことを薬剤師が解説

直射日光を避けた涼しい室内の戸棚に置かれた薬箱と室温計。夏でも高温・湿気を避けて薬を保管するイメージ
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「常備薬を夏の車の中に置きっぱなしにしていた」「インスリンを持ち歩いているけれど、この暑さで大丈夫?」——気温も湿度も高い夏は、薬そのものの品質が心配になる季節です。

薬には、有効成分が熱・湿気・光に弱いものが少なくありません。この記事では、薬剤師が公的機関や製薬情報をもとに、夏に薬を劣化させないための保管の基本を整理します。「室温」「冷所」の意味から、家の中の置き場所、車内放置、冷蔵庫に入れる薬・入れない薬、インスリンなど自己注射薬の持ち歩きまで、今日から見直せるポイントを紹介します。

この記事で分かること
・「室温(1〜30℃)」「冷所」など保管温度の意味
・夏に避けたい場所(車内・窓際・浴室など)と正しい置き場所
・冷蔵庫に入れる薬・入れない薬、インスリンなど自己注射薬の夏の扱い

薬にも「保管温度」がある|「室温」「冷所」ってどういう意味?

薬の容器や説明書(添付文書)には、「室温保存」「冷所保存」といった言葉が書かれています。じつはこれらは感覚的な表現ではなく、日本薬局方という薬の公的な基準で温度の範囲が定められています(出典1・2)。

表示温度の目安
常温15〜25℃
室温1〜30℃
冷所(冷蔵)おおむね15℃以下(冷蔵庫内は4℃前後)※別に規定がなければ1〜15℃
FIG.1 保管温度の表示と目安(日本薬局方などによる/出典1・2・3)。実際の保管条件は薬ごとに添付文書・説明書の指示に従ってください。

ここでのポイントは、「室温」といっても目安は1〜30℃で、真夏に締め切った部屋のように30℃を大きく超える環境は「室温」の範囲を外れる、ということです(出典2)。「室温だから、夏の気温任せで置いておいてよい」という意味ではありません。まずは、自分の薬に何と書いてあるかを確認してみましょう。

夏に避けたい4つの敵|高温・多湿・直射日光・凍結

薬の品質を落とす主な原因は、高温・多湿・直射日光、そして冷やしすぎによる凍結です(出典2・3)。

  • 高温:成分が変化したり、坐薬のように溶けてしまうものもあります(出典2・3)。
  • 多湿:湿気を吸うと、錠剤やカプセルが変質・変色することがあります(出典3)。夏は気温だけでなく湿度も高くなります。
  • 直射日光・光:光で分解されやすい薬もあり、遮光の包装がされていることがあります(出典2・3)。
  • 凍結:冷蔵庫に入れる薬でも、凍らせると成分が変わって使えなくなることがあります(出典2・4)。「冷やせば安心」ではありません。

「暑さ・湿気・光を避け、凍らせない」。これが夏の保管の基本の考え方です。特定の薬が「必ずこうなる」と断定はできませんが、劣化のリスクを減らすために避けたい条件として押さえておきましょう。

家の中のどこに置く?|避けたい場所と、おすすめの置き場所

直射日光やキッチンの熱を避け、涼しく乾いた戸棚の引き出しにまとめて置かれた薬。家庭での夏の薬の置き場所の工夫
薬は車内・窓際・浴室などの高温多湿を避け、直射日光の当たらない涼しい場所へ。子どもの手の届かない場所に置くのも大切です。

薬は、直射日光が当たらず、涼しくて湿気の少ない場所(冷暗所)に置くのが基本です。薬剤師会は、冷暗所の目安を「直射日光の当たらない、15〜25℃程度の室温の場所」と説明しています(出典3)。

場所分類理由
車内・窓際・直射日光の当たる棚避けたい高温・光
キッチンのコンロ周り・炊飯器の近く避けたい高温
浴室・洗面所避けたい高温多湿
直射日光の当たらない、涼しく乾いた場所(引き出し・戸棚など)おすすめ冷暗所
FIG.2 家の中の薬の置き場所。誤飲を防ぐため、子どもの手の届かない場所に保管を(出典3)

意外な盲点が、暑くなりやすいキッチンや、湿気のこもりやすい洗面所です。また、薬は購入時の容器やシートのまま保管しましょう。遮光や防湿のための包装がされていることがあり、別の容器に移し替えると品質を保てないことがあります(出典2)。

夏の車内は50℃超え|車に薬を置きっぱなしにしない

夏の車内は、薬にとって過酷な環境です。JAF(日本自動車連盟)が外気温35℃で行ったテストでは、締め切った車内の最高温度は黒い車で約57℃、白い車でも約52℃に達し、ダッシュボードの上は最高79℃にもなりました(出典6)。エアコンを止めてわずか15分で、車内は熱中症指数が危険レベルに達したとも報告されています(出典6)。

しかも、これは真夏だけの話ではありません。消費者庁は、外気温27℃程度の時期でも締め切った車内は約48℃、ダッシュボードの上は65℃を超えたというJAFの結果を紹介しています(出典7)。

「室温」の目安が1〜30℃であることを思い出すと、この温度がいかに保管に向かないかが分かります。製薬企業の情報でも「夏の車の中は50〜80℃になるので、薬を置かないように」と注意が呼びかけられています(出典2)。「ちょっとの買い物の間だけ」でも、薬を車に置きっぱなしにしないようにしましょう。

冷蔵庫に入れる薬・入れない薬|坐薬・シロップ・点眼と「凍結」の注意

「暑いから、とりあえず全部冷蔵庫へ」としたくなりますが、これは正解ではありません。冷蔵庫での保管が向く薬と、そうでない薬があります。

薬剤師会によると、シロップ剤・坐薬・点眼薬・未開封のインスリンなどは、冷蔵庫で保管したほうがよい場合が多いとされています(出典3・4)。一方で、多くの内服薬は室温保存で、指示がないのに冷蔵庫に入れると、出し入れのたびの結露(湿気)でかえって傷むことがあります。

そして冷蔵庫で最も注意したいのが凍結です。冷気の吹き出し口の近くやチルド室では薬が凍ってしまうことがあり、凍ると成分が変化して使えなくなる薬もあります(出典2・4)。冷蔵保存する薬は、凍りにくいドアポケットなどに置くとよいでしょう(出典4)。「冷蔵庫は冷暗所とは言えない」ため、冷蔵指示のない薬まで入れる必要はありません(出典3)。どこに保管すべきか迷うときは、薬剤師に確認してください。

薬の例一般的な保管の傾向
シロップ・坐薬・点眼薬・未開封のインスリン冷蔵が指示されることが多い(凍らせない)(出典3・4)
多くの錠剤・カプセル(内服薬)室温保存が多い。指示がなければ冷蔵しない(出典3)
FIG.3 冷蔵?室温?迷いやすい薬。あくまで一般的な傾向で、個々の薬は添付文書・薬剤師の指示に従ってください

インスリンなど自己注射薬の夏|未使用は冷蔵・使用中は室温・持ち歩きは保冷

インスリンなどの自己注射薬は、夏の保管に特に気をつかう薬です。糖尿病情報センターは、未開封のものは冷蔵庫の凍らない場所(ドアポケットなど)で、使用中のものは直射日光を避けた涼しい室温で保管する、と説明しています(出典4)。冷やせばよいわけではなく、凍らせると使えなくなる点が共通の注意です(出典4・5)。

夏の持ち運びでは、高温と直射日光を避けることが大切です。保冷剤を使う場合も、薬が凍らないように、直接触れさせない工夫をします。旅行や外出について、糖尿病情報センターは、注射薬を手荷物として持つこと(預け入れは凍結のおそれがあるため避ける)や、家族と分けて持っておくことなどをすすめています(出典5)。帰省・旅行に薬を持っていくときの携行の工夫やお薬手帳・機内持ち込みについては、帰省・旅行に薬を持っていくときの記事でくわしくまとめています。

自己注射薬は、種類によって保管条件が異なります。使用中に冷蔵庫へ戻してよいか、どのくらいの期間まで室温で使えるかなどは薬によって違うため、必ず添付文書の記載や、かかりつけの薬剤師・医師の指示を確認してください。

迷ったら自己判断せず薬剤師に|まとめ

夏の薬の保管は、むずかしく考えなくても、いくつかのポイントを押さえるだけでリスクを減らせます。

  • 「室温」は1〜30℃が目安。夏の気温任せで放置してよいという意味ではない(出典1・2)
  • 高温・多湿・直射日光・凍結を避ける。涼しく乾いた冷暗所へ(出典2・3)
  • 車内は50℃を超えることも。薬を置きっぱなしにしない(出典2・6・7)
  • 冷蔵は薬による。指示のない薬まで入れない/凍らせない(出典3・4)
  • インスリン等は未開封は冷蔵、使用中は室温。持ち歩きは保冷して直射日光を避ける(出典4・5)

そして最も大切なのは、自己判断で「これはもう効かない/まだ大丈夫」と決めつけないことです。見た目が変わった、高温にさらしてしまったなど、不安があるときは、使う前にかかりつけの薬局・薬剤師に相談してください。正しく保管して、暑い季節も安心して薬と付き合っていきましょう。

夏は薬の保管だけでなく、飲んでいる薬そのものが熱中症や脱水と関わることもあります。あわせてその薬、夏は要注意?熱中症・脱水と関わる薬や、サプリと薬の飲み合わせの注意点もご覧ください。

  1. 【今日】自分の薬の説明書で「室温/冷所」の指示を確認——保管の第一歩
  2. 【今日】車内・窓際・浴室から薬を移し、涼しい冷暗所へ——避けたい場所から遠ざける
  3. 【不安なとき】高温にさらした・見た目が変わった薬は、自己判断せず薬剤師に相談——抱え込まない

参考文献

  1. 日本薬局方 通則(PMDA・第十八改正 日本薬局方 通則)— 「室温=1〜30℃」「常温=15〜25℃」「冷所=別に規定するもののほか1〜15℃」など、薬の保管温度を定める公的な基準 https://www.pmda.go.jp/files/000241438.pdf
  2. 中外製薬「くすりの保存方法」— 室温は1〜30℃、冷蔵は4℃、冷所は15℃以下が目安。凍結不可。湿気・日光・高温を避ける。夏の車の中は50〜80℃になるので薬を置かない。他の容器に入れかえない https://www.chugai-pharm.co.jp/ptn/medicine/use/use002.html
  3. 福島県薬剤師会「くすりの保管の仕方」— 冷暗所(直射日光の当たらない15〜25℃程度の室温)に保管。シロップ・坐薬・点眼などは冷蔵庫がよい場合が多いが冷蔵庫は冷暗所ではない。乳幼児・小児の手の届かないところに https://www.fukuyaku.org/medicine/storage
  4. 糖尿病情報センター(国立健康危機管理研究機構)「血糖値を下げる注射薬」— 使用中のインスリン製剤は直射日光を避けた涼しい室温、未開封の製剤は冷蔵庫の凍らない場所(ドアポケットなど)で保管 https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/100/030/03.html
  5. 糖尿病情報センター(国立健康危機管理研究機構)「糖尿病の方の旅行」— インスリンなどの注射薬は手荷物として機内に持ち込む(預け荷物にすると凍って有効でなくなる)。薬は家族と分けて持つとよい https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/080/010/10.html
  6. JAF(日本自動車連盟)「真夏の車内温度(ユーザーテスト)」— 外気温35℃で、締め切った車内の最高温度は黒い車で約57℃・白い車で約52℃、ダッシュボードは最高79℃。エアコン停止から15分で熱中症指数が危険レベルに https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/temperature/summer
  7. 消費者庁「Vol.524 真夏でなくても車内での熱中症に注意しましょう!」— 外気温27℃程度でも締め切った車内は約48℃、ダッシュボードは65℃を超える(JAFのテストより) https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20201008

免責事項:本記事は薬剤師が公的機関の情報をもとに作成した一般的な情報提供であり、診断・治療を目的とするものではありません。薬の保管条件は薬ごとに異なり、症状・持病・服薬の状況などにより適切な対応も異なります。実際の保管方法は添付文書や薬剤師・医師の指示に従い、保管に不安がある薬を使ってよいかは自己判断せず、かかりつけの薬局・薬剤師にご相談ください。詳しくは免責事項をご覧ください。

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調剤薬局で働きつつ、薬局DX(業務効率化)にも取り組み中。栄養・健康・睡眠を、公的な情報をもとに「今日からできる」形で解説します。
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