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夏バテで食欲がないときの食事のコツ|食べやすく栄養をとる方法を薬剤師が解説

冷奴・ゆで卵・ツナ・冷たい麦茶など、夏に食べやすく栄養になる食材を並べた涼しげな食卓
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「暑くて食欲がわかない」「そうめんとアイスばかりで、ちゃんと食べられていない」——夏になると、こんな状態が続いていませんか。

食欲がないときに「とにかくたくさん食べなきゃ」と気負うと、かえって食事がつらくなってしまいます。大切なのは、無理に量を増やすことではありません。食べやすいものに、少しだけ栄養を足すこと。それだけで、夏の食事はぐっと楽になります。

この記事では、夏バテで食欲が落ちたときに「最低限とりたい栄養」と「食べやすくする工夫」を、薬剤師が公的な情報をもとに解説します。今日の食事からできる小さな一歩まで、具体的に紹介します。

この記事で分かること
・夏バテのときに最低限とりたい栄養(早見表つき)
・食欲がなくても食べやすくする5つの工夫
・冷たいものばかりにしない水分のとり方と、受診を考えたいサイン

そもそも夏バテとは?

「夏バテ」は、暑さが続く時期に起こる、だるさ・食欲不振・疲れやすさなどの不調をまとめて呼ぶ言葉です。実は、「夏バテ」という医学的な病名があるわけではありません

夏に体調を崩しやすくなる背景の一つに、自律神経の乱れがあると考えられています。自律神経は、体温や内臓の働きを自動で調整している神経です。活動モードの「交感神経」と、休息モードの「副交感神経」がバランスをとって働いています。

厚生労働省の情報では、こうしたバランスが崩れていると感じることによる不調を「自律神経失調症」と呼び、症状として全身のだるさ(全身倦怠感)・めまい・頭痛・動悸などが挙げられています(出典1)。夏は、屋外の暑さと冷房の効いた室内との温度差、寝苦しさによる睡眠不足、汗による水分・電解質の不足などが重なりやすく、体に負担がかかりやすい季節です。

食欲が落ちるのも、こうした夏の不調のサインの一つと考えられます。「気合いが足りないから」ではありません。だからこそ、根性で乗り切ろうとするより、食べやすく工夫して栄養を確保するほうが、体にやさしい対処になります。

食欲がないときの基本|「量を増やす」より「食べやすく栄養密度を上げる」

食欲がないときの食事で、まず意識したい考え方は一つです。無理に量を増やすのではなく、少ない量でも栄養がしっかりとれるようにする——つまり「栄養密度」を上げることです。

たとえば、冷たいそうめんだけの昼食。手軽でのどを通りやすい一方、栄養の中身は炭水化物にかたよりがちです。ここに卵やツナ、薬味を少し足すだけで、同じ食べやすさのまま、とれる栄養の幅が広がります。あわせて、汗で失われる水分も意識してとりたいところです。

「全部を完璧に」ではなく、「いつもの食事に、栄養になる一品を一つ足す」。この発想さえあれば大丈夫です。具体的に何を足すかは、次の章から見ていきましょう。

夏バテのとき最低限とりたい栄養

食欲がないと、あれもこれもと欲張るのは難しいものです。まずは、夏に手薄になりやすく、優先して意識したい栄養から押さえましょう。

意識したい栄養体内での主な働き食べやすい食品の例
たんぱく質筋肉・臓器・皮膚などの材料になる冷奴、卵、しらす、ツナ、ヨーグルト
ビタミンB群糖質などの代謝に関わるとされる豚肉、納豆、枝豆、うなぎ
水分・電解質汗で失われやすい。脱水の予防に経口補水液、スープ、こまめな水分
FIG.1 夏バテのとき意識したい栄養の早見表

※出典:厚生労働省 e-ヘルスネット、環境省 熱中症環境保健マニュアル等をもとに作成。

① たんぱく質|体の材料になる

たんぱく質は、筋肉・臓器・皮膚・毛髪などの体をつくる材料であり、ホルモン・酵素・抗体などの成分にもなる栄養素です(出典2)。体を保つうえで欠かせません。

ところが、食欲が落ちて冷たい麺や口当たりのよいものに偏ると、最初に不足しやすいのがこのたんぱく質です。「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、成人のたんぱく質の推奨量は1日あたり男性65g・女性50gとされています(出典3)。麺やご飯だけの食事が続くと、この量に届きにくくなります。

うれしいのは、たんぱく質は食べやすい食品からも無理なく足せることです。冷奴、卵、しらす、ツナ、ヨーグルトなどは、暑い日でものどを通りやすく、調理の手間も少なくて済みます。「食欲がない=たんぱく質を抜く」になりやすい時期だからこそ、ここを意識するだけで食事の質が変わります。

→ 関連記事:たんぱく質は1日どれくらい必要?体重別の目安と手軽な摂り方

② ビタミンB群|エネルギー代謝に関わる

ビタミンB群のうち、ビタミンB1・B2・ナイアシンは、エネルギー代謝を助ける働きがあるとされています(出典4)。糖質などをエネルギーに変える過程に関わる栄養素です。

夏に冷たい麺類や甘い飲み物など、糖質に偏った食事が増えると、その代謝に関わるビタミンB群の必要量も相対的に増えると考えられます。e-ヘルスネットでも、エネルギーやたんぱく質の摂取量に応じて、これらのビタミンの摂取を増やすことも必要だとされています(出典4)。

ビタミンB群は水に溶けやすい性質(水溶性)があるため、一度にまとめてではなく、毎日の食事でこまめにとりたい栄養素です。豚肉・納豆・枝豆・うなぎなどに多く含まれます。冷やし中華に豚肉を、そうめんに納豆を添えるなど、いつもの夏メニューに少し足すイメージで十分です。

③ 水分と電解質|汗で失われやすい

夏は、自覚がないうちにも汗をかき、水分とともに塩分(電解質)が失われます。食欲がない日は食事の量自体が減り、食事から得られる水分も減りがちです。だからこそ、水分は食事とは別に意識して補いたい要素です。具体的なとり方は、後の「飲み物・水分のとり方」で詳しく紹介します。

食欲がなくても食べやすくする5つの工夫

薬味をのせた冷奴と温かいスープ——冷たいものに偏らず栄養を一品足す夏の食事の工夫
冷たいものばかりにせず、温かい汁物や薬味を添えると、食べやすさと栄養を両立できます。

「とりたい栄養は分かったけれど、そもそも食が進まない」。そんなときに役立つ、今日から試せる工夫を5つにまとめました。

工夫具体例
冷たい麺だけで終わらせないそうめんに卵・ツナ・冷しゃぶ・薬味を足す
たんぱく質の一品を足す冷奴、ゆで卵、しらす、納豆、ヨーグルト
薬味・酸味・香りを使うみょうが、しょうが、大葉、レモン、酢、梅
少量を回数に分ける1回量を減らし、間食や軽食で補う
冷たいものに偏りすぎない温かい汁物を1品はさむ
FIG.2 食欲がないときの食べやすくする工夫

ねらいはシンプルです。冷たい麺や口当たりのよいものは栄養が炭水化物に偏りがちなので、そこに卵・ツナ・冷奴などのたんぱく源を「あと一品」足す。これが基本です。一度にたくさん食べられないときは、1回量を減らして回数を分け、トータルで栄養を確保すれば構いません。

食が進まないときの強い味方が、薬味と酸味です。みょうが・しょうが・大葉などの薬味や、レモン・酢・梅干しの酸味は、食欲を後押ししてくれます。冷奴に薬味、つゆに梅、と少し添えるだけで食べやすさが変わります。

もう一つ意識したいのが、冷たいものに偏りすぎないこと。冷たい飲み物・アイス・冷たい麺ばかりが続くと、胃腸が冷えて、かえって食欲が落ちることもあります。一日のどこかで温かい汁物を一品はさみましょう。みそ汁やスープは、水分・塩分・具材の栄養をまとめてとれる、夏にも頼れる一品です。

薬剤師として店頭でお話を聞いていると、夏は「冷たいものばかりで、お腹の調子がいまひとつ」という声をよく耳にします。冷たいものが悪いわけではありません。全部を冷たいもので固めない——その意識だけで、胃腸の負担はやわらぎます。

飲み物・水分のとり方|冷たいものばかりで胃を冷やさない

食欲がない時期は、食事より飲み物のほうが口にしやすいもの。飲み物の選び方も、夏の栄養と水分を支える大事なポイントです。

基本は、のどが渇く前から、こまめに水分をとることです(出典5)。一気にがぶ飲みするより、少しずつ回数を分けるほうが、体に取り込みやすくなります。たくさん汗をかいたときは、水やお茶だけでなく、塩分(電解質)も補えるスポーツドリンクや経口補水液が適しているとされています(出典6)。

一方で、ジュースや甘い清涼飲料を水分補給の中心にすると、糖分のとりすぎにつながりやすいため、ふだんの水分は水・麦茶などを基本にすると安心です。冷たい飲み物ばかりを大量にとると胃腸が冷えることもあるので、常温の水や温かいスープも織り交ぜましょう。

なお、アルコールは水分補給にはなりません。利尿作用で、とった以上の水分が体から出ていくこともあります。暑い時期の水分補給を「ビールで」と考えるのは避けましょう。

→ 関連記事:熱中症対策は水だけで足りる?塩分・経口補水液の正しい使い方を薬剤師が解説

栄養ドリンク・サプリに頼りすぎないために

「食べられないぶん、栄養ドリンクやサプリで補おう」と考える方もいるかもしれません。手軽な選択肢ですが、薬剤師として一つお伝えしたいことがあります。

栄養ドリンクやサプリメントは、あくまで食事の補助です。 これらを飲めば夏バテが治る、食事の代わりになる、というものではありません。まずは食事から栄養をとることを基本に置き、どうしても足りないときの補助として使う位置づけが安心です。栄養ドリンクに含まれるカフェインや糖分を、夏に何本もとると、糖分のとりすぎや睡眠への影響につながることもあります。

持病があって治療中の方や、薬を服用中の方は、サプリを新しく始める前に、かかりつけの医師・薬剤師に相談することをおすすめします。飲み合わせに注意が必要な組み合わせもあるためです。飲みたい製品のパッケージをスマホで撮っておき、薬局で見せていただければ、その場で確認できます。

こんな症状は夏バテ以外かも|受診を考えたいサイン

夏バテは医学的な病名ではなく、暑さによる一時的な不調を指す言葉です。多くは、食事・水分・休養を整えることで少しずつ楽になっていきます。

一方で、似たような症状でも、夏バテとして見過ごしてはいけない場合があります。次のようなサインがあるときは、食事の工夫を続けるより先に、医療機関への相談を検討してください。

サイン考えられること相談先の目安
強い倦怠感が長く続く・水分や食事がとれない脱水や体力消耗が進んでいる可能性内科
発熱・吐き気・嘔吐・下痢を伴う感染症など別の病気の可能性内科
めまい・立ちくらみ・頭痛が強い、意識がもうろうとする熱中症や脱水が進んでいる可能性すぐに涼しい場所で休み、改善しなければ受診
食事や休養を整えても不調が長引く夏バテ以外の原因の可能性まずはかかりつけ医
FIG.3 受診を考えたいサインの目安

※自己診断のための表ではありません。あくまで「受診を考えるきっかけ」の目安です。

特に、水分も食事もとれない・意識がはっきりしないといった状態は、ためらわず医療機関へ。「夏バテだから」と無理に乗り切ろうとせず、体のサインに耳を傾けてください。持病のある方・薬を服用中の方は、自己判断で食事やサプリの工夫だけに頼らず、必要に応じてかかりつけ医・薬剤師に相談しましょう。

まとめ|今日の1食に、食べやすい一品を足すことから

夏バテで食欲がないときは、無理に量を増やすより、食べやすいものに栄養を少し足すことから始めましょう。

  • 夏バテは医学的な病名ではなく、暑さ・自律神経の乱れ・睡眠不足などが重なる夏の不調の総称
  • 食欲がないときは「量を増やす」より「食べやすく栄養密度を上げる」
  • 優先したいのは、たんぱく質・ビタミンB群・水分と電解質
  • 卵・冷奴・ツナ・薬味・酸味を活用し、冷たいものに偏りすぎない
  • 栄養ドリンク・サプリは補助。長引く不調や脱水のサインがあれば受診を

完璧な食事を目指す必要はありません。暑くてつらい日こそ、ハードルは低くて大丈夫。できそうなものを一つ選んでみてください。

  1. 【今日】次の麺料理に、卵かツナを1品足す——トッピングするだけで、たんぱく質を上乗せできます
  2. 【今日】温かい汁物を1杯はさむ——水分・塩分・具材の栄養をまとめてとれます
  3. 【次に薬局へ行く日】サプリや栄養ドリンクの使い方を相談する——服薬中の方は、パッケージの写真を見せるだけでOK

食べられない日があっても、失敗ではありません。次の1食が、そのまま立て直しのきっかけになります。小さな一品の積み重ねが、夏を元気に乗り切る支えになります。

参考文献

  1. 厚生労働省「こころの耳」用語解説「自律神経失調症」— 明らかな身体の病気がないにも関わらず、自律神経のバランスが崩れていると感じることによる不調。症状として全身倦怠感・めまい・頭痛・動悸など https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1591/
  2. 厚生労働省 e-ヘルスネット(健康日本21アクション支援システム)「たんぱく質」— 筋肉・臓器・皮膚・毛髪などの体構成成分、ホルモン・酵素・抗体などの体調節機能成分。卵類・肉類・豆類などに多く含まれる https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/food/ye-044.html
  3. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 — たんぱく質の推奨量(成人男性65g・女性50g/日) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html(各論「たんぱく質」 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316462.pdf
  4. 厚生労働省 e-ヘルスネット(健康日本21アクション支援システム)「ビタミン」— ビタミンB1・B2・ナイアシンはエネルギー代謝を助ける働き。ビタミンB群は水溶性。エネルギーやたんぱく質摂取量に応じてこれらビタミンの摂取を増やすことも必要 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/food/ye-027.html
  5. 厚生労働省「熱中症を防ぎましょう」— 室内でも屋外でも、のどの渇きを感じなくても、こまめに水分を補給する https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/prevent.html
  6. 環境省「熱中症環境保健マニュアル」「熱中症の予防方法と対処方法」— 大量に汗をかいたときは水分とともに塩分(電解質)の補給が必要。スポーツドリンクや経口補水液が適している(食塩水は水1Lに1〜2gが目安) https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness.php(マニュアル本体 https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf

(補足:エネルギー産生栄養素=たんぱく質・脂質・炭水化物がエネルギー源になる点は e-ヘルスネット「エネルギー産生栄養素」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/food/ye-013.html で確認。本文では出典4と合わせて参照。1日の水分量の目安「1.2L」は厚労省 高齢者向け熱中症リーフレット https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/pdf/heatillness_leaflet_senior_2022.pdf に記載があるが、対象・条件で必要量は変わるため本文では具体的数値は断定せず「こまめに」を基調とした。)

免責事項:本記事は薬剤師が公的機関の情報をもとに作成した一般的な情報提供であり、診断・治療を目的とするものではありません。効果には個人差があり、症状・持病・服薬・妊娠授乳の状況などにより適切な対応は異なります。気になる症状がある方、治療中・妊娠授乳中の方などは、自己判断せず医師・薬剤師にご相談ください。詳しくは免責事項をご覧ください。

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薬剤師ブロガー
調剤薬局で働きつつ、薬局DX(業務効率化)にも取り組み中。栄養・健康・睡眠を、公的な情報をもとに「今日からできる」形で解説します。
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