栄養

食物繊維は1日どれくらい?20gに近づける現実的な献立のコツを薬剤師が解説

オートミール・全粒パン・豆・納豆・ごぼう・きのこ・海藻・果物・ナッツなど、食物繊維を多く含む身近な食材を並べた食卓の俯瞰写真
Medi

「食物繊維、足りているのかな?」——お通じや腸の調子が気になって、なんとなく気にはしているけれど、「結局1日どれくらい摂ればいいの?」「何を食べれば増えるの?」がはっきりしないまま過ごしている方は多いのではないでしょうか。

実は、1日にとりたい食物繊維の量は、国(厚生労働省)が出している公式の基準で目安が示されています。そして、その目標に届いていない人が多いことも、国の調査からわかっています。

この記事では、薬剤師の視点も交えながら、

  • 食物繊維とは何か(水溶性・不溶性をやさしく)
  • 1日にどれくらい必要か(食事摂取基準2025年版の目標量)
  • 食物繊維を多く含む食品(食品別の早見表)
  • 1日20gに近づける、現実的な献立のコツ

を、できるだけわかりやすく整理しました。難しい栄養学の話は最小限にして、「今日の食事から動ける」ところまで一緒に落とし込んでいきましょう。

そもそも食物繊維とは?水溶性と不溶性をやさしく

食物繊維は、ひとことで言うと「体の中で消化・吸収されにくい食べ物の成分」です。

厚生労働省のe-ヘルスネットでは、食物繊維は「人の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」と説明されています(出典1)。つまり、エネルギー源として使われる炭水化物とちがって、消化されずに大腸まで届く成分、というイメージです。

食物繊維は、大きく次の2タイプに分けられます(出典1)。

  • 水溶性食物繊維:水に溶けるタイプ。果物に含まれるペクチンや、海藻に含まれるアルギン酸など。
  • 不溶性食物繊維:水に溶けにくいタイプ。野菜や穀物に多いセルロースなど。

どちらが優れているということではなく、働き方がちがうので、いろいろな食品からバランスよくとるのが基本です。実際の食品には、両方が含まれているものがほとんどです。

薬剤師のひとこと:食物繊維はかつて「体に役立たない食べ物のカス」と考えられていた時期もありました。今では炭水化物・脂質・たんぱく質などに続く成分として大切さが見直され、不足しがちな成分として注目されています。

なぜ大事?食物繊維の働き

「食物繊維をとると、体にどういいの?」——ここは断定しすぎず、公的機関の表現にそって整理します。

e-ヘルスネットによると、食物繊維には次のような働きがあるとされています(出典1)。

  • お通じ・腸内環境に関わる:食物繊維は「便の体積を増やす材料」となり、また「大腸内の環境を改善する腸内細菌に利用され、これらの菌を増やすことが明らかとなっている」とされています。いわば、おなかの中の善玉菌のエサになるイメージです。
  • 生活習慣病との関連:食物繊維の摂取不足は、2型糖尿病やがん(乳・胃・大腸)、心筋梗塞、脳卒中などの「発症リスクの低下との関連が報告されています」とされています(出典1)。

ここで大切なのは表現です。これは「食物繊維をとれば病気が治る・予防できる」という意味ではありません。あくまで「不足が発症リスクと関連していると報告されている」という、研究にもとづいた慎重な言い方です。食物繊維はあくまで健康的な食生活の一部、という距離感で受け止めるのが誠実です。

薬剤師のひとこと:「食物繊維で血糖値が下がる」「コレステロールが消える」といった強い言い切りの情報を見かけることがあります。水溶性食物繊維が糖の吸収にゆるやかに関わるといった働きは知られていますが、薬のような効果を保証するものではありません。お通じや血糖、脂質に不安があるときは、自己判断せず、かかりつけの医師・薬剤師にご相談ください。

食物繊維は1日どれくらい?まずは公式の目標量から

いよいよ本題です。「1日どれくらい必要か」を考えるとき、いちばん確かなものさしになるのが、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」です。これは5年ごとに改定される、日本の食事の公式な基準で、2025年度から使われています(出典2)。

この基準では、食物繊維について「目標量(生活習慣病の予防のために、当面の目標とすべき摂取量)」が、年齢・性別ごとに次のように示されています(出典2)。

区分男性(目標量)女性(目標量)
18〜29歳20g以上18g以上
30〜49歳22g以上18g以上
50〜64歳22g以上18g以上
65〜74歳21g以上18g以上
75歳以上20g以上17g以上
FIG.1 食物繊維の目標量(1日あたり・成人/食事摂取基準2025年版)

※ 妊婦・授乳婦は18g以上が目標量とされています(出典2)。

表のとおり、成人男性でおよそ20〜22g、成人女性でおよそ18gが一つの目安です。この記事のタイトルで「20g」を掲げているのは、多くの成人にとって、まず20gを目標ラインにすると考えやすいからです。ただし、目標量は年齢・性別で少しちがう点は覚えておいてください。

薬剤師のひとこと:「20g以上」と言われても、量のイメージはわきにくいですよね。あとの章で食品の量に置きかえていきます。まずは「成人なら1日およそ18〜22g」という数字を、頭の片隅に置いておいてください。

実は、多くの人が目標に届いていない

ここで知っておきたいのが、日本人の食物繊維摂取量は、目標量に届いていない人が多いということです。

食事摂取基準(2025年版)では、本来「少なくとも1日25gの食物繊維をとった方がよい」と考えられる一方、現在の日本人の摂取量はそこまで届いていないため、現実的に達成できる量として目標量を設定した、という考え方が示されています(出典2)。e-ヘルスネットでも、成人(20歳以上)の食物繊維摂取量の平均は1日あたり約18.1gと紹介されており、理想とされる「1日25g以上」には届いていません(出典1)。

※ 食物繊維の摂取量は、調査の年や測定方法によって数値が前後します(出典2)。大切なのは「日本人は全体として食物繊維が不足ぎみ」という方向性です。

つまり、「自分は足りていないかも」と感じている方は、決して珍しくありません。だからこそ、これから紹介する「ちょっとした増やし方」が効いてきます。

食物繊維を多く含む食品は?早見表でチェック

目標量がわかったら、次は「何を食べれば届くのか」です。下の表は、文部科学省「食品成分データベース(日本食品標準成分表 八訂)」の数値をもとに、食品100gあたりの食物繊維総量を比較したものです(出典3)。

食品(区分)食物繊維総量(100gあたり)
ほしひじき(乾燥/ステンレス釜)約51.8g ※乾燥重量
カットわかめ(乾燥)約35.4g ※乾燥重量
いんげん豆(ゆで)約13.6g
あずき(ゆで)約12.1g
オートミール約9.4g
押麦(大麦・乾燥)約7.9g
糸引き納豆約6.7g
大豆(国産・ゆで)約6.6g
ごぼう(ゆで)約6.1g
ブロッコリー(生)約5.1g
しいたけ(生)約4.6g
全粒粉パン約4.5g
えのきたけ(生)約3.9g
キウイフルーツ(緑肉種・生)約2.6g
さつまいも(皮なし・蒸し)約2.3g
バナナ(生)約1.1g
FIG.2 食物繊維を多く含む食品(100gあたりの食物繊維総量)

※ 数値は食品成分データベースの値で、品種・調理法・製品によって多少変わります(出典3)。

この表を見るとき、注意したいのが海藻の「乾燥重量」です。ほしひじきやカットわかめは100gあたりの数字が大きく見えますが、これは乾燥した状態での値です。実際に食べるときは水で戻すので量が増え、1食(小鉢1杯)で使う乾燥ひじきはせいぜい数g程度。「ひじきを食べれば一気に50g」というわけではない点に注意してください。

逆に、オートミール・押麦・豆類・納豆・ごぼうなどは、ふだん食べる量でもまとまった食物繊維がとれる、頼れる食品です。

薬剤師のひとこと:「食物繊維を増やそう」と思うと、つい野菜だけに目が行きがちです。でも表を見ると、主食を変えること(オートミールや押麦)や、豆・納豆を足すことのインパクトが大きいとわかります。野菜・きのこ・海藻・果物に、穀物と豆を組み合わせるのがコツです。

【本命】1日20gに近づける、現実的な献立のコツ

オートミールに納豆とキウイを添えた朝食——主食を置きかえて食物繊維を増やす現実的な一歩
まずは主食をオートミールに置きかえることから。納豆や果物を1品足すだけでも食物繊維が積み上がります。

ここからが本番です。「食物繊維を増やそう」と意気込んで生野菜サラダを大量に食べるのは、続きにくいもの。もっとラクに、いつもの食事を“置きかえる・足す”だけで近づける方法に絞りました。

コツ1:主食を「食物繊維のとれる主食」に置きかえる

いちばん効くのが、毎日食べる主食を変えることです。白米やふつうの食パンを、食物繊維の多い主食に置きかえてみましょう。

  • 朝食をオートミールにする(オートミール30gで約2.8g)
  • ごはんに押麦・もち麦を混ぜて炊く
  • 食パンを全粒粉パンやライ麦パンに変える

主食は毎日・毎食たべるものなので、置きかえると積み上がります。

コツ2:汁物に「野菜・きのこ・海藻」をどんどん入れる

みそ汁やスープは、食物繊維を足す絶好のチャンスです。

  • わかめ、きのこ、ごぼう、野菜をたっぷり入れる
  • 具だくさんにするほど、無理なく繊維がとれる

汁物なら、生野菜より量を食べやすく、体も温まります。

コツ3:豆・納豆を1品プラスする

豆類は食物繊維がとても豊富です(FIG.2参照)。

  • 納豆1パック(約45g)で食物繊維 約3g
  • サラダやスープに蒸し大豆・ミックスビーンズを足す

納豆は冷蔵庫にあれば開けるだけ。手軽さでは随一です。

コツ4:間食・デザートを「果物・ナッツ」にする

おやつのタイミングも、食物繊維のチャンスに変えられます。

  • キウイ1個、バナナ1本などの果物にする
  • スナック菓子の代わりに素焼きナッツを少量

今日からできる組み立て例(イメージ):朝食をオートミール(約2.8g)にし、昼か夜のみそ汁を「わかめ+きのこ+ごぼう」の具だくさんに、夕食に納豆を1パック(約3g)、間食にキウイ1個(約2.6g)。これだけで、いつもの食事にプラス10g前後を上乗せしやすくなります。残りは、ふだんの野菜や主食からとっていくイメージです。

ポイントは、「全部やる」より「できる1つから」。まずは主食の置きかえか、みそ汁の具だくさん化、どちらか1つから始めてみてください。

薬剤師のひとこと:主菜(肉・魚・卵・大豆製品)でたんぱく質を、主食の質で食物繊維を——と考えると、献立全体がバランスよく整います。主菜の量の目安はたんぱく質は1日どれくらい必要?で、腸を整える食事の全体像は腸内環境を整えるメリットとは?でまとめています。

食物繊維を増やすときの注意点

食物繊維は体に役立つ成分ですが、「とにかくたくさん」「急に大量に」は逆効果になることもあります。安心して続けるための注意点をお伝えします。

急に増やすとおなかが張ることがある

ふだん食物繊維が少なめだった人が、いきなり大量にとると、おなかが張ったり、ガスが増えたり、人によってはお通じの調子が乱れることがあります。

  • 少しずつ増やす:1〜2週間かけて、徐々に量を増やしていくのがおすすめです。
  • 水分もいっしょに:食物繊維は水分とともにはたらく面があるため、水やお茶などの水分もしっかりとりましょう。

持病がある方・治療中の方へ

過敏性腸症候群など、おなかの不調を抱えている方は、食物繊維の種類や量によって合う・合わないがあります。また、腸の手術後や治療中などで食事の制限がある方もいます。

持病がある方、治療中の方、薬を飲んでいる方は、食物繊維を大きく増やす前に、かかりつけの医師・薬剤師・管理栄養士に相談すると安心です。無理をせず、自分のおなかの様子を見ながら進めてください。

サプリより、まず食事から

食物繊維のサプリメントも市販されていますが、基本は食事からとるのが望ましいと考えられます。食品からとれば、食物繊維以外の栄養素もいっしょにとれるのが利点です。サプリはあくまで補助、と考えるのがよいでしょう。

本記事は一般的な栄養情報の提供を目的としたもので、診断・治療を目的とするものではありません。お通じや体調に不安がある場合は、医療機関にご相談ください。

まとめ:今日からできること

最後に、要点を整理します。

  • 食物繊維の1日の目標量は、成人男性でおよそ20〜22g、女性でおよそ18g(食事摂取基準2025年版/出典2)
  • 多くの日本人は目標に届いておらず、不足ぎみ(理想は1日25g以上/出典1・2)
  • 食物繊維が多いのは、オートミール・押麦・豆・納豆・ごぼう・野菜・きのこ・海藻・果物・いもなど(出典3)
  • 近づけるコツは「主食を置きかえる」「汁物を具だくさんに」「豆・納豆を足す」「間食を果物・ナッツに」

そして、今日からできる1つを選ぶなら——

「明日の朝食をオートミールにする」か、「次のみそ汁を“わかめ+きのこ+ごぼう”の具だくさんにする」。

どちらか1つで十分なスタートです。食物繊維は、一度にがんばるより、毎日コツコツが続くコツ。小さな置きかえから始めていきましょう。

なお、食物繊維とあわせて、発酵食品や全体の食習慣を整えていきたい方は、こちらの記事もどうぞ。

参考文献

  1. 厚生労働省 e-ヘルスネット(健康日本21アクション支援システム)「食物繊維の必要性と健康」(発行元:厚生労働省)── 食物繊維の定義、水溶性/不溶性の分類、便の体積を増やす・腸内細菌に利用される働き、生活習慣病の発症リスクとの関連、成人の目標量(男性20g以上・女性18g以上)、理想量(1日25g以上)、現状の平均摂取量(成人で1日約18.1g)に使用。
  2. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(2024年公表/2025年度適用、発行元:厚生労働省)── 報告書ページ策定ポイント資料(食物繊維の目標量表)炭水化物・食物繊維 各論。食物繊維の目標量(年齢・性別ごと)、目標量の位置づけ、算定の考え方(現状は目標に届いていない)に使用。
  3. 文部科学省「食品成分データベース」/日本食品標準成分表(八訂)増補2023年(発行元:文部科学省)── FIG.2 の食品別 食物繊維総量(オートミール9.4g・押麦7.9g・糸引き納豆6.7g・大豆6.6g・ごぼう6.1g・全粒粉パン4.5g 等/100gあたり)、および本文中の1食分換算(オートミール30g・納豆1パック45g・キウイ1個など)に使用。

免責事項:本記事は薬剤師が公的機関の情報をもとに作成した一般的な情報提供であり、診断・治療を目的とするものではありません。効果には個人差があり、症状・持病・服薬・妊娠授乳の状況などにより適切な対応は異なります。気になる症状がある方、治療中・妊娠授乳中の方などは、自己判断せず医師・薬剤師にご相談ください。詳しくは免責事項をご覧ください。

ABOUT ME
Medi
Medi
薬剤師ブロガー
調剤薬局で働きつつ、薬局DX(業務効率化)にも取り組み中。栄養・健康・睡眠を、公的な情報をもとに「今日からできる」形で解説します。
記事URLをコピーしました